室 佳之
1月23日の夜にチャンネルを回して、目に入ってきたのが、テレビ朝日の
報道ステーションだった。稀勢の里のニュースが観たかったのだが、その
時報じていたのは、皇族の継承について、つまり陛下のご譲位についてで
ある。
そこで、流れていたのが昨年薨去された三笠宮殿下の生前手記で、既に70
年前に『譲位』の提言をされていたというもの。その内容をどうこう書き
たいのではなく、その時のテレビ朝日の厭らしいほどの言葉の使い分けに
腹が立った。
ナレーションやテロップは、『退位』をこれでもかと使用するが、三笠宮
殿下の手記には、はっきりと『譲位』と書かれているのだ。細かい番組内
容までは記憶にないが、つまりこんな感じだ。
『三笠宮様は、70年前既に「退位」について意見を述べられていました』
というようなナレーションやテロップを入れて、次に三笠宮殿下の手記を
紹介する。
『死以外に「譲位」の道を開かないことは、新憲法18条(中略)の精神に
反しないか』
「」部分は小生が勝手に付けたものだが、『譲位』と書いているだから
『譲位』と読めば良いものをわざわざ『退位』として報道しようとしてい
るのが明らかだ。番組編集側は視聴者に違和感を与えていることが分から
ないのだろうか。
手元にある新明解国語辞典によれば、
譲位:(君主が)その地位を譲ること
退位:君主の地位を退くこと
とある。小生なりに解釈すれば、『譲位』は継承の意が込められている
が、『退位』はその場で時間が止まるような意味合いに感じる。少々極端
な下衆の勘繰りだが、『退位』と使う人たちは、皇統を断絶することを意
図しているのではないか。
皇后陛下が『生前退位』という言葉に大きな衝撃を受けられたと表明され
たことについて、主要メディアはどう受け止めたのだろう。『生前』は使
用しなくなったものの未だに『退位』だけは使いたがっている。
この『退位』と『譲位』の言葉遣いは、メディアにおいても分かれてい
るようだ。主要紙では、産経のみが『譲位』を使い、他紙は『退位』であ
る。あまり見ないから知らないが、TV局はどうなのだろう、恐らくほとん
どが『退位』を使っているのではないか。
ラジオでは、これも全て聴いているわけではないが、ニッポン放送の平日
夕方の番組『ザ・ボイスそこまでいうか』は、『御譲位』とアナウンサー
は使用している。TBSラジオは好きで聴いているが、報道についてだけい
えば、当然のように『退位』を使用する(ついでに書けば、未だに『従軍
慰安婦』などという名称も使用する)。
政治のほうはどうだろう。首相官邸のホームページでザッと探してみた
が、安倍総理大臣がこの件について、発言しているものといえば、小生が
見つけたのは次の2つ。
1つは昨年9月26日の所信表明演説の中で、『天皇陛下の御公務のあり
方』と述べられている。もう1つは、発言というよりも有識者会議の名称
として『天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議』と政府が正式に呼
んでいる。
1月23日の第9回の会議の中で安倍総理は『この問題は、、、極めて重い課
題』とか『この論点整理に、、、』と発言していた。よくよく考えれば、
政府としてまだ譲位を決定した訳でもないから『譲位』や『退位』という
言葉を使用しないのが当然かも知れない。
稀勢の里のニュースを楽しみにしていたら、突如げんなりさせられたこと
がきっかけで、専門家でもないのに素人了見で書いてしまった。不適切な
表現や間違いがありましたら遠慮なくご指摘ください。