2017年01月29日

◆世界遺産になれない京都

渡邊 好造



住いが京都だと言うと、『いいですね〜。観光名所で世界遺産ですよね』と羨ましがられることがある。京都は確かにいい町だし、風情の良く似た「小京都」に指定された都市が日本全国に52もある。しかし、京都が世界遺産というのは間違いである。

京都の世界遺産は17か所あるが、京都の府内・市内はそこらの雑然とした当たり前の都市と変わることはない。

世界遺産は、”古都京都の文化財”の名称で平成6(1994)年に認定された古来の個々の建築物なのである。( )内は所在地。

1・上加茂神社(北区) 2・鹿苑寺=金閣(北区) 3・下鴨神社(左京区) 4・慈照寺=銀閣(左京区) 5・竜安寺(左京区) 6・延暦寺(左京区、大津市) 7・二条城(中京区) 
8・清水寺(東山区) 9・西本願寺(下京区) 10・東寺(南区) 11・天龍寺(右京区) 12・仁和寺(右京区) 13・高山寺(右京区) 14・西芳寺=苔寺(西京区)
 15・醍醐寺(宇治市) 16・平等院(宇治市) 17・宇治上神社(宇治市)

このように、京都の世界遺産はいずれも建築物であって京都全体のいわゆる都市が対象なのではない。

世界都市遺産に指定されているヨーロッパの例などをみると、町全体の建物の形、高さ、色などが全て統一され、電柱・電線・広告看板など全くなく、見渡す限り見事に整然としている。そこに人が住んでいるのに見た目は生活臭もない。

それに比べて、京都には歴史的に由緒があり見ごたえのある建物はいくつもあるが、その周りは電柱が林立し、電線が張り巡らされ、建物は高さも色も見事に不揃いである。おまけに、大小色とりどりの広告看板が所狭しと並んでいる。これでは世界都市遺産に指定されることはありえ
ない。

それでも東山連峰など山の上から京都を俯瞰すればほっとさせられる景観だし、世界遺産に指定された17の建築物は一見の価値は十分である。

許せないのは昭和34(1959)年に建設された”京都タワー”である。それまでは、「東寺の五重塔」の54.8メートルを高さ制限とするのが不文律であった。

当時の京都市の人口131万人にあわせ、京都を照らす灯台をイメージした、高さ131メートルのタワー建設の計画が持ち上がる。当然のことながら景観を損ねるとする反対派と、近代建築で新たな観光客を呼び寄せようとの魂胆に利権もからんだ賛成派とが対立した。

しかし、土台の9階建てビルは31メートルの建築物だが、その上のコンクリート製100メートルのタワーは工作物だとの詭弁を弄して完成させてしまった。

JR京都駅北側に降り立った人は目の前の古都京都には相応しくない白い異様なタワーに驚かされる。

フランス・パリには”エッフェル塔”があるじゃないかという人もいるが、1889(明治22)年のパリ万博にあわせて高くて堅牢な鉄鋼のPRを目的にしたものである。

昭和30年以降になって目新しくもないコンクリートを自慢しても価値はない。日本最初のコンクリート製の橋が明治時代に造られ、京都・山科疏水に現存している。

平成19(2007)年に新たな厳しい京都市新景観条例を制定し、建物の高さ31メートル、世界遺産周辺は10メートルに制限し、建物のデザイン、広告看板の規制も厳しくした。

将来は電柱・電線を地下に埋める計画もある、とのこと。そんな夢のようなことは誰も信じない。”京都タワー”を今更倒すはずもない。

時すでに遅しで、京都が世界都市遺産に推挙されることはありえない。ライトアップされた不気味に聳える”京都タワー”を視る度に腹立たしい思いがする。(完)

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