2017年04月16日

◆「措置入院」精神病棟の日々(25)

“シーチン”修一 2.0



桜の花びらが風に運ばれて、少しばかり開けておいた小生の部屋の窓から
ひとひら入ってきた。窓を開けて外を見ると、花びらがいくつか舞ってい
る。桜の季節は終わりつつあるが、南の多摩丘陵を眺めると新緑で覆わ
れ、二回りほど山容が大きくなり、そこに桜がいくつか咲き残っている。

美しい季節、今日は初夏の日射しだった。

ここ数日は無理しないように家事を控えているが、昨日で浴室の修繕は終
わり、今日からは小生が包丁でぶすぶす穴を開けた木製ドアの補修を始め
た。穴を開けた後の記憶がなく、気づいた(正気を取り戻した)時は警察
署の保護室だった。

補修をしながら、「カミサンはずいぶん怖かったろうなあ」とか、出所、
じゃない、退院後も小生をどう受け入れるかで揺らいでいたカミサンの心
も最近は落ち着いてきてずいぶん明るくなったなあ、などと思っていた。

向田邦子が「あ・うん」の中で「へそ下の病気よりへそ上の病気の方が上
等に見える」というようなことを書いていたが、確かに満都の子女の紅涙
を誘った徳富蘆花のベストセラー「不如帰」の浪子の病気が肺結核だから
サマになるのであって、それが痔疾だったらかなりまずいだろう。

それではアタマの病気、小生のような発狂はどうなのかというと、誰も同
情しないし、反対に嫌われる、恐れられる、あるいは敬して遠ざけるべし
となるだろう。

「精神病? うつ病? なんてことないよ、誰でもなるし・・・20年ほど
前は米国では憧れの病気で、心理カウンセリングを受けるのがセレブのス
テータスシンボルの一つになっていたしね、ま、病気自慢」

そんな風に思っているから小生は持病を恥じてはいないが、カミサンや娘
は「表沙汰にはできない病気」と(世間の人と同様に)思っている。ま
あ、多少は恥じた方がいいのかなあ、などと思わないわけではないが、
「それならお前だってイカレテル。人のことを言えるのかよ」と反発した
くなる。

狂気というマグマは誰もが抱えている。発狂、噴火するかどうかは予知も
できない。It's your turn、今度は君の番・・・病棟日記から。

【2016/11/23】下痢は続くは、歯茎は腫れるや、ろくなこともないけれど
虜囚の身、俎板の上の鯉だから、こんなものだろう。気晴らしに「漢字ク
ロスワードパズル」で遊んでみたが、とても難しくて困惑するし、自信も
なくす。

支那王朝は世界に類を見ないモノ、ソフトを創ったが、漢字はその筆頭だ
ろう。10万字もあるそうだが、日本では3万字ほどが流通し、現在は1万字
ほどに絞られ、日常的に使われるのは当用漢字(後の常用漢字)を含めて
3000字ほどか。それでも新字体と旧字体(斉藤、斎藤、三沢、三澤とか)
もあるし、二つ以上の組み合わせで意味をなす言葉(参画、幼稚園、優勝
劣敗、無我夢中とか)もあるから実に多彩だ。

アルファベットは大文字小文字で52文字。この組み合わせで単語を作るか
ら、意味を知らなくても一応は発音できるのだろう。

しかし漢字は老人の小生でも意味不明、発音不明が多いし、たとえ読めて
も書けない難字も実に多い(魑魅魍魎、虎視眈々とか)。それでも漢字は
一文字でもおおよそ意味が分かる(例えば「偽」なら、嘘とか偽物)から
とても便利だ。

戦後、日本ではGHQの政策で漢字を大幅に制限した。GHQ占領政策としての
文化大革命だ。それまで新聞は漢字にルビをふっていた(このため紙面は
真っ黒だったが、子供でも読めた。

一方、インテリ向きの新聞はルビがなく真っ白だったそうだ)が、当用漢
字として2000字ほどに制限すればルビの手間はほとんど要らなくなるから
コスト削減になり、この漢字制限に新聞社は大賛成、これに出版社、印刷
会社も追随したから、あっという間に漢字狩りは成った。

かくして漢字を読めない、書けない大学生に象徴されるように浮薄は普及
し、白痴化は進んでいったのだ。

中共は革命戦争に勝利すると簡体字を導入したが、日本と同様に文化、伝
統破壊につながった。朝鮮は漢字を追放してハングルのみにしたから、古
文書を理解できる人は年々少なくなっている。韓国では漢字復活を希望す
る人は少なくない。

支那のビックリ発明品の二番手は火薬かもしれないが、これは門外なので
書きようがないから「纏足/てんそく」にする。女性の足を童女のように
小さくしておくものだった。奇習としか言いようがないが、何のためだっ
たのかは諸説ある。纏足しない女は女とは認知されなかったというから凄
まじい。

「宦官」もそれに劣らず凄まじい。皇帝が政務する場と、私的生活の場で
ある後宮を分離し、政務に後宮が介入しないようにしたのだという、表向
きは。

後宮は女ばかりだから間違いがないように男は去勢が義務付けられ、男で
も女でもない役人が取り仕切っていた。表の政務に参与する官僚と、裏の
後宮を運営する宦官は一切の接触を禁じられ、それを犯せば厳罰に処せら
れたという、表向きは。

それでも宦官のなり手が多かったのは食が一生保障されたこと、出世すれ
ば袖の下も期待できたためだろう。

「督戦隊」というのも実にユニークだ。戦闘中に逃げる味方の将兵を殺す
のが仕事で、将兵は戦線にとどまって戦うしかないわけだ。戦えば戦死す
る、それを避けるために戦線離脱すれば殺される。台湾人の林建良氏
(「台湾の声」代表)によると「戦闘中に唯一生き残る可能性は、武器を
捨てて両手を上げ、あるいは白旗を掲げて敵陣に走ることだった」そうだ。

以上のほかにも「出世のために妻を貸す」「騙された方が悪い」「事件事
故を目撃してもかかわるな」などなどあり、支那流は無尽蔵だろう。友達
にはなりたくない人々が多いだろう。

13:10、ナースによる病識調査。「カミサンと上手くやれるのだろうか、
どうしたらいいのか悩んでいる」などと伝えた。

漢字パズルは手に負えず、時間ばかり食うのでギブアップした。小生は月
刊誌にクロスワードパズルを寄稿していたが、作るのは意外に簡単だっ
た。解くのはちょっと手間取る。

20:00、眠剤を飲み寝つく。この真空地帯では何事もなく毎日が過ぎてい
く。(つづく)2017/4/14


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