2017年05月12日

◆トランプは政権の危機を感じたに違いない

杉浦 正章



FBIコミー長官解任の背景
 

ホワイトハウス記者団は若いから仕方がないが気付くのが遅い。今頃になってウオーターゲート事件とそっくりだと騒ぎ始めたが、筆者が「『トランプ政局』は『ニクソン政局』と酷似」と指摘したのは2月1日だ。威張るわけだが「どんなもんだい」と言いたい。確かに我が青春時代に書きつづった懐かしい言葉が次々に登場している。院内総務、特別検察官、弾劾、ひいては「ホワイトハウス前の市民集会」と言った具合だ。


相似形のポイントは捜査の最先端にいたFBIのコミー長官の解任だ。ニクソンはいわゆる「土曜の夜の虐殺」と表現された73年10月の特別検察官の解任がきっかけとなって、辞任要求が高まり始め、74年8月に議会による弾劾が実現しそうになって辞任した。ばかな民放コメンテーターが「弾劾されて退陣した」と訳知り顔で述べていたが、誤報だ。アメリカの政局は息が長い。退陣まで10か月もかかっている。
 

ホワイトハウス記者団の追及は、あきれるほどねちっこかった。筆者も毎日詰めかけたが、報道官とのやりとりが3時間に及ぶこともまれではなかった。トランプは絶対外れることのないトラバサミに自らかかったような状態が続く。


ニクソンによる特別検察官解任劇は議会、メディア、FBIを結びつけて、こだまがこだまを呼ぶように追及の勢いを増したが、コミー解任は同様の構図で「正義対邪悪」の戦いの様相を深め、とどまるところを知らないだろう。危険なのは、のたうち回ったトランプが外交・安保に逃げて大誤算しないかということだ。国民の目を転換させるのは「朝鮮戦争」だが、こればかりは日本に甚大なとばっちりが来る。用心しなければなるまい。
 

トランプが甘いのは、コミーを解任すれば口封じが出来ると考えた点だ。FBIはいわば「民主主義と正義の砦(とりで)」であることを知らない。ウオーターゲート事件で、電話でのどの奥から絞り出すような声でワシントンポストの2人の記者に特ダネをリークを続けた「ディープスロート」は、33年後になって初めて当時のFBI副長官マーク・フェルトであったことが分かった。


ちなみに「ディープスロート」は当時はやり始めた有名なポルノ映画の題名であった。今後FBIは誰が長官に任命されようと、大統領から弾圧を受けようと、第二のディープスロートが出てきて必ずリークを開始するだろう。メディアはコミー自身に何か発言させようとするだろう。
 

そもそもホワイトハウスはコミー解任の理由を「ヒラリー・クリントンのメール問題への対応」などと述べているが、一顧の価値もない大嘘だ。メール問題が問題であるのなら、トランプは就任直後に解任するべきであるが、就任当初は「我々は偉大な8年間を共にする」とコミーと手を握り合っていたではないか。民主党院内総務(日本の幹事長)のシューマーが「解任は隠ぺいだったと全てのアメリカ人が思う」と述べている通り、誰もトランプを信用する者はいまい。
 

コミーが何かを握って、それをまもなく開かれる予定だった議会の公聴会で証言しかねない状況に立ち至ったからであるとしか思えない。その内容は何であったかが全ての焦点となるが、推理の天才名探偵明智小五郎の筆者としては、また威張るわけだが分からない。(*^O^*)。


しかし、トランプ政権を直撃する重大な問題が水面下で生じたことは間違いないだろう。直撃する問題とは、選挙中ににトランプ陣営とロシアが提携した疑惑が第一にあげられる。ロシアのハッキングによる選挙妨害が明白となり、トランプ自身か政権幹部がやり玉に挙がる可能生があったのかもしれない。選挙が無効になるほどの証拠ならばトランプが必死に隠ぺいしようとするのはもっともだ。


またよりショッキングなケースはトランプ訪露のさいの女性問題の存否だ。ハニートラップに引っかかったとすれば大統領直撃マターだ。プーチンはCBSの突撃インタビューで関与を問われて「全くない。怒らないでいただきたいが、あなたの質問は私にとって非常に滑稽です。我々とは何の関係もありません」と述べているが、確かに聞く方が野暮だったかもしれない。米大統領を脅迫できる情報を握っていれば、言うわけがないからだ。
 

今後の焦点は刑事訴追の権限を持つ省庁である司法省が議会やマスコミの強い要求を受けて特別検察官を指名するかどうかだ。セッションズ司法長官は、2016年の駐米ロシア大使との接触について自身が不正確な証言をしたことを受け、ロシア関連の捜査には関与しないと明言している。代わって副長官のローゼンスタインが特別検察官を指名する可能性があるかどうかだ。こればかりは世界に冠たる米国の民主主義の存否が問われる問題である。


マスコミと議会民主党、そして共和党の一部による指名要求の高まりに期待するしかあるまい。弾劾などはまだまだその先の話だ。ワシントンでは、長いトランプ政局が続く。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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