2017年07月25日

◆創業時は行列のできた貸金業界

渡邊 好造
 


小口貸金業界、いわゆるサラ金業界は銀行に母屋を乗っ取られかっての隆盛はない。まるで悪魔の業種のように思っている人もいるだろうが、創業当時は現在重宝されている携帯電話に匹敵する位の歓迎ぶりだった。

昭和39(1964)年頃のスタート時、出資法の上限金利・年109.5%(日歩30銭))の高率だった。日歩30銭とは、100円借りると1日の利息が30銭、仮に1万円を1年間借りたままにしておくと元利合計2万950円になる。利息制限法の上限金利20%(日歩約5.5銭)には違反するが罰則はなかった。

こんな超高金利なのに創業時は利用者が行列をつくった。新聞・週刊誌で便利で画期的な業種と持て囃され、テレビで支払金額表が紹介されたこともある。業界の宣伝文句は”1万円を借りて利息は煙草1箱の1日30円”。

大繁盛の秘密は銀行など従来の金融機関が目を向けなかった個人(特にサラリーマン)を対象に小口貸付を始めたことにある。

唯一頼りになるのは質屋ぐらい。銀行に借入れを申込むと担保・保証人・印鑑証明を要求されたが、この業界はそれに代わる無形の返済能力基準を設定して急成長した。借金の後ろめたさもその一つ。

主なターゲットにしたサラリーマンに印鑑証明を求めても「なんだそれ、、」「そんな面倒な、、」との答えが返ってくる。その頃印鑑登録している人はごく限られていて、すぐに証明のとれるのは既に借金漬けの可能性があるとみて貸さなかった。

さらに、客が必要とする金を”現金の救急車”と称して勤務先や自宅までわざわざ配達した。客にとってのメリットはなんといってもその便利さにあり、常連客には希望する所へ現金を届ける。

ある大手広告代理店の営業部長から 「麻雀屋にいるので○○万円を届けてくれ」との電話があり、直ちに茶封筒に現金を入れ『部長、書類が出来ましたので持ってきました』として手渡す。麻雀の負けにみせた取引先担当者への裏金であった。借用書は翌日会社に出向いて受取る。

現金の配達は業者側にもメリットがあった。勤務先だと客の在籍確認ができ地位や仕事の内容・雰囲気から信用度がつかめる。まず受付嬢と親しくなること、、。

自宅配達なら、玄関の履物の整理具合で几帳面な人かどうかを見分け、当時の高級家具だった冷蔵庫・洗濯機・テレビなどがあるかどうかで生活程度を確認する。入居基準の厳しかった公社・公団住宅の居住者なら、お上の収入審査終了済みの保証付優良客とみた。そのため”団地金融”とも言われた。

当時の貸付金額は、一人精々1〜2万円の少額で、期間も1〜2か月、決して無理な貸付けはしなかった。

しかし、業者がもっとも困ったのは貸付資金で、客がいても手持ちの金が足りない。社員の給料を一時的に返却、株券で支給、水商売のオネーサンの投資、などなどあらゆる手をつくして賄った。

その人気と儲けぶりに目を付けたのが既存の金融機関の都市銀行や保険会社である。世間の目やプライドもあって自ら高利の貸付けをするわけにはいかないし、貸付け・回収のノウハウもない。

そこで、いくつもの子会社を迂回させて融資し、ついでに自社の定年退職者を役員として多数天下りさせた。

結果、資金が豊富になり低金利での貸付競争が激化した。より以上の利益を上げるため、1社一人あたりの融資金額を50〜100万円、あるいはそれ以上にまで拡大し、期間も1〜2年の長期にした。

金額・件数の情報機関をつくり多重・多額債務者を防ごうとしたが、情報が行き渡らない短時間に数社をまわる客がいたり、業者側もこれ位ならと高額融資することもあった。

そのうち借金を返すための借金をする者が出たりして家計は破綻、当然取立ても厳しくせざるを得ない。行方不明者や自殺者が出るなど大きな社会問題に発展した。

上限金利は法律でも段階的に下げられ平成12('00)年に29.2%(日歩8銭)になったが、収入に関係なく借りまくる者が後を絶たなかった。

そこで、平成22('10)年に新貸金業法が施行され、貸付上限金利20%以下、貸付金額は収入の3分の1以下に規制された。業者の儲けは大きく減り、さらなる致命傷は法規制前に貸付けた20%以上の金利分を遡って返却せよ、との最高裁の判決が下ったことである。

この計算不能の巨額の過払い金利返還請求で業界最大手の武富士は倒産、多くの業者が廃業または銀行の傘下に入った。

創業当時あれほどもてはやされ、時代の寵児として大繁盛だった貸金業界は、都市銀行・生命保険会社などの既存の大手金融会社に利用され踏みつけにされたあげくに、世論と法律の呪縛で崩壊してしまった。

今では、過払い金利返還請求で思わぬ金を得たために貸付禁止のブラックリスト入りした客、総量規制で必要金額不足の客(銀行が貸さない零細企業経営者ら)が、法律無視のヤミ金融の餌食にされ問題化し始めている。(完)

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