2017年08月02日

◆米に日本置き去りの対北“現状凍結”構想

杉浦 正章



中距離核ミサイル容認で妥協模索
 

ゲーツが頭越し米中交渉案
 

安全保障分野において米政府の高官としてもっとも経験が豊かな元国防長官ロバート・ゲーツが対北朝鮮政策の大転換を唱えている。内容は米国が北朝鮮の体制を承認し、体制の転換を狙う政策を破棄して平和条約を締結するというもので、その際中距離核ミサイルは容認するという“現状凍結”構想だ。背景には米国内に北が1年以内に核搭載のICBM保有に成功するとの見方が強まっており、放置すれば米国にミサイルが到達し、核戦略の転換を根本から迫られるという危機感が存在する。


しかし、その場合日本はどうなるかだ。中距離核ミサイルを認めれば、日本は常に核どう喝の対象になり、脅かされることになる。間違いなく日本には核武装論が台頭し、非核3原則など吹き飛ぶ。ゲーツ構想は如何に危急存亡時においては、米国がエゴイズムを発揮するかを如実に物語るものだ。政府は外務省を通じて米側に懸念を伝達すべきだ。
 

ウオールストリートジャーナル紙とのインタビューで、現在ウィリアム・アンド・メアリー大総長のゲーツは「中国が依然としてカギを握る」として、中国に対して1)旧ソ連とキューバ危機を解決したときと同様に、北朝鮮の体制を承認し、体制の転換を狙う政策の破棄を約束する用意がある、2)北朝鮮と平和条約を締結する用意がある、3)韓国内に配備している軍事力の変更を検討してもいい――と提案する。この見返りに、米国は北朝鮮の核・ミサイル開発計画に対して強い制約、つまり基本的には現状での凍結を要求し、国際社会や中国自身が北朝鮮にこれを実施させることを求める必要があることなどを提唱している。


このうちとりわけ重要なのは「現状での凍結」が意味する問題である。詳細は後で述べるが日本や韓国が受け入れられるかどうかを度外視している。加えて「北朝鮮に核兵器をあきらめさせることはできないと思う」「金氏は核兵器を体制存続のために欠かせないと考えている。しかし運搬手段(ミサイル)の射程をごく短距離にとどめさせることはできるかもしれない」などと述べた。
 

さらに米国は中国に対して、「これを受け入れられなければ、われわれは中国が嫌がる手段をアジアで講じる」と、中国をどう喝している。「米中間でこうした合意形成ができない場合、米国は韓国や日本、太平洋の米軍艦上を含め、アジアに多くのミサイル防衛システムを配備し、さらに米国は北朝鮮から発射された大陸間弾道ミサイルと思われるもの全てを撃ち落とすと宣言する。


要するに、外交的な解決策がなければ、この政権を封じ込めるために必要な手段が何であれ、われわれはそれを実施するということだ」と言明している。そしてゲーツは「レックス・ティラーソン国務長官とジム・マティス国防長官がこの計画を中国に示し、中国が支持すれば、その時初めて北朝鮮との直接協議が始まる。」と強調している。
 

この構想は金正恩を小躍りさせるものであり、逆に日韓両国は、米国のエゴイズムに置いてけぼりを食らう形となる。日本にしてみればいくら北朝鮮問題が行き詰まり状態にあるとはいえ、米国が中国との間で日本頭越しの戦略を展開されては、日米同盟の基本を崩しかねない問題へと波及し得るものだ。米国はニクソンの対中頭越し外交の伝統が物語るとおり、行き詰まると日本を度外視して超大国間の直取引に傾きがちな傾向を示す。問題は安保ど素人のトランプを始めティラーソンらが、ゲーツ構想に乗りかねない点であり、日本としては米国にクギを刺す必要がある。そうでもしなければ国会で野党から「それみたことか」と追及を受けるのは安倍となる。
 

もっとも今のところ米政府はゲーツ構想では動いていない。米国内では北が本格的な核搭載のICBMを配備してからでは遅いという立場から「今後1年以内が軍事行動に残されたゴールデンタイムだ」とささやかれている。国連大使ヘイリーは声明を発表し、制裁強化に消極的な中国を名指しで「協議の時は終わりだ」とし、協力するのかどうか決断するよう迫っている。


また中央情報局(CIA)長官マイク・ポンペオは、「朝鮮半島から核兵器を排除し、非核化すれば素晴らしいが、それに関して最も危険なのは現在それらをコントロールしている人物だ」と指摘するとともに「そのために、われわれにできる中で最も重要なのは2つを分けること。能力と、(核開発の)意図を持つ人物を分け、引き離すことだ」と強調した。これは言うまでもなくCIAが金正恩暗殺を狙って動き出していることを意味する。今後斬首作戦の展開は言うまでもなく、クーデターの誘発、各種の方法での宣伝や謀略を北朝鮮国内で展開してゆくことになろう。

        <今朝のニュース解説から抜粋>


◎俳談

【寂しさ】

 残りしか残されゐしか春の鴨    岡本眸
 春深くなって鴨は北辺の地に帰るが、まだ帰らずにいる鴨を「残る鴨」という。春の季語だ。句意は自らの意思で残ったのか、それとも仲間から外されて残されたのだろうか、あの春の鴨は。これから酷暑を生き抜けるのかなぁ。根底に底知れぬ淋しさがある。やはり岡本の句に
 日向ぼこあの世さみしきかも知れぬ
があるが、これと通ずるものがある。

 淋しさも茶柱と呑む炬燵かな  東京俳壇入選

     <俳談>        (政治評論家)
 
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