2017年08月11日

◆世界レベルには程遠い

加瀬 英明



世界レベルには程遠い 豊田真由子議員の罵詈雑言

私はテレビで豊田真由子衆議院議員が、運転中の秘書に対して、罵詈雑言
をあらんかぎりの声で絶叫しているのを聴いて、「日本はよい国なのだ」
と、安心した。

きっと、読者の方々は意外だと思われることだろう。

だが、私は日本の国民性がよく顕れていると、思った。日本語の特徴と、
日本の民族性が、中国、韓国、ヨーロッパの諸国民と異なっていること
が、浮き彫りになっていた。

豊田議員は言葉を盡して、自分よりも年長の男性秘書を罵倒しているの
に、「このハゲ!」とか、「こいつ豊田真由子様へ向かって、ふざけや
がって!」というように、相手を罵しる語彙(ごい)(言葉の表現)が、実
に乏しい。

中国や、韓国語になると、「お前の母親の××(女性性器)は腐ってい
る!」とか、「犬の糞を食ったばかりの顔(つら)をしやがって!」とか、
相手を罵しる言葉が、数百もある。

これは、言語学で「罵倒語」(英語ではcurse words 呪いの言葉)と呼ば
れるが、キリスト教の旧約聖書を読むと、「いったい、これが宗教書なの
か」と疑わされるほど、罵倒語に溢れている。

私はケネディ大統領が暗殺された直後に、当時のアメリカの流行伝記作家
のウィリアム・マンチェスターが、『ある大統領の死』をアメリカの週刊
誌に連載したのを、『週刊新潮』が版権を買った時に、訳者をつとめたこ
とがあった。

ところが、ケネディ大統領とジャクリーン夫人が会話のなかで、英語国民
が気に入らないことに対していう、「シット!」(糞尿)とか、「ファッ
ク!」(性交のさま)とか、人を罵っていう「アスホール」(尻の穴)な
ど罵倒語を連発するので、翻訳しようがなく、頭を抱えたことがあった。

英語だけではない。フランス語、ドイツ語などのヨーロッパ諸語にも、数
限りない罵倒語がある。荒々しい人たちなのだ。

それに対して、日本語では罵倒語になると、「クソ!」とか、「アホ!」
とか、貧弱である。おそらく7つか、8つぐらいしかないのではないか。

豊田真由子議員のような女性は、古代から日本では珍しくなかった。

『源氏物語』と同時代に著された、藤原道網母による『蜻蛉(かげろう)日
記』は、19歳に嫁いでから20年あまりにのぼる結婚生活について、不平鬱
憤(うっぷん)を綴った日記文学である。著者が癇性(かんしょう)を爆発す
るたびに、夫の兼家が「おお、こわや、こわや」といって、怯えている。

日本は、中国、韓国、西洋と違って、古代から男女が和歌を詠んで、対等
に相問歌(そうもんか)を交換したように、女性が強い国であってきた。

豊田議員の秘書の証言を読むと、豊田議員は癇性が強いだけで、絶叫した
後に痙攣して意識を失っていないから、先天的な癲癇(てんかん)症ではない。

日本語にほとんど罵倒語が存在しないのは、日本人が互に思い遣って、人
と人との和を重んじるからである。それに対して他国では、人々が「俺
が」「わたしが」といって、自己中心で、つねに相手に勝たなければなら
ない対立関係にあるからだ。

日本の古来信仰である神道のもっとも基本的な教えは、「言挙(ことあ)
げ」をしてはならないことである。言葉はもっぱら自己主張と、自己弁解
のために用いられるから、心を用いてできるかぎり言葉を慎んだほうがよい。

日本では「よい言葉を発すれば、現実がよくなる」という、言霊(ことだ
ま)信仰が力をもってきた。そのために、罵倒語が存在しなかった。日本
は言葉と論理を重んじる他の諸国と違って、心の国であってきた。いまで
も日本は、「言霊の幸(さきは)ふ国」なのだ。

そう思いながら、豊田議員の罵声を聞いていると、可愛らしい。配偶者が
いられるようだが、夫君は1000年前の『蜻蛉日記』の兼家のように、苦労
されているのだろうか。



この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。