2017年10月26日

◆勝ったからこそ「平衡の感覚」が不可欠

◆勝ったからこそ「平衡の感覚」が不可欠
杉浦 正章


明治以来一位の長期政権も視野に


 第一の勝因は極東情勢の激変


 史上最長の「天孫降臨景気」も


86年に衆参同日選で大勝したとき中曽根康弘は、「自民党は左にウイングを伸ばした」と発言したが、安倍自民党による5回にわたる国政選挙の大勝は自民党が農村型政党から完全に脱皮し、都市型政党としてのポジションを確立したことを意味する。都市化の波は農村部対都市労働者対峙の構図を崩壊させ、自民党の左ウイングを固定させた。


歴代まれに見る長期政権が視野に入り、戦前戦後を通じて7年8カ月で2位の佐藤栄作はもちろんのこと、7年11カ月で1位の桂太郎をも抜いて歴代1位の政権まで見通せるようになった。来年9月の自民党総裁選で3選されるということは、これまでの5年間に4年をプラスすることになるからである。今後政治的には首相・安倍晋三は、日本全体を俯瞰しつつsense of proportion(平衡の感覚)を堅持した政権運営が求められる。
 

敵対する論陣を張って選挙を自民党不利に導こうと散々苦闘した朝日は、顔面蒼白紙面であった。一面で「安倍一強の変化を求める変化の兆しが見えた」と書いたが、事前に行った各種の世論調査をよりどころにしても科学的でない。最大でもっとも正確な世論調査は総選挙であるからだ。安倍政権の普段の努力が何よりの支持獲得に結びついたのである。加えて、希望の党代表の小池百合子と民進党代表の前原誠司の“政略至上主義”は、有権者が見事に見破った結果となった。小池は厚化粧の化けの皮をはがされたのだ。立憲の躍進も、あまりの与党の強さに判官びいきがあったからに過ぎない。将来的には社会党系野党は消滅の流れをたどる。


今回の場合、有権者が左ウイングを強化、固定した第一の理由は激変する極東情勢にある。中国の一国至上主義と北朝鮮の横暴を抱える極東において、如何に国民の生命と財産を守り続けるかという困難極まりない課題は、安倍政権でなければ克服できないと有権者は判断したのだ。北朝鮮の異常な指導者が繰り返す核・ミサイル実験が佳境に達しようとしているなかで、多くの国民が、これに対応できるのは自民党政権しかないと判断したことにどう応えるかである。安倍政権としても北が狙うどう喝による「極東支配」を座視するわけにはいくまい。米国と共に「力による抑止」政策を維持して暴発を防ぐことが最大の責務であろう。
 

安倍は間違ってもトランプに戦争に突入させてはならない。なぜなら、たとえ北の政権を壊滅させることが出来ても、1発でもミサイルが東京に落ちれば戦争は「敗北」なのである。米国が練り上げている作戦の1つは北の中枢、国境沿いの通常兵器、核ミサイル基地などを、爆撃や巡航ミサイルで一挙に叩き潰すものだと言われるが、苦し紛れの北のミサイルでソウルと東京が火の海ばかりか毒ガス、細菌汚染まみれになる可能性は否定出来ない。米国に打撃を与える核ミサイルはまだ完成されていないから、何をしようと米本土は安全とトランプが考える危険は計算に入れなければならない。第二次朝鮮戦争の構図ははじめから成り立たないと安倍は見るべきであろう。


安倍は来月5日のトランプとの会談で刺すべきクギは刺さなければなるまい。基本戦略は軍事圧力や金正恩暗殺などによって北の政権を崩壊に導くことであり、そのためにも自民党が主張する敵基地攻撃能力も保持すべきであろう。専守防衛の時代は大きく転換させなければならない。その第一歩が敵基地攻撃能力なのである。保持することにより北への圧力は格段に向上する。
 

一方、北の暴走に勝るとも劣らないのは5年ぶりの共産党大会で、習近平がその独裁色を一段と強化しようとしていることだ。党大会を見る限り、中国は民主化などという言葉をかなぐり捨てて、ひたすら習近平の下に力を集中、中国を社会主義国家として完成させようとしている。その政治報告で際立つのは@共産党結党から100年の2021年に向けて社会主義の近代化を実現させるA中国建国から100年の2049年までに社会主義近代化強国を作り上げるB同時に軍隊を世界一にするというものだ。
 

これらの方針は米国などにあった「半世紀もたてば中国は民主主義国になる」とする予想を覆し、民主主義と対峙する理念の国家へと邁進する方向を強めたことを意味する。驚くべき事は習近平が「中華民国が世界の諸民族の中でそびえ立つ国になる」と言ってのけたことだ。これはかつての中国王朝がそうであったように、世界的な規模での覇権を目指すことを意味する。習近平は南シナ海における軍事拠点建設を誇らしげに成果として強調したが、まさにスターウオーズのアンチヒーローである「ダース・ベイダー」的な存在になろうとしている。その臆面もない覇権主義からみれば、東シナ海への進出も今後激しさを増すとみなければならない。
 

このような中国の一国至上の覇権主義は、好むと好まざるとにかかわらず安倍政権時代に顕著なものへと発展し、極東における民主主義大国日本とダースベーダーに率いられる社会主義大国中国の政治的対峙の構図は強まるだろう。もちろん米国もやがてはこの構図に気付き、米ソ対決の冷戦時代に似た構図が東アジアで生ずる可能性も否定出来ない。幸い安倍はトランプと極めて親しい関係を築き上げており、日米で中国の膨張をけん制する流れが生ずるだろう。
 

一方、経済面ではアベノミクスが絶頂期に入ろうとしている。安倍政権の12年12月に始まった景気回復は今年9月まで回復していれば、65年11月〜70年7月までの57カ月間に及んだ「いざなぎ景気」を抜いているだろう。今後は2000年までオリンピック景気がこれに上乗せされるから、史上空前の「天孫降臨景気」も夢ではない。雇用は史上初めて1人に対して正社員の有効求人倍率が1に達した。希望すれば正規社員になれる時代となった。東京での倍率は2であり、全国的にも1.5と好調だ。


しかし、ここに来て経済界に“慢心”とみられる不祥事が出始めた。神戸製鋼所や日産自動車で発生した品質管理をめぐる問題だ。安倍は22日「優れた日本のものづくり、失われた信用を取り戻すべく、政府と産業界一丸で取り組んでいきたい」と述べたが、蟻の一穴から崩れないとも言えない。徹底した行政指導が必要だろう。
 

国会運営は「勝って兜の緒を締めよ」であり、「実るほど頭を垂れる稲穂かな 」でもあろう。慢心してはならない。とりわけ不祥事多発であった前二年生議員など若手議員の問題が気になる。昔は派閥が教育の役割を果たしたが、今後は党が議員のイロハからマスコミ対策まで徹底した教育を3か月にわたってし直す必要があるのではないか。


改憲問題も、可能になったからこそ、一部でも野党が入る形で広い合意を目指す方がよい。原発問題は5回目の支持獲得であり、安全基準を達成すれば稼働を推進すべきであろう。
       <今朝のニュース解説から抜粋> (政治評論家)

◎俳談
【夏は来ぬ】
山の子の合唱遠く夏は来ぬ 毎日俳談入選
 夏は来ぬは佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲の日本の唱歌である。2007年に日本の歌百選に選出されている。卯の花、ホトトギス、五月雨、早乙女、タチバナ、ホタル、クイナといった季語が満載で、初夏を彩っている。掲句は山の子が唱歌「夏は来ぬ」を歌っているのか、それとも作者が「夏が来た」と言っているのか判然としない。<山の子の合唱遠く/夏は来ぬ>と切れを入れれば作者が言っている方だが、どちらとも受け取れる。筆者はどちらでもいいと思う。
なぜなら誰でも知っている唱歌の風情を一句に活用しようとしたことは確かであるからだ。

         <俳談   杉浦正章  (政治評論家)>  
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