2017年11月02日

◆改憲は「正攻法」しか道はない

                          杉浦 正章


国民投票はオリンピック後の衆院選とダブルか
 

「重宝(じゅうほう)を抱くものは夜行せず」という。大きな目的を抱く者は、その身を大切にすべきであるというたとえだ。首相・安倍晋三が総選挙圧勝後の政治姿勢の基本を「謙虚で真摯(しんし)」に置いた。勝ったからこそ野党の主張にも耳を傾けるという姿勢だ。確かに安倍政権の5年間は安保法制など与野党激突法案の処理で対決する場面が多かったが、史上まれに見る長期政権が視野に入った以上、ここは、当面誠心誠意の低姿勢でいくしかあるまい。歴史を振り返れば安倍の祖父岸信介による安保改定の強行は路線として立派だった。しかし、その後の党内抗争は、自民党に対する国民の大きなイメージダウンをもたらした。

これに対処するため池田勇人は「低姿勢」と「寛容と忍耐」のイメージ戦略を打ち出し成功した。安倍は独りで岸と池田を使い分けることとなる。安倍は憲法改正という「重宝」を抱いており、これは覇道政治では達成できないのはもちろん、仁徳による統治を意味する王道でなければ無理だ。ひたすら幅広い民意をまとめる「正攻法」しか道はない。
 

安倍は改憲問題を処理するに当たって前総務会長細田博之を憲法改正推進本部長に任命した。従来自民党内の論議は船田元など憲法調査会メンバーを中心に“神学論争”が行われてきたが、総じて政治判断の欠如から迷路に入って抜け出せない状況をもたらしただけだ。細田は総合判断力に長けており、適材だ。首相の意を受けて、公約に掲げた9条への自衛隊根拠規定の明記や教育の無償化などについて臨時国会中に方向性を打ち出す方針だ。安倍の提示した「9条の平和主義の理念は未来に向けて堅持し、9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」構想について、安倍自身は「たたき台」という柔軟姿勢を見せているが、同構想を基軸に据えざるを得まい。


通常野党第一党を巻き込むことが必要だが、憲法9条改憲を頭から否定する立憲民主党代表枝野幸男や、半減した共産党など左翼勢力とは、調整のしようがあるまい。希望の党とのすりあわせが重要ポイントとなるが、同党に働きかければ民進系議員を刺激して、党分裂は不可避であろう。だいたい野党第一党が55議席では、民意の代表とは言いがたく、当事者能力に疑問が生ずる。


結局はまず公明党との調整が焦点となるが、同党が消極的な9条改正を脇に置いて、教育無償化などとりつきやすい部分の合意を先行させるべきだろう。いずれにしても自衛隊の位置づけを憲法上明確にすることは不可欠であり、それがなければ改憲の意味は薄れる。最後は国民投票が必要となるが、これには長期的な視野が必要だ。筆者は2000年夏のオリンピックの後にならざるを得ないのではないかと思う。国民投票で過半数を得られなければ、政権は退陣するのが憲政の常道であろうから、国民に趣旨を徹底しないままの早期実施は危険を伴う。オリンピック後なら3年近くたっており、改憲論議も熟し、解散も“適齢期”だ。衆院選と国民投票のダブル投票で国民の意思を聞くことも可能だ。
 

読売編集委員の橋本五郎は2日付の朝刊で「衆院選の勝利によって来年9月の自民党総裁選での再選が視野に入ったかのごとく考えてはいけない」と安倍の驕りや緩みを戒めている。一見もっともだが、衆院選挙は国民による首相信任投票の側面を有しており、再選は視野に十分すぎるほど入っている。自民党内情勢を見れば現段階では首班に指名された安倍以外に候補がいるのかということだ。本来なら主筆の渡邉恒雄が書くべきであろう。


橋本は議論の主旨があいまいでナベツネには劣る。また朝日も2日の社説で「衆院選直後の本社の調査で今後も首相を『続けてほしい』が37%、『そうとは思わない』が47%」として、なにやら“いちゃもん”を付けているが、大新聞たるものが、大きく判断を間違っている。衆院選は紛れもなく最大かつ無謬(むびゅう)の、“世論調査”であり、「本社の調査」ごときが出る幕ではない。自分の力量を知らないで幅を利かす態度を夜郎自大という。


1日の特別国会で第4次安倍内閣が発足した。通算で4度以上首相に選出されるのは明治の伊藤博文と吉田茂だけだ。紛れもなく安倍は長期政権へと踏み出す。戦前戦後を通じて7年8カ月で2位の佐藤栄作はもちろんのこと、7年11カ月で1位の桂太郎をも抜いて歴代1位の政権まで見通せるようになった。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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