2017年11月14日

◆政府高官が語る、北朝鮮有事近し

櫻井よしこ


米朝間の緊張は緩む気配がない。朝鮮半島有事が現実のものとなる日が極
めて近いことが読みとれる。政府中枢にいる人物が匿名で語った。

「米軍の攻撃は今年末から来年早々だと思います」

同じく匿名で自民党幹部も語った。

「米軍の攻撃は2日で完了すると、日本に伝わってきています」

別々に取材した両氏の証言は、アメリカの北朝鮮攻撃が近いこと、軍事攻
撃がないと断言できるのはドナルド・トランプ大統領が11月5日から日
本、韓国、中国を歴訪し、ベトナムのダナンでAPEC首脳会議に出席す
るなどして帰国する11月中旬までであるという点で一致した。

アメリカはそれまで外交交渉で、金正恩朝鮮労働党委員長が核兵器とミサ
イルを放棄するよう働きかける。アメリカの望む結果が得られない場合、
北朝鮮情勢は「未知の領域に入る」と、政府高官は断言する。つまり北朝
鮮有事は、早ければ11月半ば以降にもあり得るのだ。

アメリカでは、9月18日にジェームズ・マティス国防長官が、ソウルを無
傷のまま守りながら北朝鮮を攻撃できると断言した。トランプ大統領は10
月1日、北朝鮮との外交交渉に言及したレックス・ティラーソン国務長官
に対し、「小さなロケットマンとの交渉は時間の無駄だと伝えた」とツ
イートした。

他方日本では、9月8日、インターネット配信の「言論テレビ」で小野寺五
典防衛相が敵基地攻撃について詳しく語った。氏は自民党の弾道ミサイル
防衛に関する検討チームの座長として、敵基地攻撃に関する党の案をまと
めた。

「従前の専守防衛論は戦闘機や爆撃機が飛来して、或いは軍艦が近寄って
きて攻撃する、それに対して日本を守るというのが前提の議論でした。し
かし、自民党は弾道ミサイルを撃ち落とすことも専守防衛の一環だととら
えました」

核攻撃もあり得る

では一番撃ち落とし易いのはどの時点か。小野寺氏は語る。

「いま、日本が撃とうとしているのは、ミサイルが高く上がったあと落下
してくるところです。しかし、これはむしろ撃ちにくい。狙い易いのは、
ミサイル発射前か、発射後のブースト・フェーズ、ミサイルがグーッと上
がってくるところです。ゆっくり上がってきますから、ここが一番撃ち落
とし易いのです」

「日本に飛んでくるミサイルを食い止めるのが専守防衛で、たまたまそれ
が発射前には北朝鮮の領土にある。発射後はブースト・フェーズでは北朝
鮮の領空にある。これを落とすには、北朝鮮の領土に届く装備が必要にな
ります。このことを議論すべきだというのが自民党の考えです」(同)

相手から撃たれて犠牲が出てはじめて反撃が許されるのが専守防衛である
との解釈では到底、日本を守り切れない。実際に北朝鮮のミサイル攻撃、
核攻撃もあり得る中で、自民党の議論は現実的であり、評価したい。

但し、安倍首相は自民党が提言した能力や装備については、現在のとこ
ろ、保有は検討しないとしている。

他方、小野寺氏はこうも語った。

「相手に日本攻撃の意図が明々白々にあるとき、攻撃の手順に着手した段
階で、武力攻撃を受けたという事態認定をすれば、自衛隊に武力行使を下
令できる。これが、歴代内閣の考えです」

こうした中、いまアメリカでは「着手論」が議論されていると、前出の政
府高官が指摘した。

9月の段階でアメリカ世論の58%が北朝鮮への軍事行動を支持していた
が、米軍は伝統的に先制攻撃よりも、攻撃を受けて反撃する傾向が強い。
パールハーバーも、日本に先に攻撃させるように流れを作ったと、著名な
歴史学者、チャールズ・ビーアドも指摘している。

「先制攻撃のイメージを避けたいアメリカが着手論を言い始めています。
これは自国への攻撃が明白になり、敵が攻撃の手順に着手したと判断した
とき、反撃が許されるという考えです。何を自国への攻撃と見るのかは、
その国の判断です」と、政府高官。

日本は北朝鮮有事にどう対処するのか、自民党で議論された敵基地攻撃を
可能にする装備などは予算措置をしているのかと質問すると、この人物は
明言した。

「北朝鮮のゴールは遠くないのです。この暮れにも、来年早々にもという
緊急事態です。先のことを考えて具体的に手当するような猶予はないのです」

安倍首相は今月22日の総選挙を国難突破の選挙だと宣言した。そのとおり
の展開になりつつある。北朝鮮に関するアメリカの狙いはこの国から核を
取り除くことだ。アメリカは恐らく金正恩氏の斬首作戦も決行するだろ
う。ここまでは明白だ。その後はどうなるのか。

拉致被害者を救出

まず、北朝鮮有事で日本は何を目指すのか。まっ先に横田めぐみさんをは
じめ拉致被害者を救出することだ。この件の担当は外務省だが、彼らの手
元に拉致被害者についての情報はない。アメリカにも恐らく、ない。

一人ひとりがどこにいるのかを把握することなしには、救出作戦は不可能
である。厳しい現実の中で、国民を救出することさえできない日本の現状
を如何にして変えていくか、私たちは日本国民の責任として考え、実行し
なければならない。それは究極的には憲法改正につながるはずだ。

もう一点、日本が北朝鮮有事の先に見据えるべきは、中国の脅威である。

「中国は北朝鮮問題に世界の注意が集まるのを歓迎しているでしょう。し
かし、北朝鮮問題は中国問題なのです」と、高官氏。

中国はいま、ソマリア沖の海賊対策を名目に、インド洋からアラビア海に
かけての海洋調査を行っている。中国がアメリカの空母に対処するひとつ
の手段が潜水艦の活用である。71隻以上保有しており、それを世界の海に
潜航させてアメリカの動きを牽制するのである。

潜水艦の展開にはしかし、海の調査が欠かせない。海底の地形は無論、海
流、水温、塩分濃度などを季節要因も含めて把握しておかなければならな
い。それを中国は各国の眼前で堂々と行っているというのだ。

「彼らは日本周辺の海域でも同様の調査に余念がありません。日本もアメ
リカも、インドもオーストラリアも皆、中国の意図を読みとっています。
世界に覇権を打ち立てようと、一歩ずつ実行する中国の前で、日印米豪の
連携は着実に進んでいます」

22日の選挙は、小池百合子氏ら野党のいうモリカケ隠しなどという「しょ
ぼい」話ではない。北朝鮮危機、中国の脅威に軍事的にも対応し、国と国
民を守れる国になるための選挙なのだ。

『週刊新潮』 2017年10月26日 日本ルネッサンス 第775回

             
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