2017年11月21日

◆無所属なのに党役員ってどういうこと?

                        酒井 充


【酒井充の野党ウオッチ】無所属なのに党役員ってどういうこと? こん
な脱法行為を是とする民進党に立憲主義を掲げる資格があるのか 2016.4.12


http://www.sankei.com/images/news/160412/prm1604120004-n1.jpg

民主党が維新の党を吸収合併した民進党が3月27日に発足し、150人規模の
野党第一党が誕生した。ただ、新代表は旧民主党の岡田克也代表が「続
投」したとあって、「新党」のイメージを欠き、政党支持率も伸び悩んで
いる。あまり注目されない中で、党に所属しない無所属の国会議員が党の
要職に就くという不可解な“脱法行為”が、淡々と実行されていた。

経緯が複雑なので、順を追って説明する。民進党は旧民主党の130人、旧
維新の党の21人、解散した改革結集の会の4人、無所属だった水野賢一参
院議員の計156人で発足した。解散した旧維新の党は議員26人の政党だっ
たが、参院議員の小野次郎、川田龍平、柴田巧、寺田典城、真山勇一の各
氏は民進党に参加しなかった。正確に言えば、この5人は参加したくても
できなかった。比例代表選出議員の政党の移動を原則禁じた国会法の規定
があるためだ。

小野、柴田、寺田3氏は平成22年の参院選で当選した。真山氏はこの選挙
で落選したが、24年に繰り上げ当選している。川田氏は25年の参院選で当
選。いずれもみんなの党の比例代表で当選した。だが、党内抗争が激化し
たみんなの党は26年12月の衆院選を前に解散した。

国会法は、比例選出議員の政党の移動禁止の「例外」として、選挙時には
存在しなかった新党への参加や、他党との合併に伴う移籍などを認めてい
る。ただし、合併の場合は比例名簿を届け出た政党が存続していることが
条件となる。

本来ならば、松野頼久衆院議員(比例九州)ら旧維新の党の比例当選議員
も民進党に参加できない。しかし、民進党は民主党を存続させた上で維新
の党が合流する「存続合併」方式で誕生した。松野氏らは旧維新の党とし
て合併を意思決定したので、合流が可能となった。

一方、みんなの党はすでに解散していたため、当選時にみんなの党に所属
していた小野氏ら5人の民進党への合流を意思決定すべき主体が消滅した
とみなされている。そのため5人は民進党に参加できないのだ。

しかし、小野氏は民進党の副代表に、川田氏は「次の内閣」厚生労働相に
それぞれ就任した。副代表は、党規約で「党運営に関する重要事項を議決
する機関」と定めた常任幹事会のメンバーだ。川田氏も、党の政策を審
議、決定する「次の内閣」の一角占める。

いずれも要職といえる。民進党には今後、税金による政党助成金が97億
4300万円(28年分)交付される。巨額の税金が投入される公党の意思決定
に、「部外者」の国会議員が深く関与するというわけだ。

なぜ、このような事態が生じたのか。

川田氏を除4人は夏の参院選で改選を迎える。真山氏は参院選神奈川選挙
区に「国替え」出馬する見通しで、小野氏ら3人は比例代表で出馬する予
定だ。だが、比例代表は政党が候補者の名簿を提出して争うので、「無所
属での比例候補」は存在し得ない。

改選を迎える小野氏ら参院議員の任満了は7月25日。参院選の投開票日は7
月10日が有力視され、告示は6月中となる見込みだ。無所属のままでは民
進党公認として戦えないので、小野氏らが民進党から比例代表で出馬する
ためには告示前に辞職する必要がある。

つまり、国会法の規定で民進党に参加でないとはいえ、いずれ「民進党公
認」で参院選を戦うのだから、今から「民進党の議員として扱う」という
意図があったと推測される。晴れて当選した暁には、堂々と党所属参院議
員として迎えるのだろう。

そこで「苦肉の策」として編み出したのが、党規約の付則の「経過措置」
という項目だった。そこには次のように明記してある。

「本規約にかかわらず、2019年9月末日までの間、共同会派に所属する国
会議員で、本党所属議員でない者に、役員又は役職を委嘱し、両院議員総
会の決議に基づき両院議員総会における議決権を付与することができる」

さらりと書いてあるが、「超法規的措置」といえるこの項目により、小野
氏らは事実上「民進党所属の国会議員」として扱われているのだ。期限は
2019年9月末。川田氏が改選を迎える平成31年夏の参院選の後までなの
で、川田氏は少なくとも今後3年余り、「無所属なのに民進党議員」とし
て扱われるという異常な事態が続く。

要職を務める小野、川田両氏以外の3人も、党大会に次ぐ議決機関である
両院議員総会での議決権を持つことになった。

付則を含め党規約は3月27日の結党大会や4月5日の両院議員総会で、異論
なく了承された。「無所属議員を党所属議員として扱う」という政党政治
の根本が問われるような異常な事態に対し、誰も異を唱えなかったのだ。

そもそも選挙後に政党を移動した比例選出議員の行動は、国会法の趣旨か
ら外れた脱法行為としか言いようがない。

議員の政党間移動を禁じた改正国会法は、森喜朗内閣時代の平成12年4月
27日に成立した。改正案は自民党などの与党を中心に議員立法として国会
に提出された。

衆参両院の委員会で提案理由説明を行った自民党の鈴木宗男衆院議員(当
時)は「現行法は衆参議員とも当選後、選挙のときに所属していた政党か
ら他の政党に移動することには何らの制限も加えられていない」と指摘。
その上で「しかしながら…」として、次のように続けた。

「比例代表選出議員が当選後、他の政党に移動することについては、選挙
に示された有権者の意思と全国民を代表する議員の地位をめぐって、国会
をはじめ学界、マスコミ等各方面で種々論議のあったところであります。

これらの論議を踏まえ慎重に検討した結果、本案は、衆参比例代表選出議
員が当選後、当該選挙で争った他の政党等に移動することは、有権者の意
思に明らかに背くものであることから、これを禁止することといたしてお
ります」

さらに、鈴木氏は「比例選出議員が、選出された選挙における他の名簿届
け出政党等に所属する者となったときは、一定の場合を除き、退職者とな
ることとしている」と指摘していた。鈴木氏は「一定の場合」として、こ
の記事の冒頭で触れた「例外」の事例も説明したが、政党を移動した議員
はあくまで「退職者」となることが、この
ときの改正の趣旨なのだ。

 国会法改正案の衆参両院の委員会での実質審議はそれぞれ1日だけで、
採決では当時の民主党を含め与野党が全会一致で賛成した。つまり全党
が、法の趣旨 に賛同したといえる。

ところが現状はどうか…。「有権者の意思に明らかに背く」として「原 則
禁止」に賛同したはずの国会議員が、「例外」という抜け道を最大限活用
して頻繁 に政党を移動している。

国会法で移動禁止の対象となる現職の比例選出議員は衆院180人、参院 96
人の計276人いる。このうち、18・1%にあたる50人(衆院31人、参院19
人)が前回の 選挙後に政党を移動した。比例選出議員の約5人に1人が、
法の趣旨に照らせば本来は 「退職すべき議員」なのだ。

衆院の場合は、26年12月の衆院選後に維新の党が分裂したことが大きく
影響している。松野氏ら旧維新の党の比例選出議員17人は民進党に合流し
た。これも 本来は自らが「原則禁止」とした行為だ。参院はみんなの党
が消滅したことが大きく 影響し、移動した19人中、11人が旧みんなの党
で当選した比例議員だ。

移動した議員を現在所属している政党別にみると、民進党が19人と最も
多い。民進党は無所属議員5人も党所属国会議員として扱っているので、
その数は実 態として24人となる。民進党の比例選出議員の総数は5人を含
めると69人なので、 34・7%に上る。実に3人に1人以上が、「有権者の意
思に明らかに背く」のだ。

そんな脱法行為に平然としている政党が今、「安倍晋三政権は立憲主義
を踏みにじっている」と声高に叫んでいる。法の趣旨を理解していないの
か、それ とも忘却しているのか。あるいは、理解した上で無視している
のか、単なる厚顔無恥 なのか…。立憲主義の重要性を訴える前に、まずは
自らの行為を真摯に見つめ直さな い限り、民進党が国民の信頼を得るこ
とはないだろう。提稿:久保田商会)

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