2017年12月07日

◆中国全土50の都市に地下鉄を掘っているが

宮崎 正弘

平成29年(2017)12月6日(水曜日)通巻第5535号   

中国全土50の都市に地下鉄を掘っているが、工事中断が始まった
  債務の膨張をこのまま放置しては深刻な事態が惹起されるだろう

中国の債務は33兆ドル(1ドル=113円で計算して邦貨3700兆 円)。この
数字は小誌がたびたび用いてきたもので、中国政府の公式数字 ではない。

中国の公式発表は2000兆円とか、IMFはGDPの285%と言って いる
が、いずれも過小な数字で、33兆ドルというのはウォール街の専門 家の
分析である。そして、スイスの老舗銀行であるUBSも、この債務数 字
を用いだした。

さてパオトウ(包頭)は内蒙古省の西側、ここからバスで3時間ほど南
下するとオルダス市、砂漠のオアシスとして一時期は栄えた。

さらに南へタクシーで一時間近く走ると、成吉思汗(チンギスハーン)の
「御陵」と称する巨大なテント村がある。この近くに世界に悪名を轟かせ
たゴーストタウン(カンバシ新区)があり、百万都市をつくって、がら空
きのビルを林立させた。住民はいま2万8千人しかいない。

パオトウは数年前、レアアース(希土類)の供給停止で、日本企業いじ
めの先頭に立った。強気だった。パオトウはレアメタル生産のメッカである。

レアアース工業団地が造成され、さらに旧市街には高層のレアアースビ
ル(ホテルも兼ねる)を建てた。筆者も行ってみたがテナントは少なく、
殆どがらんどうだった。

結局、日本はレアアースをカザフスタンなどに輸入先を拡げ、ある いは
昭和電工などは、安定供給を確保するために、中国国内での生産に踏 み
切ったため価格が暴落した。 

いまでは日本企業に買ってくれと泣きついてくる有様、ブーメランは徒花
として彼らの元に返った。
 
レアアースは江西省でも産出するが、岩盤にそのまま強い化学薬品を注
入してレアアースを抽出するという、乱暴極まりない遣り方なので、地下
水が毒性に汚染され、住民の飲み水が飲めなくなり、土壌汚染が深刻化し
た。これも逆効果。

その同じことを、過去の教訓も生かさずに展開しようとしたのが、パオ
トウの地下鉄プロジェクトだった。

習近平は「GDP成長より安定だ」と呼号して、地方政府のGDP報告
の水増しをチェックするや、遼寧省はたちまちマイナス20%という、真
実に近い数字がでてきた。

地方政府のGDP水増しは、一貫して共産党の頭痛の種だったが、「今後
はGDP成長率で、地方政府の優劣を評価しない」と言い出したから、レ
アクションは方々で、予期せぬかたちで起きてくるのは必定、その典型が
パオトウの地下鉄工事中止という「英断」となるのである。

パオトウの地下鉄はトンネル工事を開始したまま、機材が放置され、労
働者は解雇された。トンネルの入り口は目視できると『南華早報』の現場
取材記者が書いている。

そもそもパオトウのような田舎の都市に、しかも2つのルートの地下鉄
が必要なのか。すでに道路は広く、渋滞は殆どないうえ、鉄道も繋がって
いる。120メートル道路は、ソ連の援助で建てられた。バスは40路線 もあ
り、たった2元で、旧市内と新都心を一時間半で結んでいる。

地下鉄の総工事予算は305億元(46億ドル)。パオトウ市の歳入 (270億
元)を超えており、この巨額をいかなる担保でまかない、資金 を調達す
るかも、まじめに議論されず、中央政府はいったん、この工事を 認可した。

それもこれも2008年のリーマンショック以来の中国政府の景気テコ 入れ
策によって、中国全土50の都市に地下鉄建設の槌音がなりひびき、 計画
では総延長営業キロが5770キロに及び、現在すでに開通している だけで
も3000キロある。これはアメリカ全土の地下鉄と英国を足した 距離
よりも長いのだ。

パオトウの地下鉄は全長42キロで、2020年の完成を目指した。繰 り返す
が、パオトウ市の歳入は270億元。地下鉄の総予算は305億 元。誰が考え
ても無謀だろう。そのうえ、市がかかえる債務残高は900 億元(数字はい
ずれもサウスチャイナモーニングポスト、2017年12月4日)。
 バブル崩壊、いよいよ本番を迎えた。 
          
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