2017年12月07日

◆専守防衛から先制攻撃含む積極防衛へ

                               杉浦 正章

政府、敵基地攻撃能力を保有
 

極東軍事情勢に衝撃的影響

政府が空対地長距離巡航ミサイルの導入などで敵基地攻撃能力の保有に踏み切ったことは、明らかに朝鮮半島情勢の緊迫化を背景としている。大きくいえば戦後一貫して維持してきた「専守防衛」の姿勢を維持出来なくなり、先制攻撃を含めた積極防衛の戦略しか成り立たなくなったことを意味する。「ミサイルの長射程化と戦闘機のステルス化」は現代戦における国防の基本であり、日本のような大国が保持しないままであったことが奇跡であった。

この日本の防衛戦略急旋回は、極東情勢に大きなインパクトとなる。中国からの島嶼防衛は一段と強化される。金正恩は、藪をつついて蛇を出したことになり、軍事的に日米韓の完全な包囲網に遭遇することになった。ただし政府は官房長官菅義偉が、「日米の役割分担の中で米国に依存しており、今後ともその役割分担を変更することはない。専守防衛の考え方には、いささかも変更はないことははっきり申し上げたい」と述べて慎重姿勢だ。しかし“能力の保持”が意味することは、情勢が「非常事態」になればいつでも方針転換が可能であることだ。要するに専守防衛は“建前”となる。


敵基地攻撃能力の保有については61年前の1956年に鳩山一郎内閣が「誘導弾等の攻撃を受けて、これを防御するのに他に手段がないとき、独立国として自衛権を持つ以上、座して死を待つべしというのが憲法の趣旨ではない」と合憲判断を打ち出している。憲法上の問題はクリアされており、後は政治判断だけだった。既に自民党の安全保障調査会も3月に、北朝鮮の核・ミサイルの脅威を踏まえ、敵基地攻撃能力の保有を政府に求める提言をまとめ、首相・安倍晋三に提出した。調査会の座長を務めた防衛相小野寺五典は敵基地攻撃能力が必要な理由について、かつて「何発もミサイルを発射されると、弾道ミサイル防衛(BMD)では限りがある。2発目、3発目を撃たせないための無力化の為であり自衛の範囲である」と言明している。



 北朝鮮は通常軌道に比べ高高度に打ち上げ、短い距離に着弾させる「ロフテッド軌道」で発射するケースが多い。ロフテッド軌道だと落下速度がさらに増すため、迎撃が非常に困難になる。専門家は「現在の自衛隊の装備では撃破は難しい」としている。迎撃ミサイルSM-3搭載のイージス艦は、防衛庁の公表資料によると、これまでの試験で20発の迎撃ミサイルのうち16発が命中した。しかしこの確率でいくと、単純計算では200発の日本向けのノドンが発射された場合、40発が到達することになる。政府に国民の生命財産を守る義務がある以上、専守防衛では十分な対応は不可能だ。基本戦略を積極防衛へと転換し、巡航ミサイルや新型戦闘機F35やF15に敵基地攻撃能力を保持させるという抑止力が不可欠なのだ。日本もなめられたものである。ミサイルをグアム周辺に撃てば米国の撃墜が必至とみて、金正恩は、襟裳岬東方や排他的経済水域を選んでいる。


 導入を検討している巡航ミサイルは、米国が開発した「JASSM(ジャズム)―ER」(射程900キロメートル超)とノルウェーが開発した「JSM」(同300−500キロメートル超)。JASSM−ERは、日本本土から朝鮮半島や中国、ロシア南部にも届く。ミサイルを搭載する主力戦闘機F15の改修に向けた調査費の計上を検討している。射程数百キロのJSMは空自が配備するステルス戦闘機F35への搭載を念頭に置いている。いずれも戦闘機から発射するタイプだ。


 敵基地攻撃には弾道ミサイル、巡航ミサイル、ステルス性のある戦闘機F35と空対地ミサイルが必要だ。将来的には、敵基地を特定できる人工衛星などの情報や、戦闘機の長距離飛行を支援できる空中給油機、これらのすべての作業をコントロールする早期警戒管制機(AWACS)などの装備体系が必要となる。高い金を出してF35を配備する以上、敵基地攻撃能力を備えるのは必然であった。これらの装備を備えるには防衛予算を対GDP比1%の上限を突破させる必要があるだろう。自民党や専門家の間では当面はGDP比1.2%を追求するのが得策との意見がある。米国は北大西洋条約機構(NATO)に2%目標の早期達成を促したが、これをテコにやがて日本にも要求してくる可能性がある。先手を打って1%を突破する方がよい。



立憲民主党の代表代行長妻昭は6日、政府が敵基地攻撃も可能となる長距離巡航ミサイルの導入を検討していることについて「こういう姑息(こそく)な形で防衛政策を進めては国益に反する。是非も含めて国民の前できちんと議論することが重要だ」と述べ、国会でただす考えを示した。この発言には驚がくした。長妻は北が核・ミサイル実験を繰り返し、朝鮮中央通信(KCNA)が、「日本列島は核爆弾により海に沈められなければならない。日本はもはやわが国の近くに存在する必要はない」と公式にどう喝していることに対して、防御態勢を取ってはいけないというのだろうか。「座して死を待て」といっているのに等しい。平和は天から降ってくるとした先祖の社会党ですら発言を避けるような発言である。まさに「姑息な政党の存在が国益に反する」のだ。先祖返りどころか先祖を超越している。
 

こうした中で極東の一触即発状況は一段と高まってきている。3日放送されたFOXテレビの番組で、大統領補佐官マクマスターは北朝鮮の核に対抗して日本や韓国なども核兵器を保有する可能性があると指摘し「それは中国とロシアの利益ではないはずだ」と述べ、両国に対して北朝鮮への圧力を強化するよう改めて求めた。


さらに5日には同補佐官は、ニュース専門放送局MSNBCのインタビューで、米国の北朝鮮に対する「予防戦争(preventive war)の可能性に関する質問を受けると、「北朝鮮が核兵器で米国を威嚇するのを遮断するための予防戦争のことか」と問い返した後、「もちろんだ。我々はそのためのあらゆるオプションを提供しなければいけない。そこには軍事的オプションも含まれる」と述べている。国連制裁で年末から来春にかけての北朝鮮の経済的状況や食糧事情悪化が予想される中で、米国と北朝鮮のどう喝合戦が続く。

      <今朝のニュース解説から抜粋>       (政治評論家)

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