2017年12月10日

◆台湾で再び軍艦汚職

Andy Chang

ラファイェット疑獄から25年経った台湾で再び軍艦汚職が起きた。この事
件は馬英九時代に起きた海軍の汚職事件で蔡英文政権が尻拭いをする羽目
になり、現政府と海軍の間で責任の擦り合いが起きている。

●海軍の「國船国造」計画

事件はまだ調査が始まった階段で細部は解明されていないが、簡単に説
明すると台湾の海軍が掃雷艦を自主建造する計画を立てたけれど、海軍の
調査が不十分で造船能力のない会社に発注し、この会社が資金を横流しし
たため銀行が損失を被った事件である。海軍軍人や政府要員の収賄はま
だ調査が進んでいない。

事件が発覚したあと、元海軍司令官以下18名の上級軍人、参謀長や漁業
局の主任など28名が懲戒申告や譴責処分を受けた。懲戒や譴責処分はあ
まりにも軽く、今でも起訴に至らず誰も有罪判決を受けていない。

台湾海軍は2009年にアメリカから掃雷艦を二隻購入し、2013年に就役した
が、2隻だけでは不足なので、「國船國造」を目的として「康平専案」と呼ぶ
計画で総額352億元の予算を立て、6隻の掃雷艦を建造することにし、台湾
の造船会社に入札を呼びかけた。この計画を慶冨造船が350億元(約1300
億円)で受注し、第一銀行をリーダーとする9銀行が資金提供に加わった。

報道によると銀行団は始め資金の提供を断ったが、政府要員の要請で資
金提供に同意したと言う。政府要員の詳細はまだわかっていない。

ところが受注したあと造船計画が少しも進捗せず、海軍の経費が下りない
ので融資の返還期日がきても返済できず、しかも慶冨は銀行融資を中国に
違法送金して子会社の中国におけるリゾート建設に横流ししたので銀行が
債務不履行と詐欺で訴訟を起した。

この建造計画は1隻をイタリーのIntermarineがイタリーで建造し、残り5隻は
台湾でライセンス建造する、掃雷艦の武器系統はアメリカのLockheed Martin
から購入するとし、2015年に慶冨造船と海軍が契約にサインした。ところが二
年経っても建造が進まないので、銀行側が進捗疑惑と債務不履行で会社を
訴え、慶冨造船は殆ど造船の能力もなければ資金を中国のリゾート計画に
横流ししていた疑惑が発覚した。

調べによると慶冨造船はちいさな漁船の建造会社で、資本金は5億元しか
なく、海軍の計画に参与するには資本金不足だったが、慶冨は銀行からの
借款と子会社の慶陽建設の海洋博物館の建設と経営権などを合わせて資
本金40億元の会社に化けたのだった。

しかも慶冨は100トン以上の船を作った経験もなく100トン以上の造船ドッ
クも工場もないのに、高雄の海岸地区に大型ドックと造船廠を建造する
「興達港入札」の予定があると説明し、高雄海洋局の王瑞仁主任らが慶冨
と結託していた疑惑が生じた。

つまり造船ドックも造船廠も存在しなかったのに海軍は建造を発注したの
だ。事件が発覚したあとの調査では、興達港ドックと造船廠予定地は一階
のフロアもまだ完成していないことが判明した。子会社の慶陽建設が請け
負った海洋博物館の建設もサラリーが2か月未払いで工事が停頓したまま
である。

慶冨側は第1隻の掃雷艦は既にイタリーで建造中で、来年春には進水で
きると弁明したが資金は底をついている。海軍は保証金24億元の返還を迫
っているので慶冨が期日までに保証金を返還しなければ契約を破棄する。
契約破棄となれば慶冨は破産宣告して銀行側は総額200億元の損失とな
るが、銀行団が政府の責任を問えば国民の損失になる。

●杜撰な国防計画

今回はラファイェット疑獄のように多数の死者が出なかったが、台湾政府
の国防計画がまったく杜撰であることがよくわかった。ラファイェット巡
洋艦を建造する計画を立てたのは80年代だが、当時の計画では3000トン級
のラファイェット艦を6隻のうち1隻をフランスで建造したあと5隻は台湾
で建造するはずだった。

この事件から25年経ったのに、台湾には今でも100トン以上の船を作る大
型ドックも国営造船廠もないのである。それなのに掃雷艦を自主建造する
計画を立てるとはどう考えても説明がつかない。軍艦を自主建造するなら
国営造船廠を作るべきではないか。

しかも政府は台湾でも潜水艦を作る計画を立てていると言う。空軍も自主
戦闘機、それもF-35 に匹敵するものを作る計画があると発表した。国営
の武器製造工場が存在しないのに秘密武器の製造を私立工場に委託したら
機密の保持は全く不可能である。

●海軍と政府の責任

台湾の政府は軍部のコントロールが出来ていない。海軍は「康平専案」を
立てるのに詳細を政府に通知しなかった、国会は事件が発覚するまで計画
の詳細を知らなかったと言う。実に呆れたことだ。

どこの国でも国家予算の審議は国会の権利と任務であるはずななのに、海
軍は機密保持を盾にとって掃雷艦計画を国会に知らせず、国会も追及しな
かったと言う。これは馬英九政権時代に起きたことだが蔡英文が責任を追
及される結果となった。

中華民国海軍は青幇(チンパン)の軍人グループである。しかも台湾では青
幇、洪幇(ホンパン)と竹聯幇、四海幇がみんなで「中国人マフィア」
作っている。台湾人はタッチできない。だからこそ慶冨が資金の欠乏を訴
えたら国防部は「国会に通知せず」空軍の国防予算から24億元を勝手に慶
冨に横流ししたのである。国防部は予算を別の用途に使っても問題はない
と言い張っている。

●ラファイェット疑獄は迷宮入り

この造船疑惑は25年前のラファイェット疑獄を思い起こさせる。尹清楓大
佐が殺害されてから発覚したラファイェット疑獄は25年後のいまでも迷宮
入りしたままである。

ラファイエット汚職の追及でフランスの司法調査はヴァンルイベーク検察
官(Judge Renaud van Ruimbeke)が苦労して取得したトムソンと政府の
機密資料の中から44名の台湾側の汚職高官の名簿を押収した。

台湾政府はスイス法廷(フランスの事件追及はスイス法廷で行った)に対
し、台湾側の資料の提供を要求し、スイス法廷は2008年に2箱の資料を台
湾に引き渡した。

ところが台湾政府が資料を受取ったら、台湾海軍軍部が「フランス語の資
料の翻訳を引き受ける」と称して2箱の資料を強引に持ち去ったあと行方
不明になってしまった。当時の行政院長・謝長廷はムザムザと重要資料を
青幇グループに渡したのである。

その時から馬英九政権8年と蔡英文政権で1年半を経て、今では国会や司
法部が海軍にラファイエット資料の行方を追及したことがない。国会では
誰もチンパンが取り上げたラファイェット疑獄の資料に言及していない。

この資料があれば事件の汚職高官44名がわかるのに蔡英文総統、司法部、
国会も追及しない。転型正義は掛け声だけで実績がないのだ。

これが台湾の現状である。台湾人が選挙で中華民国の政権を取っても国民
党と中国人マフィアを徹底的に抹消しなければ独立は達成できない。
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