2017年12月13日

◆中国共産党大会後に不穏な変化の兆候

櫻井よしこ

中国共産党大会後に不穏な変化の兆候 強権体質の習氏に安易な妥協は禁物」

「産経新聞」北京支局の藤本欣也記者が11月29日付紙面で、中国軍元高官
の自殺を報じた。自死したのは中国人民解放軍(PLA)上将の張陽氏
で、先に拘束された徐才厚、郭伯雄両軍人の事件に関連して取り調べを受
けていた。

張氏は軍の人事や政治・思想部門のトップを務めていた。このような重要
な地位にあった人物の自殺が大きな衝撃を与えていると、藤本記者は報じた。

右に名前を挙げた軍人らはいずれも胡錦濤前国家主席派である。習近平国
家主席の下で、胡錦濤派軍人の受難が続いている。

2014年には徐氏、15年には郭氏が、そして16年には田修思氏が、いずれも
重大な規律違反の疑いで拘束された。徐氏は起訴手続き中に既に死亡、郭
氏は収賄罪で無期懲役が確定済みだ。

田氏は胡錦濤派ではないが、習氏の軍の制度改革に反対したことで逮捕さ
れたらしい。

さて、右の4氏は全員、PLAの上将だ。PLAの最高階級は元帥で、そ
の下に大将がいる。元帥と大将は日中戦争と国共内戦に参加した軍の指導
者20人にだけ授与されたが、現在は全員が鬼籍に入っているために空席だ
と、産経新聞の元北京特派員、矢板明夫氏が解説している。

つまり、大将の下の階級である上将が、現在のPLAの最高階級なのだ。
約30人がこの階級を与えられているが、習体制の下で、軍最高位指導者の
1割以上の4人が既に失脚している。異常事態だと言ってよいだろう。

中国出身の評論家、石平氏が行った「習近平観察」が興味深い。10月の第
19回中国共産党大会で党総書記に再任されて以降、習氏はわずか10日間で
PLAの活動に4回も参加したという。

11月4日には迷彩服姿で全軍の指揮を執る演出もしてみせた。翌5日には軍
の最高組織、中央軍事委員会が全軍に「軍事委員会の主席負責制を全面貫
徹させる意見書」を出した。軍事委員会の全業務は習氏の独占的決裁権と
命令権の下で行われるという意味であり、これはPLAを中国共産党の軍
から習氏個人の軍隊へと変質させようとしているのだと、石氏は解説して
いるが、そのとおりだろう。

中国は10月の共産党大会以降、不穏な変化の兆候を見せている。原因は、
軍事、政治、経済の全分野で全権力が習氏に集中する構図ができたことだ。

共産党大会での3時間20分の演説で、習氏は党、政府、軍、民間、学校の
全分野の隅々に党の考えを徹底させなければならないとしつこく繰り返し
た。党の考えとは、習氏自身の考えだ。個人の考えと権威を全国民、全組
織、中国で活動する外資系企業、外国人を含めた全てに徹底させようとす
る姿勢は、北朝鮮の金正恩氏と全く同じである。

習氏の考えを中国の国民や中国企業を超えて、外国企業とその社員にも徹
底させるために、習政権は外資系企業も含めて全企業の内部に、共産党の
「細胞」を置くことを求めている。

細胞とは共産党特有の表現で、企業をはじめ、共産党が狙いをつけた組織
の中につくられる先鋭部隊のことだ。その設置目的は党の考え方を広め、
党の意向を経営や人事、方針に反映させることだ。西側社会では当然の自
由な企業経営や発想は、許さないという意味でもある。

21世紀とは思えないこの時代錯誤の要求に、中国内で活動する外資系企業
の既に7割が応じているとの報道がある。その一方で米国通商代表部のラ
イトハイザー代表は9月時点で中国共産党の要求する指針は「WTO(世
界貿易機関)の大地殻変動につながる」と警告した。

在中国のドイツ商工会議所も11月、中国市場からの撤退を含めた警告を発
した。日本はまだ明確に反応していないが、強権体質の習氏の中国に安易
な妥協は禁物である。『週刊ダイヤモンド』 2017年12月9日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1210 

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