2018年01月03日

◆歳は足にくる(前) 

                            石岡 荘十


学生時代から体育会系で足腰には自信があるつもりだったが、古希を過ぎる頃から歳が足にきた。

ことの始まりは、高校の友人と花見がてら玉川浄水伝いの小道を小金井公園まで数キロ歩いたときだった。暫く歩くと左足がだるく、重くなって思うように歩けない。しばらく(数分)休むと回復してまた歩けるようになるのだが、また、だるく重くなる。

こういうのを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といい、腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状だとされている。跛行とはビッコを引くということだ。

人間の脊椎骨は上から頚椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)、仙骨(1個)、それに数個の尾骨から成っている。脊椎骨の中心を走る脊柱管の中に神経の柱がある。

一つひとつの脊椎と脊椎の骨の間には椎間板というクッションの役割を果たす軟骨組織がある。そしてさらにこれらは靭帯や背筋などの筋肉で支えられている。

ところが、40代後半になってデスクワークが増えたせいか、足に痺れや傷みが来た。背筋が脊椎を支えきれなくなって5番目の腰椎がずれていると診断された。それから、少なくとも一キロ/週、泳ぐ習慣をつけて今日に至っているので、重い足を引きずってビッコを引くようになろうとは思いもしなかった。

脊柱管狭窄症、つまり神経の管が腰のところで狭まっている疑いがあるとのことで、腰のレントゲン、さらにMRIを撮ってみると、確かに、5番目の腰椎がずれている。が、神経には触っていないことが確認できた。脊柱管はどこも狭くなっているところはない。

しかし、MRIをよく見ると、3番目と4番目、4番目と5番目の間の椎間板がほかの椎間板より白く写っていて、炎症を起こしていると認められ、そのせいでごくわずか椎間板がはみ出して、脊柱管を押している。

治療法としては、腰椎を引っ張る、固定装具を使う、消炎鎮痛剤や飲み薬を使う、重症でそれでもダメなら外科手術をするということになる。みのもんたさんは手術をしたといわれるが、そこまでひどい症状は患者の一割程度だそうだ。

私の場合は軽症で、椎間板の炎症は飲み薬でなおる、ビッコの原因はほかにあるというのが整形外科医の診断だった。

では、ビッコの原因は何か。

考えられるのは、足に血液を供給する血管、動脈がどこかで狭くなっていて、栄養補給が足の筋肉の運動量に追いつかない動脈硬化ではないかと循環器内科の医師は考えた。

これを立証するのが、「血圧波検査」だ。両腕、両足に幅広のベルトを巻いて一斉に血圧を測定する検査法である。この検査をすると、動脈の詰まり具合と動脈の硬さ(柔軟性)がわかる。

結果は、左足だけが標準値に達していない、(専門的には「閉塞性病変の疑い」という)左足の血流は右足の7割しかないことが分かった。左足へ行く動脈のどこかが詰まっていた。

血流が詰まる動脈硬化は典型的な加齢疾病だ。脳の血管が詰まれば脳梗塞になるし、心臓の血管(冠動脈)が狭くなると、狭心症や心筋梗塞になる。私の場合は足にきたというわけである。

治療法は、脳梗塞や心臓梗塞と同じだ。血管の狭くなったところにカテーテルを入れ込んでフーセンで拡げるとか、バイパスを作るとか、などなど。

診療科の選択は大事だ。教訓は、大雑把に言うと、足が「痛むとき」は腰の神経になにかが触っているのだから、整形外科へ、「だるい・重いとき」は循環器内科へ、である。

多くの病気は、原因が分かり適切な治療が行なわれれば治るし、治療が適切でなければ治るものも治らない。癌の多くが治らないのは、原因が分かっていない。原因はわかっても治療法がそこまでいっていないか、誤った治療法がまかり通っているためだ、と私は思っている。

いわゆる「難病」といわれるものは、原因が明らかでなく、従って治療法もわからないものをいう。

と、考えると、足がだるくなる間欠性跛行は難病ではない。脳や心臓の梗塞と同じ加齢疾病だと考えればいい。治療法はあり、医師を選び抜けば高い確率で治る。調べてみて“悲観”は飛んだ。

ただ、このような治療法は対症療法に過ぎない。創造主に逆らって老いを押しとどめる智恵はヒトにもない。例外はない。

ガキは頭にくる、なにかというとキレるらしいが、歳は足にくる。(続く)



この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。