2018年01月28日

◆マスコミは日米間の企業の文化の違いを

前田 正晶

マスコミは日米間の企業の文化の違いを学ぶべきではないか

と言って採り上げるよりも「マスコミには誤訳が多いのが気になる」とし
た方が適切であるかも知れない。1月24日に久方ぶりに開催されて21世紀
パラダイム 研究会でもこの点を指摘した。「野外便所」で犯した誤りも
そのうちなのでこの点を ヤンワリと触れておいた。



具体例を挙げればSpecial Counselに任命されたMuellerを新聞もテレビも
「特別検察
官」で押し通しているが、これは強いて日本語にすれば「特別弁護人」辺
りにしかな
らない。counselを辞書で見ておけが「検察官」ではないことは明瞭だっ
たはずだ。
誤訳である。以前に別の人物が「特別検察官」が任命されたことがあった
が、その英
語はSpecial Prosecutorだった。それと勘違いしたのだろうし、Mueller
に与えられ
た使命がトランプ大統領の糾明だったので早とちりしたのだと思っている。



そこで jobを採り上げていこう。トランプ大統領は選挙キャンペーン中か
ら“job”
を増やすことを強調してきたし、それが最大のスローガンの一つだった。
しかし、日
本とアメリカの企業社会の間に存在する文化の違いを把握できていない模
様の我が親
愛なるマスコミは、何としたことか“job”を「雇用」と訳してしまった。
これは明
らかに誤訳であった。



「雇用」を和英辞典で見ると“employment”と出て来るのか普通だ。それではと
employもOxfordで見れば to give 〜 a job to do for paymentとある。
雇ってから
給与を払う為に仕事を与えるとなっている。Websterには the state of being
employed esp. for wage or salaryとなっている。それではとjobを
Oxfordで引け
ば、“work for which you receive regular payment”となっている。何処
にも「雇
う」とは出ていない。ここまでを良く理解しておいて貰う必要がある。



そこで、あらためて日米間の企業の人事と採用の違いを述べていこう。

これまでに何度も解説してきたことで、アメリカの企業、特に大手の製造
業などでは
我が国のように始めに新卒者を雇って教育し、その会社の在り方を理解さ
せた上で
徐々にか直ぐにでも役に立つにしてから仕事というか職というべきか、既
存の組織に
配属していく慣行というか習慣はない。勿論、銀行・証券業界のように大
量に大卒者
を雇用する文化のある業種もあると言っておかないと片手落ちだろう。

アメリカでは既に営業(稼働)中の企業で新たに人を採用する場合はといえば

(1)その組織の事業が成長し営業担当者の増員が必要になった時、

(2)海外進出を実行するに当たって専門の担当者を雇い入れる、

(3)新規の事業部門を設ける、

(4)営業所乃至は事業所か工場を新設する、

(5)リタイヤーした者の補充をする、

(6)転職者(馘首された者を含めて)が出て欠員を生じた等のような場合、

人事と採用の権限を持つ事業本部長がその職権で即戦力となるべき者を会
社の内外か
ら募集し、自らがinterview(=面接試験)して採否を決定する。募集方
法には時に
はヘッドハンティングが使われることもある。適格者が出てこなければ、
採用を見送
ることだってある。



採用は上記のような場合のことであると考えて置いて誤りではない。これ
らは全て仕
事、即ち jobであるとの認識が必要だ。要するにある仕事、職務、乃至は
その地位に
即戦力として使える新規採用者を充てるのである。何の当てもなく誰かを
雇ってから
職を与えるようなことはしない。これらの人事の権限はその事業本部長に
あり、我が
国のような人事部か人事課の仕事は彼(乃至は彼女)が持っている。ここ
まででお解
り願えたと思うが、大卒の新規採用をしない根拠がこの辺りにある。

仕事即ちjobが先にあって採用されればそこで雇用は発生するということ
だ。このjob
の難しさは、その組織の好不調、景気の変動、会社自体の業績次第で常に
改編(増
減)されるということにある。即ち、新規事業が予定したほど伸びなけれ
ば、いとも
アッサリと撤退し、そこに充当されていた人員は“Your job is
terminated as of
today.”という一片の通告で解雇されるし、それが社会通念で受け入れら
れるのが彼
らの企業社会の文化である。

換言すれば、jobは会社の経営方針または事業本部長の権限により、何時
でも創り出
されることであり、また彼の決断で排除される性質なのである。繰り返し
言うが先に
「雇用」があるのではない。今となっては1年前のことだったが、トラン
プ大統領の
大号令で自動車産業が新規の工場を設立するようだが、そこでどのような
jobが会社
側に設けられるのか、製造現場には如何なる職種の組合員が必要になるか
は「やって
みなければ解らない」ことではないか。



更に、既に指摘したが、アメリカの自動車産業はUAWの高賃金を回避する
為にも人だ
けではなく、AIの導入を真剣に検討すべき時代ではないのか。飽くまでも
アメリカの
経営者の常識で一般論だが、最初から具体的な計画もなく数百人を雇い入
れることな
どあり得ないのがアメリカのやり方だ。

では、jobとは如何なるものを言うかを、具体例を挙げて解説してみよ
う。30年ほど
前のことだったか、シアトルのNorthwest航空(現Delta)のチェックイン
カウンター
の前に、預ける荷物を検査する台が置かれ、数名のアフリカ系の女性が配
属された。
その頃はアメリカにはテロの噂があった。私がその1人に「何故、こんな
検査をす
る?」と尋ねた見た。彼女は言った“They gave me this job. But I’m
not sure
how long this job will last.”と、明らかに不安そうだった。事実、そ
の荷物検査
は旬日を出でずして廃止された。そこで女性は仕事が廃止され、雇用を
失ったのだ。
これはjobとはかくも不安定なものだという例だ。

私が度々採り上げてきたW社の技術サービスマネージャーのL氏の初期の任
務は、諸般
の事情があって多発した品質問題、回りくどいことを言わなければクレー
ム処理の担
当だった。それは、組合員の意識改革が進み、業界最高の品質を達成する
までは多忙
を極めた仕事で、年がら年中我が国を含めて世界中を飛び回っていた。と
ころが、品
質が安定し、客先のとの間の信頼関係が確立されるや、彼は一転して暇な
時が出て来
るようになった。

その時彼が、勿論冗談だが、真顔で「どうもこれは好ましくない状態だ。
ここまで品
質問題が発生しないと私の“job security”が不安になってくる」と言って
のけた。
これは確かに一理ある議論なのだ。製品の質が安定し、問題が発生しない
のであれば
彼のような「トラブル・シューター」は必要になってしまうかも知れない
のだから。
だが、勿論そんなことはなく、彼は常に得意先の現場を巡回訪問し、自社
の製品に対
する不平不満や改良等への要望を伺ってより一層の品質改良に努力すると
いう重大な
項目が“job description”には記載されているのだから。

再確認だが、アメリカでは先に人を雇うのではない、必要次第でその職
務、仕事、地
位に充てる人材を捜し求めて充当するのが彼らの企業の文化であり、習慣
であり、伝
統なのだ。マスコミの方々がこの一文を読むかどうか知らないが、間違っても
“job”を「雇用」などと言わないことだ。一つの職種に数名を必要とする
現場だっ
てあるのだ。何ならアメリカの職場を訪れて見学してみれば如何か。


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