2018年02月03日

◆中国、対日関係改善で突破口狙う

杉浦 正章


日中友好条約40周年で習近平来日か

筆者がかねてから指摘してきた極東冷戦の構図が、新年になっていよいよ
鮮明になった。米中関係は11月のトランプ訪中による蜜月関係から一転し
て険悪とも言えるムードとなった。

これを承けて米国防戦略も2008年以来の「テロとの戦い」から「中露との
長期的な競争」へと大転換した。日米同盟は好むと好まざるとにかかわら
ず、その中核に位置づけられる。

中国は対日接近で日米豪印による「インド太平洋戦略」の包囲網を突き崩
そうとしている。対中関係は改善に越したことはないが、中国の“意図”を
見据えた対応が不可欠となろう。しかし、首脳間の交流は推進すべきであ
り、習近平の来日は欠かせない重要テーマだ。

外相河野太郎の訪中は一定の成果を収めたが、中国側の出方は「日中友好
条約締結から40年の節目」が合い言葉のようであった。首相李克強を始め
国務委員楊潔チらが口をそろえて「40年の節目」を口にした。

中国政府内部のの「口裏」合わせがあった事は間違いない。中国を取り巻
く情勢を見れば、北朝鮮は言うことを聞かないし、韓国とも良好ではな
い。米国ともうまくいっていない。

東アジアでは孤立しているのが実態だ。中国は国内的には貧富の差が拡大
して国民の不満が募り、共産党が否定してきた階級社会が実現しつつあ
る。内政外交共に矛盾を抱える中での対日接近であろう。首相・安倍晋三
は背景を理解して対中外交を展開するチャンスである。

 安倍は施政方針演説で「自由で開かれたインド太平洋戦略を推し進め
る。この大きな方向の下で中国とも協力してアジアのインフラ需要に応え
る」と言明した。

中国の基本路線は「一帯一路」にのっとった世界戦略にあるが、安倍が最
初に提案したインド太平洋戦略はこれに対峙する性格が強い。従って安倍
演説は矛盾を帯びながらの現実路線と言える。

日中関係は尖閣諸島の領有権問題を抱えるだけに、この急所をあえて突か
ずに関係の改善を進めるしか方法はあるまい。昔田中角栄が周恩来との会
談で尖閣諸島の領有権問題を事実上「棚上げ」して日中関係を劇的に好転
させたのが歴史の教訓であろう。

一方米国は対中関係を180度変更させた。昨年11月のトランプ訪中では蜜
月を謳歌したものだ。トランプが「中国の人々との友情は今後強化され続
ける」と友好をうたえば、習近平は「米中関係はライバルではなくパート
ナーだ。関係発展の潜在力は無限だ」と答えた。

その後、たった2か月で急転直下舞台は暗転した。米国は昨年末には「国
家安全保障戦略」で、米国第一主義に基づく「強いアメリカ」確立を目指
す姿勢を前面に押し出した。そして中国とロシアを国際秩序の現状を力で
変更しようとする 「修正主義勢力」と位置づけた。

ついで国防相マティスが1月19日に発表した「国家防衛戦略」では「米国
と中国およびロシアとの大国間競争への回帰」を明示した。同文書では中
国を、米国の覇権に挑戦する最大の脅威とみなし、「対テロ」から、中国
とロシアとの長期的な「戦略的競争」に備える方針を打ち出した。

文書は「中国は地域的な規模で米国の主導的地位に取って代わろうとして
いる」と情勢を分析。さらに「中国、ロシアとの長期的な『戦略的競争』
が国防総省の最優先事項となる」として、同盟関係の強化を強調している。

この米国の強硬方針の背景にはマティスがアジア・太平洋地域担当の国防
次官補にランドール・シュライバーを抜擢したことも背景にあるようだ。
シュライバーは台湾との関係が深く、中国の軍拡や対外政策に否定的な立
場である。米国が、中国の東シナ海や南シナ海問題などに対して、強硬姿
勢で臨む姿勢を鮮明にした人選と言える。

これに対して中国は猛反発したことは言うまでもない。国防省のホーム
ページで「事実をねじ曲げ、中国の国防力を誇張している。米国が冷戦時
代への指向を捨てるよう希望する」と批判。

それでもたりないとばかりに国防省報道官任国は「アメリカの国防戦略は
事実を顧みず、中国脅威論を誇張し、事実に基づいていない」と口を極め
て断定した。

今後の中国の対応は、トランプ政権が中国と対峙するなら、ロシアとの関
係を一層深め、同時に「インド太平洋戦略」の国々を一つ一つ籠絡して、
無力化を図ることになろう

。ただ主要国のうち米国は対峙の中心であり、中国が懐柔することは難し
い。豪州も親中派とみられていた首相ターンブルが安倍との会談で、方針
を一転。海洋進出の中国を念頭に「太平洋やインド洋など海上の安全保障
の協力強化」で合意した。

日米豪印の枠組みでの連携も確約した。インドは中国と国境を接してお
り、歴史的にも戦略的にも相容れない傾向が強い。だから中国は、対日関
係を良好に保ち、長期的な視野で連携を崩しにかかるしかないのだ。

その最大の“呼び水”が対日首脳外交だ。その具体的戦略は、まず日中韓の
首脳会談を春に開いて李克強が訪日する。親密度を深めた上で、習近平が
訪日して関係を最良のものとする。

既に1998年の日中平和友好条約締結20周年では、江沢民が史上初めての中
国国家主席として公式に来日、30周年に当たる2008年には胡錦濤が来日し
ている。となれば40周年の今年中の来日が実現する公算が大きい。日中そ
れぞれの思惑が錯綜するが、首脳間の交流で対話を深め、関係を前進させ
るのが最良であり、何としてでも実現させるべきだ。


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