2018年02月15日

◆EU、ロシアなど80ヶ国がCRSに署名

宮崎 正弘

平成30年(2018)2月14日(水曜日)弐
         通巻第5614号 

 EU、ロシアなど80ヶ国がCRSに署名
   テロリストの資金洗浄、脱税ルートを封鎖へ

2月12日、EU委員会は、ロシアの加盟をまって「CRS」(共通報告銀
行基準)に署名した。これでCRSの加盟国は80ヶ国となった。ただし、
独自の「FATCA」を進める米国は、EU主導のCRSには加わってい
ない。(FATCAは日本では、「外国口座税務コンプライアンス」と翻
訳されている)

分かりやすく説明する必要がある。

EU域内で、「怪しげな銀行ルール」を維持してきたのはスイスの銀行の
他に、サンマリノ、アンドラ、リヒテンシュタイン、モナコがある。脱
税、匿名口座、秘密口座など、伏魔殿のように、世界から怪しい資金が流
れ込んだ。

大金持ちや新興成金ばかりか、この秘密性に目を付けた犯罪集団、アラブ
の王族、アフリカの独裁者、中国の支配階級、そしてロシアの新興財閥等
がフルに活用してきた。

9・11事件以後、米国はテロリストへの資金ルートを根絶せんとして、ス
イスに強力な圧力をかけ、とうとう秘密口座の公開に踏み切らせた。

交渉が数年にわたったため多くの秘密資金は、この間に海外のオフォショ
ア市場へ流れ出た。たとえばロシアの新興財閥の資金はキプロスから、マ
ルタへ移動させたり、中国の資金洗浄ルートはカリブ海の英領バージン諸
島が利用された。

犯罪集団や資金洗浄のプロ達は、手口を高度化させ、カリブ海のタックス
ヘブンなどに幽霊企業を設立し、あたらしい脱税の温床が生まれた。

加えて「オフショア取引」の発達と発展によって、まだまだ怪しげな市場
が世界に広がっており、サモア、バーレーン、バルバドス、グレナダ、マ
カオ、UAEなど17のオフォショア市場が、今後は「制裁」の対象とな
る可能性がある。

また「グレーゾーン」のリストにはセルビア、モンテネグロ、マケドニ
ア、アルメニア、ウルグアイ、香港、マカオ、ヨルダン、モロッコなど
47ヶ国の怪しげな銀行があがっており、言ってみればモグラ叩きのよう
なゲームが今後も持続されるだろう。

         
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 国際的なテロリズムの専門家が挑んだ「ルール変更」
  民間人を巻き込む暴力にミンシュシュギ体制は脆弱すぎないか

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B・ガノール著、佐藤優監訳
『カウンター・テロリズム・パズル  ─政策決定者への提言』(並木書房)
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 著者のガノール氏はイスラエルの国際カウンター・テロリズム政策研究
所(ICT:International Institute for Counter-Terrorism)の創設者で
ある。

現在、事務局長を務め、「テロリズム研究」の第一人者として世界的に知
られる人物であり、詳しくは、「監訳者のことば」で佐藤優氏が次のよう
に紹介している。

「私がガノール氏の名前を初めて聞いたのは、2001年3月のことだった。

イスラエルのインテリジェンス専門家から、『近未来にアメリカ本国か、
その同盟国で、国際テロ組織アルカイダが、奇想天外な方法で大規模なテ
ロを起こすことを警告している学者がいる』とガノール氏の論文のコピー
を渡されたことがある。そして、その6カ月後の2001年9月11日にアメリ
カで同時多発テロ事件が起きた。この事件で国際関係のゲームのルールが
大きく変わった」(佐藤優)
 
本書はテロリズムを学際的に分析した貴重な研究書で日本訳はもちろん初
めてである。

著者は、まず「テロリズムの定義」の必要性を論じ、もし定義が曖昧模糊
たる場合、「自分たちはテロリストではなく、民族解放を行なっている」
という言い逃れを許してしまうからである。

実際に世界の多くのテロ事件に犯人達の言い草がそうだ。

著者は、テロリズムを「自らの政治目標を達成するために、意図的に民間
人に暴力を行使する闘争」と定義している。この定義が一般的になれば、
「テロ」と「ゲリラ戦」「民族解放運動」との違いが明確になり、テロ対
策の国際協調がしやすくなる。

何しろ民主主義は人権を優先するため、テロリズムに対して脆弱である。
これを「民主主義のジレンマ」と著者は言う。

民主主義国家は、その基本的な価値観(人権の尊重、表現の自由、拷問や
懲罰の禁止など)を維持しながら、テロと戦わなければならない。
ところがテロリスト側にルールはない。やりたい放題、どんな卑劣な手口
でも、テロリストは平然と活用する。

もし民主主義の価値観をないがしろにしてテロ対策を優先すれば、その政
権は長くはもたず、結果的にテロに敗北する。これが「民主主義のジレン
マ」であると著者は言う。
 
本書では他に「対テロ立法のジレンマ」「テロ報道のジレンマ」などが詳
述されている。

建国以来、イスラエルはパレスチナ紛争を戦い、ヒズボラとのテロ対応を
強いられ、欧米よりも早い段階からテロ対策を講じ、ノウハウを蓄積して
きた。

そのイスラエルにおいても、一貫したテロ対策はないのだという。

2020年に東京五輪・パラリンピックを開催する日本にとって、テロ対策は
急務であり、テロを包括的に論じた本書の価値は高い。

東京五輪の選手、役員ならびにファン、警備を担当する全国の警察関係者
にも必携の書である。
           
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 ソ連製のAK47は世界最大のベストセラー兵器だが
  カラシニコフのライバと比較し、世界の戦場で発揮された有効性に注目

G・ロットマン著、床井雅美監訳、加藤喬訳
『AK-47ライフル  ─最強のアサルト・ライフル』(並木書房)
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AK-47ライフルとその派生型火器は、ほかのどんな小火器よりも数多く製
造されている。世界のベストセラーである。ロシア製のオリジナルに加
え、海外でコピーされたり、ライセンス生産されたりした製品を総計する
と1億挺と推定され、2位のM16ライフルの800万挺を大きく引き離してい
るという。

取り扱いが容易で故障知らず。

AK-47ライフルは使い手を選ばない。1949年に正式採用されて以来、70年
が経過した今日、なんと80カ国以上の軍隊で使われ、無数のゲリラ組織、
反政府グループ、民兵組織、テロリスト、犯罪組織等が使っている。

まさに「人民のアサルト・ライフル」と言われる所以だろう。

なぜ、これほどまでにAKライフルが戦場で使われ続けるのか? 

それはAKライフルのもつ「耐久性」に最大の理由があるという。雨、泥、
砂ぼこり、酷暑や氷点下の気候、整備不良など、戦場の過酷な状況下でも
問題なく作動し、「兵士の手荒な扱いにも耐えられる」からだ。

「複雑なものはたやすく作れるが、簡素な設計こそが難しい」というロシ
アの設計思想が色濃く反映されているからでもある。

「耐久性」を高めるために部品数の削減が図られ、作動部品の公差(こう
さ)が大きくとられている。部品形状の違いは作動不良の原因となるた
め、AK-47ライフルの場合、意図的に部品形状のバラつきの許容範囲が大
きくとられているのだ。結果、多少形状や寸法が異なる部品が組み込まれ
ても、変わらず射撃できる。

 西側諸国の軍隊は遠距離からの精密射撃で交戦する戦術を重視した。

ところが、ソ連は近距離でのフルオート射撃を優先し、AKライフルを開発
した。東西両陣営の考え方には一長一短があり、どちらか理想的な戦術と
は言えないまでも、もしワルシャワ条約機構軍と西側諸国軍とが接近戦闘
を起こしていたと仮定したら、猛烈な集中制圧射撃に西側諸国軍が見舞わ
れていただろうと類推されている。

 本書には、アメリカ側から見たAK-47ライフルの評価が明確に書かれ、
M16ライフルを使っていた当事者が、M16ライフルはAK-47ライフルにま
さる点がほとんどなかったと正直に書いている。まったくの驚きである。

AKライフルを撃った経験も、撃たれた経験もしている著者が、カラシニコ
フのライバルだったM16との比較を交えながら、全世界の戦場でAKライフ
ルが見せた有効性、第2次世界大戦後からの開発史、最新の派生型につい
て詳しく解説した。

もう一つ、本書も魅力はと言えば、監訳者の床井雅美氏が、AK-47の開発
者ミハエル・カラシニコフ氏とM16の開発者ユージン・ストーナー氏との
極秘の対談に立ち会った事実である。
  

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