2018年03月04日

◆弾圧に耐えるチベットの人々

櫻井よしこ


弾圧に耐えるチベットの人々 暴虐を隠蔽し続ける中国共産党」

中国共産党の弾圧を逃れたチベット仏教最高位のダライ・ラマ法王14世
が、インド北部のダラムサラに亡命政府を樹立したのが1959年である。今
年から来年の1年間をチベット亡命政府樹立から60年と位置づけ、ロブサ
ン・センゲ首相が国際社会にチベットの自由への闘いの意味を語る旅を続
けている。来日した首相が強調した。

「チベット問題はどの国にとっても遠い問題ではありません。日本の問題
とも重なります。チベット問題を放置すれば、日本もやがて同じ運命をた
どりかねないでしょう」

センゲ首相の来日も、発言もわが国の地上波テレビや大手新聞はあまり取
り上げない。そこで私はネット配信の「言論テレビ」にお招きした。首相
はこの60年間、中国の弾圧は厳しくなる一方だと強調した。

「中国内のチベット人は約600万人です。チベット人が3人以上で会話した
り行動したりすると、反政府活動と見做され逮捕されます。それは殆どの
場合、拷問と死を意味しますが、このようなことは全く報じられません。
外国人記者はチベット自治区に入ることさえできないからです」

私たちは世界で最も閉ざされた国は北朝鮮だと思いがちだ。だが北朝鮮に
は時折、外国人記者の入国が許される。制限つきだが映像を撮り、北朝鮮
からの中継もできないわけではない。しかしチベットからの中継や報道を
私たちは見たことがあるか。恐らく皆無だ。

首相は語る。

「チベット人への拷問、虐殺を含む暴虐の限りを中国共産党は国際社会の
目の届かない所で行い、中国の輝かしい経済的発展で世界の監視の目を曇
らせようとしています。しかし、彼らは必ずしも成功していません」

首相の説明はざっと以下のとおりだ。毛沢東らはチベット寺院の98%を破
壊し、僧や尼僧の99.9%を追放、虐殺に処した。ダライ・ラマ法王は取り
逃がしたが、チベット仏教を潰滅させたと毛らは考えた。しかし、約60年
後のいま、中国には3億人とも4億人ともいわれる仏教徒が存在し、中国は
世界最大の仏教国になった。

昨年10月の第19回中国共産党大会で習近平主席は、宗教は中国化する、社
会主義化するという条件で許容すると語った。右の2条件に宗教がどのよ
うに合わせていけるのか、よくわからないが、習氏がこのような変な理屈
をつけて宗教を容認すると言わざるを得なかったのは、億単位の中国人の
心に仏教が根付いてしまい、習氏といえども仏教徒の巨大な塊を無視する
ことができなかったからであろうか。

そこで心配なのがダライ・ラマ法王の健康である。法王は82歳になられ
た。昨年の日本訪問は医師から止められた。中国共産党は法王の寿命の尽
きるのを待っている。法王が亡くなれば、直ちに中国共産党は次のダラ
イ・ラマを自分たちが選ぼうとしている。

法王はその点を見通して語っている。ダライ・ラマの生まれ変わりは、中
国共産党の支配する地には生まれない、中国支配以外の地で生まれる、と。

チベット仏教の未来展望について、首相は楽観的だ。

「弾圧に屈せず、中国では多くの寺院が再建されました。中国政府はいま
それらの寺院と僧達の住居に重機を投入して凄まじい勢いで破壊していま
す。その映像もあります。私が強調したいのは、どんな弾圧にもチベット
民族は耐える力があるということです。ダラムサラで最も大切にしてきた
のがチベット仏教です。ダライ・ラマ法王の教えを全身全霊で吸収してき
た若い世代が大勢育っています。大丈夫です」

チベット人がチベット人らしく、ウイグル人がウイグル人らしく、モンゴ
ル人がモンゴル人らしく生きることができるような世界を目指そうと、改
めて思ったことだ。
『週刊ダイヤモンド』 2018年3月3日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1221
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。