2018年03月14日

◆トランプの米朝首脳会談受諾の決断

宮崎 正弘


平成30年(2018年)3月13日(火曜日)通巻第5633号

トランプの米朝首脳会談受諾の決断は45分で決まった
  マティス国防長官もマクマスター安全保障担当補佐官も「慎重に時間
をかけて」。

 素人ゆえに、決断は迅速だった。
 大統領執務室での韓国の代表団との会談には、マティス国防長官、ケ
リー首席補佐官もマクマスター安全保障担当補佐官も同席していた。

韓国の特使が、「ところで金正恩主席は米国大統領との直接会談も望んで
いる様子です」と遠慮気に米朝首脳会談の打診に話が及んだとき、「応じ
よう」とトランプは返答し、慌てた周囲は「慎重に。もっと時間をかける
べきだ」と大統領を説得した。

ところが、「おれは決めた。おれはもう決めたんだ」とし、外国にいた
ティラーソン国務長官にはすぐに知らされた。

一般的に外交のベテランだと、まず省内を説得し、閣内を統一し、周辺国
とりわけ同盟国に根回しをした上で決断にいたる。トランプ大統領は、こ
の外交回廊をバッサリとすっ飛ばした。

大事なことはすぐに決断するべきというディール感覚が、かれを走らせた。

さてここで米国の外交・防衛論壇で浮上してきたのは「イランの核開発凍
結」とセットという発想である。

イランは過去15年、西側の北朝鮮との交渉、その遣り方をじっと観察し分
析してきた。イランは「西側の目的は北朝鮮の核廃棄だが、その交渉プロ
セスをみる限り、誰もリスクをとろうとしない」と認識した。つまりイラ
ンは「十五年という騙しの時間が必要である」と分析した気配が濃厚である。

もちろん、北朝鮮とイランは決定的な差違がある。北はすでに20発の核兵
器を保有しており、しかもウラニウム型とプルトニウム型のふたつのタイ
プを保有している。

イランは濃縮されていないウラニウム原料の97%を廃棄している。

戦略研究家のルトワックが発言している。

「米国にとってはイランの核武装のほうが危険が高い。北朝鮮との交渉で
は核廃棄問題ばかりか化学兵器のシリアへの輸出を止めさせ、ミサイルの
中東などへの輸出を禁止し、非武装地帯における火砲の撤去など、多くの
議題がある」(NYタイムズ、3月11日)。

またジョン・ヒル(当時の北朝鮮との交渉責任者)は言う。
「現状で核ミサイル開発を凍結させ、将来の廃棄への工程を北朝鮮に迫る
ことになるのだろう」

はたして、その前にトランプ・金正恩会談はほんとに開催されるのか?
 
         
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1702回】            
――「支那人に代わって支那のために考えた・・・」――内藤(9)
  内藤湖南『支那論』(文藝春秋 2013年)

        △

革命派の理論的支柱で当時における最高の古典学者だった章炳麟が説く中
華民国は「漢代の郡県であった所を境界として論究する」から、漢に含ま
れていた朝鮮や安南も中華民国の国土に組み込まれてしまう。

そこで「中華民国というものを承認するということは、幾らかこの中華民
国が理想であった時代の主張も承認するという傾きになる」。

つまり「中華民国が今日のままで承認を求めるとすれば、この章炳麟の議
論は、単に一個の学者の理想であって、今日の中華民国とは何の関係も無
いものであるということを明らかに宣言すべきである」。そうでないなら
中華民国承認は朝鮮や安南を中華民国領と認めることになる。

にもかかわらず、中華民国の側は「この章炳麟の議論は、単に一個の学
者の理想」でしかなく国家の方針とは異なるなどとは明言していない。

ということは、常識的に考えるなら中華民国の主張する領土は章炳麟の考
えの延長線上にあるということだろう。ならば日本としては、「つまり中
華民国というものの理想と言おうか、あるいは主義と言おうか、そういう
点から見て軽々しく承認を与えるということは慎まねばならぬ」。

それというのも相手が隣国であるだけに、国家承認という問題は我が国の
将来にも大きく関係してくる。やはり承認の時期と中華民国の主張とに十
二分に注意を払う必要があるということだろう。

ここで歴史を振り返ってみると、どうやら日本では政府も民間も一面では
堪え性がないという欠陥を持つように思える。

たとえば日韓慰安婦問題にしても、理不尽にも粘りに粘り、常套的に前言
を翻す相手に対し、これが「最後の最後だ」「不可逆的だ」などと公言し
ながら手を打つのはいい。だが、相手はまたまた「ちゃぶ台返し」である。
そこで「ゴールを動かすな」と抗議するが、最初から自分の都合でゴール
を動かすことを信条とする相手に対し、「まあ、仕方がないか」と応じて
しまう。北方領土をめぐる日ソ・日ロ交渉、東シナ海の海底資源に関する
日中交渉などなど。おそらく昭和16年12月8日に収斂して行く日米交渉に
しても、日本側の事情は似通ったものではなかったか。

話を内藤に戻す。

内藤は「日本の政府の方針の善悪はここに何も論じないけれど」と断
わった後に「どうかすると一方に極端に走っておるものが、またその反対
の方面に走ることがある」と疑義を示しながら、「初め支那の政体にまで
干渉しようというような考えをもっておったものが、一旦手を焼くとなる
とどこまでの無干渉であ」ると、半ば諦め気味な論調に転じた。

その一例として内藤は「日本の貿易上の利害に非常に大関係のある」満
洲に「革命党の軍隊が上陸して戦争をおっ始めても、それさえ懐ろ手して
何もしないという非干渉政策」を挙げ、「無干渉」な日本政府の振る舞い
を難詰する。

かくして中華民国という「新共和国の承認などに対しても、むやみに非干
渉政策に傾いたまま、注意すべき種々の重大なることを全く見遁してしま
うという虞れがないのでもない」と、注意を喚起した。

共産党政権――その典型として「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平政
権はなおのこと、チベットであれ、モンゴルであれ、はたまたウイグルで
あれ17世紀末から18世紀末までの清朝盛時の最大版図を自らの本来の国土
とし、経済力と軍事力を背景に「失地回復」の動きを見せる。

こういった姿を、漢代の版図を中華民国の本来の領域と見做した章炳麟の
考えに重ね合わせると、国土に対する漢族の“信仰”は近代社会における国
土に対する世界の共通認識とは相容れないということだろう。

たまさかアブク銭を手にしたことから有頂天になり、国土に対する自らの
「土俗信仰を振り回すとは・・・恐れ入谷の鬼子母神。
だが、やはり恐れてばかりはいられない。《QED》
          
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