2018年05月25日

◆米朝会談中止の背景を探る

杉浦 正章

 
文在寅の「仲裁外交」失敗 トランプ、段階的非核化で“呼び水”

世紀の米朝会談が流れた。トランプが6月12日の会談予定を中止した。そ
の背景には韓国大統領文在寅のトランプへのミスリードがあったようだ。

経緯を見れば、まず22日の米韓首脳会談に先立つ米韓調整で急速にトラ
ンプと金正恩との会談へのムードが盛り上がった。文が“垂涎の話し”を伝
えたからに違いない。

ところが北の対米強硬路線は変化の兆しを見せず、トランプは文在寅に対
し電話で「なぜ、私に伝えた個人的な確信(assurance)と北朝
鮮の公式談話内容は相反するのか」と詰問している。従ってトランプと文
の会談は文の言い訳で、相当気まずいものとなったようだ。

これを裏付けるようにニューヨークタイムズ(NYT)は20日、「トラ
ンプ米大統領がかけた電話は文在寅韓国大統領の訪米のわずか3日前だっ
た」とし「これは文大統領がワシントンに来るまで待てないという、トラ
ンプ大統領の不満(discomfort)を表しているという解釈が米
政府で出ている」と報じた。

要するに、トランプは韓国から伝え聞いた北朝鮮の非核化交渉の意志を
信じていたが、違う状況へと展開し、韓国の「仲裁外交」が失敗したと言
うことだ。

トランプは金正恩に送った書簡で6月12日の会談断念の理由について「会
談を楽しみにしていたが残念なことに北朝鮮の最近の声明で示されている
怒りや敵意を受けて私は現時点で会談を開くことは適切でないと感じた」
と述べた。

トランプが会談を断念した理由をもう一つ挙げれば、何と言っても水面下
の交渉で米国の北に対する非核化要求の内容が極めて厳しかったことが挙
げられる。これが北を硬化させたことにあるのだろう。

また補佐官ボルトンが北の非核化でカダフィ殺害に至る「リビア方式」に
言及したが、金正恩は自分もカダフィと同様の運命をたどりかねないと感
じて拒絶反応を示したのだろう。

北朝鮮外務省第1次官の金桂冠は16日「我が国は大国に国を丸ごと任せ悲
惨な末路を迎えたリビアやイラクではない」として、「リビアモデル」と
これに言及したボルトン補佐官に強い拒否感を示している。

この発言に対してトランプは、怒りをあらわにして「このまま会談をやっ
てもいいのか」と周辺に漏らすに至った。副大統領ペンスも「トランプ大
統領を手玉に取るような行動は大きな過ちとなる。

会談で大統領が席を立つ可能生もある」と会談決裂の可能性まで示唆し
た。しかし北の“挑発”発言は止まらず、外務省で対米交渉を担当する次官
崔善姫は公然とペンスを批判「米国問題に携わる者として、ペンス副大統
領の口からそのように無知でばかげた発言が飛び出したことに驚きを禁じ
得ない」とのべた。

加えて「我が国は米国にこれまで経験も想像すらもしたことのない恐ろし
い悲劇を味わわせる可能性がある」とすごんだ。「米国は『核対核の対
決』で北朝鮮と相まみえることになる」ともまくしたてた。

この崔善姫発言は米朝首脳会談の中止を改めて確定的にしたものと言えよう。

一方、日本政府には早くから会談の実現性に疑問を持つ空気が強かった。
外相河野太郎は「条件が整わないなら米朝会談をする意味がない」と述べ
ると共に「会談をすることが目的ではなく、北朝鮮の核、ミサイル、拉致
問題の解決が究極の目的」と日本の立場を強調している。

官房副長官野上浩太郎は、「トランプ大統領が米朝首脳会談延期の可能性
に言及したことは北朝鮮の具体的行動を引き出すためのもの」と分析して
いる。

こうして6月12日の会談は実現しない方向が定まったが、トランプが完全
に断念したかというとそうでもなさそうである。トランプは「今は適切で
はない」と述べており、望みを捨てていないのだろう。

とりわけトランプの反移民政策やロシアとの不透明な関係への不満から野
党・民主党に追い風が吹いている秋の中間選挙をひかえて、北との和解は
大きなプラス材料になる。

トランプは北への圧力を維持しつつ、秋までに会談実現に向けてのアヒル
の水かきが続くのだろう。トランプが北に求める非核化について「直ちに
完了してほしいが、段階的に行う必要が少しあるかもしれない。段階的で
も迅速に行うべきだ」と述べたのは、北への呼び水の一環であろう。
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