2018年06月20日

◆トランプの「対中報復関税」

宮崎 正弘


平成30年(2018年)6月19日(火曜日)通巻第5726号 

 トランプの「対中報復関税」の究極目標は「軍事大国世界一」阻止にあり。
  報復対象品目は10分野、すべては「メイド・イン・チャイナ2025」

トランプは対中経済制裁を本格化させ、500億ドル分の損出を高関税で補
うとした。米中間の高官レベルの協議は一貫して続けられてきたが、米朝
首脳会談を挟んでいたため、一時休戦状態だった。

6月15日にトランプは報復関税の対象を具体的に発表した。課税率は25%
である。

ただちに中国は「報復には報復しないと失礼に当たる」とばかり、同じ規
模の500億ドルの制裁関税を課すとし、大豆、トウモロコシ、穀物などト
ランプの大票田である農業州に焦点を充てる。

アメリカの代表的輸出はボーイング、ついでフォードも中国への輸出が激
減するため、米財界でもトランプ批判が多い。とくに穀物商社のカーギル
などは悲鳴を挙げて、議会に働きかけている。

米国の制裁第一弾は818品目で自動車、情報通信機器、ロボットなど340億
ドル相当、一方で中国側は545品目、牛肉、豚肉、鶏肉に水産物を加え
て、帳尻あわせのように340億ドル相当とした。

第二次制裁は米側が284品目、化学、鉄鋼、鉄道車両などを対象としてい
るが、中国も第二次制裁に114品目、このなかには原油、ガス、石炭、エ
チレン、そして医療機器などが加えられ、いずれも7月6日から実施され
る。発表をうけてウォールが意外の株式は連続で下落している。
 米国の主要メディアの論調は賛否両論だ。

「日本経済は相当の悪影響を受ける」、「グローバルな自由貿易体制を破
壊する」、「トランプは保護貿易主義で時代錯誤だ」などとする「金儲
け」レベルの論評が日本のメディアを蔽っているが、見当違いも甚だしい
のではないか。

トランプ大統領率いるアメリカが究極の目標としているのは習近平の唱え
る「MADE IN CHINA 2025」の実現を阻止することであり、
つまり米国を凌ぐような世界一の軍事大国に中国をさせないという決意の
表れなのである。

ちなみに中国の「MADE IN CHINA 2025」が掲げ、かつ技術
開発国費援助、ベンチャーへの補助金を出して急成長を遂げている十分野
の次世代ハイテク技術とは何か。

 (1)5Gネットワークとサイバー・セキュリティを含む次世代情報技術
 (2)ロボット及び計測機器(ドローン、ステルスなどを含む)
 (3)航空宇宙
 (4)海洋エンジニアリング
 (5)高速鉄道技術並びに機材
 (6)省エネ技術、EV運搬車両技術
 (7)発電ならびに関連気通
 (8)農業分野
 (9)新素材
 (10)バイオ薬品、高度医療ならびに機器

いずれも軍事技術に直結する高度な産業分野であり、さらにライトハイ
ザーUSTR代表は、中国資本の倍企業買収を禁止するなど、「この次に
は投資への制裁、制限に移るだろう」と発言している。
 
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1745回】           
――「支那人は巨人の巨腕に抱き込まるゝを厭はずして・・・」――中野(1)
中野正剛『我が觀たる滿鮮』(政?社 大正4年)

  △
 中野正剛(明治19=1886年〜昭和18=1943年)について敢えて多くを語
る必要はなかろう。ただ『我が觀たる滿鮮』を世に問うた頃は、「内に民
本主義、外に(反アングロ・サクソン的)帝国主義」を抱いていたといわ
れている程度は記しておきたい。

福岡生まれで早稲田大学卒。東京朝日新聞記者として出発した後に東方
時論に拠って護憲を説く。大正9(1920)年に無所属で代議士初当選。
憲政会から民政党を経て国民同盟に転じ、2・26事件以後は党首として東
方会を率いる。日米開戦後、戦争遂行方針をめぐって東条内閣と対立し、
やがて倒閣嫌疑で逮捕される。釈放後に割腹自殺。

冒頭に掲げられた「自序」は、「足跡曾て本國の外に出でざる者は、正
當に帝國の東亞に於ける地位を解し難し。新領土に定住して内地の事情に
疎き者は、往々にして本國の實力を顧みずして、對外的妄想に馳せんと
す。余は内地に在りては、常に紛々たる政界の現状に憤りしが、更に一年
有半滿鮮の野に放浪するに及びて、著しく我對外發展の遲遲たるを憂ふる
に至れり。内政革新せられざれば、海外の地歩、何によりてか之を伸ばさ
ん。海外の地歩伸びざらんかは、帝國は東海の一孤島に屏息するの外なき
なり」と書きだされる。

『我が觀たる滿鮮』はここに記された「一年有半滿鮮の野に放浪」した折
の思いを綴ったものだ。併合以後の朝鮮情勢を論じた「總督政治論」、朝
鮮半島唯一の大会社である東洋拓殖会社を論じた「今後の東拓會社」、内
地と朝鮮の一体化を論じた「同化政策論」、「滿洲遊?雜?」、「如何に大
鉈を振ふ=滿鐵と官僚及政黨」、「大國大國民大人物=滿蒙放棄論を排
す」、「一瞥せる朝鮮の地方」で構成されている。朝鮮関連も重要だとは
思うが、ここでは残念ながら割愛し、やはり「滿洲遊?雜?」、「如何に大
鉈を振ふ=滿鐵と官僚及政黨」、「大國大國民大人物=滿蒙放棄論を排
す」を扱いたい。

だが、「同化政策論」に収められた「殖民的能力乏しき國民」と題する
一項は、当時の日本人の朝鮮・満州の人々に対する振る舞いを、中野がど
う考えていたのかを知るうえで重要だと思うので、「滿洲遊?雜?」に入る
前に一瞥しておく。

中野によれば日本人は「數千年來島帝國に割據せし國民」であり、「一
種の攘夷思想」を持っている。

それは「偏狭なる白人の有色人種に對する如き」もので、現地人を搾取・
掠奪して当たり前とする。「朝鮮に於ける實例」の1つが「内地人の鮮人
に對する言語」だ。日本人は「如何なる朝鮮人に對するも、一律に『ヨ
ボ』と呼び捨つるを常とす」。元来、それは「呼び掛けの言語にして、決
して侮辱の言に非ざ」るが、「内地人の朝鮮人に對する時は」、必ず「一
種侮蔑的強迫的意味を含」んでいる。

朝鮮人との間で意思疎通を欠き言語不通になるや、「内地人は必ず『ヨ
ボ』に次ぐに『馬鹿』『野郎』『イヌマ』等の語を以てす」。それは「白
人が劣等人に對し『ビースト』『ドツグ』等の語を連發すると異な」らない。

だが「朝鮮人と雖も、劣等なる賤民もある代りに、高尚なる篤学の士も少
なからず」。「徳行家のあれば、人に敬はるゝ舊家もあ」る。にもかかわ
らず彼ら朝鮮人を「一律に『ヨボ』『イヌマ』にて叱り飛ばすは、甚だし
き亂暴なり」。

こういった日本人の「唯本國の權威を濫用して」の理不尽な行為は断じ
て「決して同胞終局の利益となるもの」ではなく、廻り回って必ずや「彼
我の反目を招き、我も利せず、彼も利せず、遂に他の野心ある國をして、
其間隙に乘せしむるに至るなり」。

であればこそ、「今此種の誤れる威嚇手段を取りて、之を朝鮮人滿洲人を
操縦する唯一の手段なりとする」は「謬見」である。「然るに今日の所謂
對支政策家、海外發展論者にして、此謬見を抱く者は決して少なからざる
なり」。

かくて「此謬見を抱く者」を「植民的能力なき國民として、列國との角逐
に敗北すべき運命を有する者なり」と、中野は糾弾する。
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