宮崎正弘
平成30年(2018年)6月30日(土曜日)通巻第5743号
中国企業の社債、デフォルトがブーム(?)に
ドル建て債券、高金利を謳っても応じる海外投資家が不在になった
中国企業の債務不履行(デフォルト)が異様な速度で急増している。
2016年度の債務不履行(デフォルト)は通年で6850億円だった。今年は上半
期だけで4000億円を軽く超えた。たぶん年内に1兆円を超えるだろう。
とくに大手国有企業がドル建てで発行した社債が「紙くず」同然となっ
ているため、いまでは中国企業の海外起債は難儀を極め、大きな信用リス
クに直面している。
北朝鮮への制裁で直撃を受けた「丹東港集団」の債務不履行(日本円で
841億円)は原因がはっきりしているだけに、違和感はないが、景気が
よいはずの産業界でも、資金が枯渇して運転資金を銀行から借りられなく
なった。とくに集中しているのが石炭、鉄鋼、火力発電である。
その典型は中国儲能源化工集団(385億円)、東北特殊鋼(累計1200億
円)など、社債不履行の中国企業のリストを網羅し始めると数十頁にも及
ぶほどの悲惨な状態だ。
社債残高はちなみに300兆円、これはイタリアのGDP(288兆円)よりも多い。
国有企業である発電や石炭、鉄鋼という旗艦産業を習近平政権は救済する
意思がないのも、これら企業の多くが旧江沢民派や団派との関連が深いか
らだろうか。
また社債をだして数ヶ月も経過しない裡に、経営者が行方不明、失踪した
り、突如倒産したり、なかにはドル建ての社債を償還できない企業が頻出
し、海外投資家に信用不安をもたらす。このため、対中債券投資も激減し
てゆく傾向にある。とくに注目されたのが「北京東方園林環境」である。
170億円の社債発行を目指し、金利を7%としたが、集まったのは8億
55000万円、目標の20分の1でしかなかった。
つまり世界中の投資家が中国経済の末期的症状、その破産状態を掌握して
いるからである。2018年は半期だけで、すでにデフォルト額が4000億
円を超え、この雪だるま現象は急坂を転がるごとに膨らんでゆくだろう。
ドル不足にくわえ、中国は厳重な金融引き締め政策に転じており、国有銀
行は資金を市場に出さない。そればかりか中央銀行は国有銀行の預金準備
率を2ヶ月の間に1%さげて、通貨供給量を増やすとしながらも、市場に
潤いはなかった。
というのも実態は社債を株式に転換させて銀行が購入という手の込んだ遣
り方で、有力企業のパンクを防止し、債務不履行に陥る寸前の対策を講じた。
社債の格付けがAA格以下は不良債権化する怖れが強いために、銀行の担
保とならない。だから社債を株に転換させるのだ。見え透いた巧妙な延命
策である。
典型例は中国建設銀行で、たとえば武漢鋼鐵への債権240億元(4000億円)
を株式化した。同銀は山東能源集団、山西省能源集団への債権合計460億
元(7800億円)も株式に転換し、融資先の国有企業の窮状を救った。
▲つぎなるは「理財商品」というゴミの山の解決を先送り
こうした債務株式化は、4月から6月にかけての弐ヶ月間だけで推計17兆
円、このために中国人民銀行は預金準備率を同期間に合計1・5%切り下
げ、1兆円の余裕資金を銀行に持たせたのだ。
金融専門家でなくともこの手品は分かる。
したがって香港の株式市場はすばやく反応して株安に転がり、また米国や
日本でも中国との関連の深い企業株は軒並み下落した。
ついで中国は「陰の銀行」(シャドーバンキング)の規制導入を三年先の
2021年に延ばした。ゴミの山の典型が「理財商品」で、その累計残額は
500兆円をかるく超えている。
事実上の不良債権である。これを帳簿上、かくすための手口として銀行が
活用してきたのだ。
規制は理財商品の焦げ付きを回避させるために「激変緩和措置」なるも
のを導入し、同時に投資先の理財商品(投資信託のたぐい)の時価評価方式
の導入も先送りした。
これは旧規制の理財商品をまた発行して償還資金を捻出することができる
という、途方もない借金の引き延ばしであり、理財商品の投資先に対して
時価評価を適用しないという、帳簿の誤魔化しの奨励である。
身近な例をあげて考えてみると、A社はB銀行から1000万円を年利8%
で借りた。B銀行はこの債権を「理財商品」として系列のCファイナンス
に移し替える。
一年後、利息だけ返したが、元金は返せないので、金利を10%とした。
つまり80万円の利息は払い、なおかつ一年後の返済は1100万円となる。そ
してまた一年後、こんどは元本どころか、利息も払えないので、金利
12%にしてもらい支払い猶予とした。元利合計が1232万円となる。
そしてまた一年後、返済不能につき金利を14%とした。元利合計1404
万強となる。返済は絶望的である。
この1404万円をB銀行の子会社のシャート―・バンキングC社は不良債権
であるにもかかわらず時価評価で貸借対照表の「資産の部」に計上する。
まさに粉飾決算の手口である。粉飾を国家あげて招請しているというポン
チ絵だ。
いってみれば国有企業、国有銀行の救済を、搦め手で行うのである。
一方で中国税務当局は企業減税を実施した。
つまり倒産の危機に追いこまれた海航集団(HNA)などの救済が実際の
目的である。有利子負債が巨大な海航集団は資産売却などで当座を繕って
きたが、この企業は王岐山の親戚が関係する、いってみれば共産党高官の
利権企業だからだ。
2018年07月01日
◆中国企業の社債
at 08:00
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| 宮崎 正弘
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