2007年06月27日

◆戦没先輩を偲んだ・・・


渡部亮次郎

学校の創立記念事業にはいろいろある。私の県立秋田高校は前身秋田中学校の始まりが1873(明治6)年9月1日だからこの秋で創立134年を迎える。

私たちが卒業した時は80周年だったので、秋田県記念館で日本舞踊家五條珠実の舞踊披露が記念行事の1つだった。

先輩の大流行歌手東海林太郎(しょうじ たろう)が存命中だったから、彼の公演を希望したが、届かなかった。尤も地元では彼はアカ(共産主義者)と思われていたので、それでかもしれない。

話は九州に飛ぶ。その昔、福岡県立中学修猷館(しゅうゆうかん)の寄宿舎の一部を仮校舎として開校した県立福岡高等学校が、平成19年6月9日に創立90周年記念式典を挙行した。ここまではどこにでもある話。

福岡高校の男女生徒たちは昭和20年4月、海軍航空隊攻撃機の機長として散った大先輩の遺徳を詩や短歌に詠み、それをもう1人の先輩の声楽家に歌っていただき、CD4000枚と歌曲集(楽譜)3000部を
先輩や関係者に配布したのだ。

「誰よりも 愛すべき人よりも なお 国を愛して 逝きし人かな」

「願わくは 時空をこえて 語りたい 白き心は くちなしの花」

74歳の現役バリトン歌手山本健二さんが朗々としかし、しんみりと歌った。

歌われた話題の主は大東亜戦争で学徒出陣し24歳で散った故宅島徳光さん。福岡高校(当時はまだ福岡中学校)から慶応大学に進んだが、戦況の悪化に伴って断行された学徒出陣で海軍航空隊に入り、終戦直前の昭和20年4月9日、宮城県の松島基地から出撃したまま、金華山沖上空で不帰の人となった。

生前に残していた「青春の記録」は一部は既に戦没学生の手記を集めた「きけわだつみのこえ」に収録されているが、遺族は「記録」の全部を昭和36(1961)年に「くちなしの花」として自費出版した。


実はこの遺稿集を偶然の機会に読んだのが声楽家の山本さん。「この本を読んだいまの高校生の言葉を歌にして、後世に残してみては」と母校に持ちかけたのだ。

話をうけた校長(当時)藤 和義さんが遺族に「全校生徒に読ませたいので、是非」とお願いしたところ井上清方さんから1冊が寄付された。

生徒たちは一昨年から全員で回覧。伝わる思いを詩や短歌にした。その中から10編が選ばれ、山本さんの知り合いの作曲家平野淳一さんがすべてに曲をつけ、更に山本さんが黒尾友美子さんのピアノ伴奏で10曲すべてを謳いあげた。

ほかに「くちなしの花」と題する故人の手記を元NHKアナウンサーの山田誠浩さんが朗読している。

90周年記念音楽会は6月9日の夜、博多区築港本町の福岡サンパレスで開かれ山本さんがCDから選んだ2曲を歌った。

CDの冒頭の1曲「くちなしの花」作詞村上駿君は高校60回生。
くちなしの花が散った 枯葉と共に散り落ちた それでも 今日も
明日も 心の中に いつまでもその花を 咲かせていよう 寂しくとも 寂しくとも

高校60回生 末次由布子さん「光の種」
この青空の向こう側 あなたは笑っているのでしょうか 今日もあなたを想います 故郷(ふるさと)遠い空の下

・・・たとえ心が枯れようと 光の種を残しましょう あなたが咲かせてくれるなら 輝く未来(あす)にゆれるでしょう

縁あって山本さんから、今度はこのCDに紹介記事(5月29日付西日本新聞)を添えてご恵贈に与かった。

山本さんは言う。「作品を通して若き後輩たちの深き精神性を知ることが出来た。満ち足りた気持で同窓の方々と共に90周年を祝うことが出来る。

西方浄土、薄きばら色の空に眠る宅島徳光先輩、並びにわだつみの声、草生す屍となった幾万々の御魂に、合掌」。

CDについての御問合せ先は福岡県立福岡高等学校 電話:092-651-4265 HPは http://fukuoka.fku.ed.jp/

執筆2007・06・26

この記事へのコメント
突然のメール、申し訳ありません。私は山口県周南市在住の者です(徳山ユネスコ協会専任理事、76才)。12月6日に山口県ユネスコ大会があり、そのときの記念講演として横山秀夫原作「出口のない海」を朗読用(90分)に私が構成したものを山田誠浩さんに読んでもらうことになっています。ただ謝礼をいくらしたらよいか見当がつかず悩んでいます(彼は交通費と宿泊代さえいただければいくらでもよいと言ってくれていますので)。もし差し障りがなければ福岡高校のときの例を私のメールアドレス宛てに教えていただけませんでしょうか。「出口のない海」を取り上げたのは、わが周南市に「人間魚雷・回天」の基地跡と記念館があり、戦争の悲劇と平和の尊さを訴えたかったからです。どうかよろしくお願いします。
Posted by 戸倉正治 at 2009年06月10日 19:39
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