2018年07月11日

◆安倍一強にないないづくしの候補ら

杉浦 正章

石破も打つ手なしのの苦衷

宮本武蔵の決闘伝説のようで、初めから勝負が分かっている果たし合いが
行われようとしている。9月の自民党総裁選である。どこか首相・安倍晋
三に隙がないかと鵜の目鷹の目で探してみるが、はっきり言って兎の毛で
突くほどの隙もない。

だからときの声を上げる元幹事長・石破茂や総務相・野田聖子も、横綱に
ふんどし担ぎが群がるような感じであり、岸田文雄に至っては土俵に上が
るのさえちゅうちょしている。

はっきりいって五十数年政局一筋で観察してきて、これほど簡単に見通せ
る総裁選も珍しい。だから面白くないが、筆者としては正直に書くしかない。

豪雨被害優先は当然で、政局は休戦の状態だが、反安倍に凝り固まったよ
うな民放テレビ出演などでホットなのは石破だ。8日のTBS「時事放談」
では、昔の親分の渡辺美智雄の言葉を引用して、出馬の弁をまくし立てた。

石破によれば渡辺は「政治とは勇気と真心を持って真実を語ること」と述
べていたそうで、石破はこれを踏襲するのだそうだ。踏襲すれば「国民に
分かったもらえる」のだそうだ。

この発言から分かることは石破は「国 民」に照準を合わせているので
あって、国会議員は二の次なのである。石 破戦略は、今後党員票獲得に
向けて発言を強め、その“効果”を背景に、国 会議員票を動かそうとして
いるかのようである。

石破のこの戦略は12年の自民党総裁選で石破が地方票で勝って、安倍 の
心胆を寒からしめたことが経験則として根強く存在する。しかし、12年の
総裁選は安倍が首相になる前であり、今回の総裁選で同様の地方票が 出
るかというと甘くない。首相になった安倍を地方組織といえども敵に回
せばどうなるかは自明の理であり、安倍側に油断のない限り、勝てっこな
い石破に投ずる地方票は激減することは確実だ。

それでは国会議員票はどうか。まず国会議員の心理を読めば、3選確実
の現職首相をさておいて、誰がみても敗北する石破に自らの“身命”をなげ
うって投票するケースが大量に生ずるだろうか。

石破支持は、今後3年間 の“冷や飯”につながりかねないのである。議員
は陳情などで選挙区とつな がっているのであり、陳情の効果がない議員
からは票が逃げるのが実情 だ。加えて、石破派なるものの実態がどうも
弱々しいのだ。

2015年に 旗揚げしたときは、石破を含めて20人であったが、それ以来増
えていな いのである。立候補するには本人を除いて20人の推薦人が必要
だが、誰 か派閥以外から引っ張り込まないと立候補できない。その注目
の「誰か」 のなまえがなかなか出てこないのである。

 自民党幹部は「石破さんのないないづくしはきりがない」と揶揄してい
るが、そのないないづくしとは「カネがない。面倒をみない。閣僚や党役
員のポストを取ってこない」のだそうだ。

石破のただ一つの期待は筆頭副 幹事長小泉進次郎の支持だ。小泉はこの
ところ反安倍色を強めており、そ の発言も民放テレビで頻繁に取り上げ
られている。新潟知事選で党本部が 応援を依頼しても、独自路線を行く
小泉は応じなかった。石破派は、この 小泉を抱き込んで気勢を上げたい
のだ。これを察知した安倍陣営は、官房 長官・菅義偉が小泉と会談、言
動に気をつけた方がよいと忠告している。

一方、野田聖子も口だけはやる気十分だが、立候補できるかどうかも危
うい。危ういと言うよりできない公算の方が強い。とても推薦人20人が
集まるような雰囲気ではないのだ。本人は「安倍さんとの約束は大臣の職
を務め上げることだ」と言うかと思えば「独自の政策を7月の終わりか8
月には発表する」と立候補に意欲を見せたり、大きくぶれている。どうも
器ではないような気がする。

岸田は主戦論者から「いつまでハムレットをやっているのか」とじれる
声が出始めているが、まだ悩んでいるようだ。岸田はかつて「熟柿が落ち
るのを待っていられるほど世の中は甘くはない。

ただ戦う以上は勝たねば ならない」と“名言”を述べている。その“ハム
レット路線”を打ち消すため に「派閥のメンバーの意見を聞かせてもらい
つつ最後は私が判断する」と 言明しているが、このような優柔不断の背
景には、安倍からの禅譲を期待 する心理状況が垣間見える。

所属する池田勇人以来の名門派閥宏池会は、 2000年の「加藤の乱」でみ
そを付けて分裂。以来首相を輩出すること なく、今日に至っている。た
だ3年後のポスト安倍を見渡したところ、 やっと“本命”の呼び声がかか
りそうな気配となって来ている。ここは安倍 に協力して立候補せず、次
を狙うのが常道であるかのように見える。 


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