2018年07月15日

◆国会は一日も早い憲法改正の実現に

櫻井よしこ


「国会は一日も早い憲法改正の実現に向け国民の意思問う機会をつくる
のが責務だ」

7月5日付の「産経新聞」が、与党は憲法改正手続きを定めた国民投票法改
正案の、いまの国会での成立を断念する方針だと報じた。5日の衆議院憲
法審査会で趣旨説明は行うが、実質審議には入らずに、継続審議にすると
いう。

改正案の内容は、一昨年成立した改正公職選挙法をそのまま国民投票法に
反映させるもので、これによって駅や商業施設に共通投票所が設置され、
より多くの人が投票に参加し易くなる。

自公与党は、共産、社民を除く野党と、前述の共同投票所の設置に加えて
テレビCMの規制なども検討することを前提に、5月時点では大筋で合意
していた。それが6月27日、自公と日本維新の会、希望の党などと共に共
同提出した改正案につながった。

だが、いま、枝野幸男氏の立憲民主党、玉木雄一郎氏らの国民民主党など
は憲法審査会の幹事懇談会にさえ、まともに出席しない状況が続いてい
る。こうして時間がなくなり、与党はいまの国会への提出を諦めるに至った。

背景に、憲法審査会は「全会一致」の運営が原則とされているという事情
がある。立民や共産党らは、この原則を盾に、「モリ・カケ」問題などの
説明が不十分だなどとの理由をつけて、審査会の開催そのものを妨げた。

結果としていまの国会では審査会は衆院ではたった1回、参議院では3回開
かれたのみだ。そのうち衆院と、参院における2回の開催は理事の選任手
続きのためで、憲法の内容についての議論は参院での1回だけという。な
んというお粗末さか。

なぜこんなことになるのか。無論、国会議員の「やる気のなさ」が第一の
原因であろう。とりわけ維新と希望を除く野党は支離滅裂である。彼らは
「立憲主義」を唱えながら、憲法改正が必要だという政党が、憲法に定め
たルールをきちんと守って改正案を提出し、国民の判断を問おうとする
と、そのプロセス自体を阻止する。自分たちが改正をしたくないために、
国民の意思を問う機会そのものを潰してしまおうとしている。

格好の道具となっているのが前述の憲法審査会だ。「全会一致」の原則を
自分たちで作り、それを盾に審査会の開催に応じない。審査会さえ開かせ
なければ改正案の国会提出を妨げることができる。発議自体ができないわ
けで、国民に問うまでもなく、改正を阻止できるという計算であろう。

本当に古い話だが、私は美濃部亮吉氏の都政を思い出す。たった一人でも
反対者がいたら、公共工事をはじめ、何もしないという都政だった。圧倒
的多数の人々の意思であっても一人の反対者が阻止できるという極端な路
線だった。いまの野党の一部と体質的に通底するものを、私は感じている。

こんな事態に陥っているのは、「憲法審査会が動かなければ、改正原案の
国会提出さえできない」という誤解があるからではないか。

憲法改正のカギは、ひとりひとりの国会議員が握っているのである。改正
案を上程するのは、政府ではなく、国会議員の役割である。国会法68条の
2は、衆議院で100人以上、参議院で50人以上の賛成で提出できると定めて
いる。いったん改正案が国会に提出されれば、国会法102条の6によって、
憲法審査会には審査を行う責務が生じる。

憲法という国のもといを決めるのは、国民の総意である。国民ひとりひと
りが日本をどのような国にしたいのかを深く考え、決めるのが、まさに民
主主義の真髄であろう。

いま日本はかつてない危機に直面している。日本周辺の状況に対応するに
は、いまのままの日本では力不足だと感じている人は少なくない。1日も
早く、憲法改正を実現するために、国民の意思を問う機会をつくるのが、
国会の責務である。

『週刊ダイヤモンド』 2018年7月14日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 1239
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