2018年07月25日

◆石破の仕掛けは“無理筋”だ

杉浦 正章


地方党員票でも“劣勢”の可能性

オリンピックの始祖クーベルタンではないが、元自民党幹事長石破茂も
「参加することに意義がある」のか。9月7日告示、20日投開票予定の総
裁選が岸田文雄の不出馬宣言で、自民党総裁・安倍晋三と石破の一騎打ち
となる。

一騎打ちと言っても、国会議員票はもちろん地方議員票も大勢は安倍支持
であり、石破が大逆転を起こす可能性はゼロだ。石破は次につなげる狙い
だが、次は安倍の支持を得るであろう岸田が圧倒的に有利であり、石破へ
の展望は開けない。要するに石破は“無理筋”の仕掛けをしようとしている
のだろう。一方、女だてらに出馬への意欲を見せる野田聖子は、推薦人も
ままならずもともと無理。

焦点は最近3回行われた安倍・岸田会談だ。特に23日夜のすぐにばれた
“極秘会談” が岸田不出馬の決め手となったのだろう。自民党内ではこの
場で3年後の禅譲を自民党総裁・安倍晋三がほのめかしたとの噂がある
が、疑わしい。

そもそも首相が禅譲を明言した例は過去にも少ない。よく知られている例
は1946年敗戦後の占領下で鳩山一郎から吉田茂の間で政権移譲の約束
が交わされた例がある。有名なのは福田赳夫と大平正芳による いわゆる
「大福密約」だ。

禅譲約束が少ないのは首相が禅譲をいったん表明してしまったら、政治は
次に向かって動き始めてしまうからだ。まだ3年も任期があるのに、安倍
が自らの手足を縛ることはあり得ない。

ただここで岸田が「出馬せず」を選択したことは、ポスト安倍の総裁候補
としての道を開いたことは確かだ。自民党内の大勢はそう見ている。出馬
すれば、安倍に敗退して「非主流派」への転落が不可避であり、選択はそれ
しかなかったにせよ、結果としては安倍に「恩を売る」ことになるからだ。

また岸田が地方選で石破に負けて、3位になる場合もあり得るし、これも
まずい選択だ。3位では将来への弾みになりにくいからだ。岸田派内では
不出馬について侃々諤々(かんかんがくがく)の賛否両論があったが、結
果的には派閥の結束を優先しつつ安倍支持しか方途はなかった。

岸田は次の総裁選で細田、麻生、二階3派の支持を得る戦略を選択したの
だろう。

自民党総裁選挙は新規定により国会議員票405票と党員票も同じ405票で争
われる。安倍支持は第1派閥の細田派(94人)、第2派閥の麻生派(59
人)、第4派閥の岸田派(48)、第5派閥の二階派(44人)が明確にしつ
つある。これに石原派や谷垣グループも大勢が支持して300票を超える圧
倒的な多数を形成しようとしている。態度表明が遅れている竹下派も、安
倍支持の幹部が多く大勢は安倍に回るだろう。
 
これに対して石破派は2015年に旗揚げしたときは、石破を含めて20人で
あったが、それ以来増えていないのである。立候補するには本人を除いて
20人の推薦人が必要だが、誰か派閥以外から引っ張り込まないと立候補
できない。今後石破は必死の勧誘をする方針だが、推薦人の数が確保出来
ても議員票で優位に立つ可能性はゼロだ。石破としては、負けを承知で
「3年後」につなげるための総裁選と位置づけざるを得ないのだ。
 焦点は地方票の動向に絞られる。来年は統一地方選挙と参院選が行われ
る年であり、地方党員にとっても、誰を選挙の顔の総裁にするかが重要と
なる。今回も地方票がどの程度石破に向かうかが興味深いところだ。

2012年の総裁選では石破が党員票165票を獲得して、87票の安倍 の心胆を
寒からしめた。安倍が議員票で押し返して総裁に選出された。 従って石
破は、夢よもう一度とばかりにこのところ地方行脚を活発化して いる。

目の付け所は悪くはないが、地方党員が前回のように石破を支持す るか
と言えば、ことはそう簡単ではない。地方党員は選挙を意識して、物 心
両面での支援を党執行部に求める傾向があるのだ。

安倍だけでなく、党 幹部や派閥首脳の応援が必要となるのであり、これ
は政権側が強い。石破 は一人で孤立気味だ。したがって、石破が地方票
に突破口を求めても、実 情はそう簡単ではない。石破は国会議員票でも
地方党員票でも劣勢を余儀 なくされているのだ。こうして由井正雪の変
ならぬ「石破の変」は、「安 倍幕藩体制」を揺るがすほどの事態に陥る
ことはあり得ず、安倍政権は9 月の自民党総裁選で3選すれば来年2月
に吉田茂、20年8月に佐藤栄作 をそれぞれ抜いて超長期政権となる流
れだ。


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