2018年08月14日

◆首相、「改憲」軸に政局運営へ

杉浦 正章


求心力維持し、来年発議の構え

総裁3選後をにらんで、自民党総裁・安倍晋三が12日、憲法改正戦略を一
層鮮明にした。改憲案の「次の国会提出」を明言したのだ。安倍の5年半
を超えた政権では経済は長期にわたり景気を維持し、外交安保でも積極路
線で日本の存在感を高めており、大きな失政もない。

自民党内は3選で政権を継続させることに依存も少ない。9月の総裁選
は、石破茂が立候補しても安倍の圧勝となる方向は事実上確定しており、
求心力は「改憲」軸に維持されよう。

新聞や民放はただ一人の対立候補石破が安倍総裁との一騎打ちになるとは
やし立てるが、「一騎打ち」とは 敵味方ともに1騎ずつで勝負を争うこと
である。結果としてそうなったにしても彼我の力量の差は歴然としてお
り、アリが巨像に向かう事を一騎打ちとは言うまい。

なぜアリ対巨像かといえば、まず自民党内の議員勢力に雲泥の差がある。
安倍支持は自派の細田派(94人)を筆頭に、麻生派59人、岸田派48人、二
階派44人、石原派12人と圧倒している。

石破支持は同派の20人と参院竹下派の21人程度に過ぎない。前回安倍が大
敗した地方票も、安倍自身の地方行脚で基礎を固めており、支持も広がっ
ている。陳情一つとっても石破では話が通じないからだ。今回の総裁選
は、まるでプロスポーツの“消化試合”の様相だ。

長期政権はその求心力をいかに維持するかが最大の問題となる。7年半続
いた佐藤栄作政権は「沖縄返還なくして選後は終わらない」をキャッチフ
レーズに求心力を維持した。

安倍の叔父の佐藤栄作は72年5月の沖縄返還実現を見て、同年7月に退陣
している。安倍はここに来て自民党結党以来の悲願である憲法改正を推し
進める姿勢を鮮明にしている。

日の講演で「憲法改正は全ての自民党員の悲願であり、その責任を果たし
て行かなければならない。いつまでも議論だけを続けるわけにはいかな
い」と改憲発議への姿勢を明確に打ち出した。改正の焦点は「陸海空軍そ
の他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」という9
条2項だ。まぎれおなく羹(あつもの)に懲りた米占領軍の影響下にある
条項だが、独立国の常識としてまさに噴飯物の内容を構成しているといえる。
 自民党は今年の春に戦力不保持を定めた9条2項を維持した上で、「9
条の2」を新設して自衛隊を明記する案を固めた。これは安倍のかねてか
らの主張に沿ったものだ。安倍は2項を維持した上で、自衛隊の合憲を明
確にするとしている。

自衛隊を憲法に明記して古色蒼然たる違憲論争に終 止符を打とうとする
ものだ。国内の違憲論争に決着を付ける意味は大き く、世界の標準に合
致することになる。

これに対して石破は「2項を削除 して自衛隊の保持を明記し、『通常の
軍隊』と位置づける」としており、 首相と「維持と削除」で決定的な差
がある。石破の削除案には党内右派の 一定の支持はあるが、首相案の方
の支持が大勢の流れとなっている。加え て大規模災害時などに政府によ
る国民の生命・財産の保護義務を明確にす る緊急事態条項も創設される
方向だ。

自民党が総裁選での最大の焦点に改憲問題をテーマとするケースは珍し
い。これは自民、日本維新の会など改憲勢力が衆参両院で必要な3分の2
を占めていることが、現実味を帯びさせているのだろう。

安倍戦略は、9 月の総裁選を機に改憲への基盤を固め、秋以降の国会を
改憲にとって千載 一遇のチャンスと位置づけ、自民党の改憲案を提示
し、通常国会での発議 に持ち込む構えであろう。2020年の新憲法施行へ
とつなげたい 考えのようだ。

この結果、最大の政治課題は、既定路線の3選そのものにはなく、3選
後に何をやるかに焦点が移行しつつあり、改憲は佐藤が沖縄返還で最後ま
で求心力を維持したこととオーバーラップする。ただ、連立を組む公明党
は来年の参院選を控えて慎重論が強く、安倍の憲法改正発言に警戒を強め
ている。今後折に触れ、クギを刺したり、横やりを入れる動きを見せそう
だ。野党も立憲民主党や国民民主党を中心に警戒論が高まろうとしている。

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