2018年08月27日

◆残念な石破茂氏の現状

阿比留瑠偉

 自民党総裁選をめぐり、異なものを見た。21日のテレビ朝日番組で、
ジャーナリストの青木理氏が産経新聞の20日付朝刊記事「首相『石破封
じ』牽制(けんせい)球次々」について「ある種異様な記事だ」と述べる
と、出演していた石破茂元幹事長がこう同調したのである。

 「今の指摘の新聞がそうだが、メディアと権力は一定の距離を置いてい
たはずだ。代弁人ではなかった」

 まるで産経が権力の代弁人だと言わんばかりだが、いったい何の根拠が
あってどの部分がそうだというのか甚だ疑問だった。

 当該記事は、総裁選に関する当事者たちの生々しい発言を複数の記者が
取材してまとめたインサイドストーリーである。現在の自民党内の空気と
実情を、具体的なエピソードを通して描いたものが、どう「異様」だと言
うのだろうか。

確かに、石破氏にとってはあまり歓迎できない内容だったかもしれな
い。とはいえ、事実を書かれたら新聞社を「代弁人」扱いするというの
は、石破氏のこれまでの主張と矛盾する。

石破氏は総裁選に向け7月に出版した新著『政策至上主義』で、わざわ
ざ「マスコミのせいにしない」という見出しを立ててこう記しているでは
ないか。

「『マスコミが悪い』と言いたくなる気持ちは本当によくわかります
し、マスコミ自身が批判されるべき場合には、きっぱりとした抗議や申し
入れも必要だと思います。しかし、私は経験から、それだけでは理解が広
がらないとも思っています」

不都合な真実を指摘されて報道のせいにするようでは、鼎(かなえ)の
軽重が問われる。

現に、最近の石破氏の言動をめぐっては、党内にも疑問の声が多い。今
回、石破氏支持の立場を取る竹下派(平成研究会)の参院側をたばねる吉
田博美氏も、21日の記者会見で石破氏の安倍晋三首相批判をこう強く牽
制した。

「相手への個人的なことでの攻撃は非常に嫌悪感がある」

また、総裁選での投票先を明らかにしていない竹下派の中堅衆院議員も
首をかしげていた。

「石破さんの出馬記者会見をみると、正直引いてしまう。あれじゃ野党
と同じだ。同じ党なのに、あんな人格攻撃みたいなことを前面に出してど
うするのか」

石破氏は新著で「異論と『足を引っ張る』はまったく違う」と書いてい
るが、周囲に個人攻撃、人格攻撃と受け止められていることをもっと反省
すべきだろう。

もう一つ、違和感を覚えたことがある。北朝鮮情勢が激変している時期
だというのに、新著では拉致問題が論じられていない。

もう政界でも忘れてしまった人の方が多そうだが、石破氏は平成14年4
月から9月ごろまで拉致議連の会長を務めたことがある。石破氏に会長就
任を要請した故・中川昭一元財務相が当時、うれしそうに筆者にこう語っ
ていた。

「(中国や北朝鮮に宥和(ゆうわ)的なイメージがある)橋本派(現竹
下派)の石破さんが受けてくれたのは大きいよ。インパクトがある」

ところが、石破氏は第1次小泉純一郎改造内閣の防衛庁長官に抜擢(ばっ
てき)されると、拉致問題から手を引いていく。それどころ か石破氏は
この6月には、北朝鮮に宥和的で拉致被害者家族から警戒され ている日
朝国交正常化推進議員連盟(衛藤征士郎会長)の会合に姿を現し ている。

 ずっと総裁候補であり続けてきた石破氏の現状が、残念でならない。
(論説委員兼政治部編集委員)産経ニュース


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