2018年08月27日

◆石破立候補は“消化試合”か

杉浦 正章


3年後には「岸田の壁」

「我が胸の燃ゆる思ひにくらぶれば煙はうすし桜島山」ー首相・安倍晋三
の桜島を背景にした出馬表明を聞いて、筑前(現在の福岡県)の勤王志
士・平野国臣が詠んだの短歌を思い起こした。

安倍が意図したかどうかは別として、薩長同盟が明治維新という歴史の舞
台を回転させたことを意識するかのように、激動期の難関に立ち向かう政
治姿勢を鮮明にさせたのだ。日々水銀柱の高止まりに連動するかのように
安倍批判を繰り返している石破茂に対して頂門の一針を打ち込んだ形でも
ある。今後9月20日の総裁選に向けてボルテージは高まる一方となった。
 
安倍の26日の演説は、総じて「格調」を重視したかのようであった。堰を
切ったように「まさに日本は大きな歴史の転換点を迎える。今こそ日本の
あすを切り開く時だ。平成のその先の時代に向けて、新たな国造りを進め
ていく。その先頭に立つ決意だ」と3選への決意を鮮明にさせた。その背
景には自民党国会議員の大勢と、地方票の多くが安倍に向かうとの自信が
あるようだ。

既に固まっている議員票は自派の細田派(94)を筆頭に麻生派(59)、岸
田派(48)二階派(44)衆院竹下派(34)をほぼ確保。さらに73人いる無
派閥へと浸食しつつある。

今回は議員票405票、地方票405票合計810票の争奪戦だ。前回12年の総裁
選では石破に地方票で大差を付けられたことから、安倍は夏休み返上で地
方行脚を続けている。しかし地方票が前回のような石破支持に回るかと言
えば、そうではあるまい。

地方票は議員票に連動する傾向が強いからだ。前回石破に地方票が流れた
のは安倍が首相になる前であったからだ。現職の総理総裁は、油断しなけ
れば地方票の出方を大きく左右させるだろう。総裁選後足を引っ張られな
いためにも最低でも半分以上は取る必要がある。

これに対して石破は自派20と反安倍に動く元参院議員会長・青木幹雄の支
援を得て参院竹下派の大勢の支持を得つつある。しかし、議員票は不満分
子を含めてもせいぜい50票弱を獲得するする方向にとどまるものとみられ
る。石破は愛知県での講演で「自由闊達(かったつ)に議論する自民党を
取り戻さなければいけない」と首相の党運営を批判した。

この石破の置かれた立場を分析すれば将来的な展望がなかなか開けないこ
とに尽きる。なぜならポスト安倍の本命は岸田と受け止めるのが党内常識
であるからだ。岸田が今回の総裁選に立候補しなかったのは3年待てば安
倍支持グループの支持を得られるという計算がある。

従って今後安倍が3年、岸田が2期6年やった場合、10年近く石破政権は
実現しないことになる。立ちはだかる「岸田の壁」は今後ことあるごとに
石破を悩ますだろう。石破派幹部は佐藤3選阻止に立候補した三木武夫
が、田中角栄の後政権についた例を指摘するが、田中の場合はロッキード
疑惑に巻き込まれて短期政権にとどまったのであり、慎重な岸田が高転び
に転ぶ可能性は少ない。


いずれにしても、今回の総裁選は野球で優勝チームが確定してから行う
“消化試合”のような色彩が濃厚である。なぜなら例えば石破が地方票の半
分を確保しても安倍が票の過801半数を確保する流れに変化は生じないか
らだ。石破が得をしていることと言えば、軽佻浮薄な民放テレビ番組が、
まともな対立候補として取り上げ、面白おかしくはやし立てることしかない。

世論調査で石破支持が安倍を上回るケースがある理由は、民放番組にあ
る。安倍陣営は気にする必要はない。石破はなんとかしてテレビ討論を実
現したいようだが、軽々に応ずる必要はない。石破を実体以上に大きく見
せてしまう。やるなら両者が日本記者クラブと会見して、それをテレビが
中継すれば良い。

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