2018年09月08日

◆トランプ暴露本の波紋広がる

杉浦 正章


マティス国防長官「トランプは、小学5,6年生」

ワシントンポストの著名記者ボブ・ウッドワードが、短気で予測不可能な
トランプを制御しようと苦闘する米政府高官の実態を暴露した。11日に出
版される「Fear(恐怖)」は、米政府高官らの生々しいトランプ批判を報
じている。ウオーターゲート事件以来の内部告発である。内容はトランプ
の愚かさを告発しているが、一種の“舌禍事件”であり、政権にとってはイ
メージダウンになっても致命傷にはなるまい。

ウッドワードは74歳になるが、ウオーターゲート事件でカール・バーンス
タイン記者と共に内部告発者“デイープスロート”から数々のスクープを掲
載、ニクソンを退陣に追い込んだ。筆者はワシントンポスト紙が販売にな
る午前零時過ぎにワシントンの街角で購入、両記者の署名入りの特ダネ記
事を度々転電したものだ。

「Fear(恐怖)」の抜粋を報じたウオールストリートジャーナル紙な ど
によると、トランプ側近らが、いかにトランプを軽蔑しているかが分か
る。抜粋はまずトランプが、今年1月の国家安全保障会議(NSC)で、
在韓米軍の常駐に関し「あの地域にどうして軍事資源を投入する必要があ
るのだ」と疑問を提起。

これに対してマティス国防長官は「我々は第3次 世界大戦を防ぐために
やっている」と米軍のプレゼンスの重要性を説いた が、トランプの退席
後、側近に「行動も理解力も、まるで小学5年生か6 年生だ」と漏らし
たという。

この席でトランプはあきれたことに「我々は 愚かなことをしなければ、
もっと金持ちになれる」など発言して、不満気 であったという。「金持
ち」になることが政権運営の尺度であるとは恐れ 入った。

 トランプはダンフォード統合作戦本部長に対して北朝鮮への先制攻撃計
画を策定するよう指示するという、驚くべき行動もとった。 政権発足当
時から問題になったロシア疑惑に関しても、マーラー特別検察官の事情聴
取を想定して弁護士と打ち合わせたが、事実認識が全くなく、作り上げで
お茶を濁そうとして、弁護士をあきれさせた。

こうしたトランプについて、「Fear(恐怖)」は、トランプの側近や閣
僚からも不満の声が漏れ聞こえるようになっているという。大統領首席補
佐官のジョン・ケリーまでがトランプを「ばか」「錯乱している」「かれ
に何かを理解させるのは無理」と述べたという。

これについてケリーは声 明で、自身がトランプ氏をばか呼ばわりしてい
たというのは事実ではない と打ち消した。「トランプ氏との関係は強固
で率直に何でも言い合える」 とも述べ、不和説の打ち消しに懸命になっ
ている。トランプも4日のツ イッターで「Fear(恐怖)の証言は嘘ばか
りで国民をだますものだ」と憤 りをあらわにした。

 この舌禍事件はトランプ政権の裏側を余すことなく伝えていて興味深い
が、その本質はニクソン政権が倒れたウオーターゲート事件とは天地の違
いがある。ウオーターゲート事件は1972年6月17日にワシントンD.C.の民
主党本部で起きた盗聴侵入事件に始まったアメリカの一大政治スキャンダ
ルである。

盗聴、侵入、司法妨害、証拠隠滅、特別検察官解任、大統領弾 劾発議、
大統領辞任と続いたが、盗聴、侵入は犯罪であり、今回の側近の 不平不
満とは性格を異にする。久しぶりに名前が登場したウッドワード も、老
記者の健在ぶりを示したが、本人が「この本で政権は終わる」と予 言す
るほど簡単には政権は倒れまい。ただ2か月後に控えた議会の中間選 挙
には民主党が下院で過半数を取る可能性が出てきており、そうなればト
ランプの政権運営は苦しくなる。

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