2018年10月01日

◆ウィグル人への人権弾圧を見過ごすのか?

宮崎 正弘


平成30年(2018)9月29日(土曜日)通巻第5840号   

 ウィグル人への人権弾圧をこのまま見過ごすのか?
  米議会、中国制裁法案を準備中。ルビオ上院議員らが立ち上がる

中国が占領している「東トルキスタン」(新彊ウィグル自治区)における
人権無視の弾圧、再教育キャンプにおける洗脳に業を煮やす米国議会で
は、ちかく本格的な中国制裁法案を上程する動きがでている。
 
報道に拠れば、百万人のウィグル人が隔離され、砂漠の収容所に詰め込ま
れた、あげくにイスラム教徒が忌避する豚肉を与え、コーラン読書は禁
止、一日五回の「アッラー・アクバール」祈祷もさせないで、習近平思想
本を読ませるという洗脳教育を為している。
 
2018年9月26日、上院議員のマリオ・ルビオ議員等がよびかけ、中国制裁
を具体化するようポンペオ国務長官、ムニューチン財務長官に書簡を送っ
たばかりか具体的な制裁案の協議に入っていると発表された(サウスチャ
イナ・モーニングポスト、9月29日)。

同時に下院外交委員会の「アジア太平洋小委員会」は、9月26日に公聴会
を開催しており、テッド・ヨーホー下院議員(フロリダ州選出)は、「こ
れはSFフィクションではない。リアルな出来事、現在進行中のことだ」
と中国を批判した。

米国は偵察衛星によって収容所の位置や、人数を確認している。また在米
ウィグル人団体ばかりか、アメリカ人の研究者等を動員して人権弾圧の報
告書をまとめ、制裁対象の筆頭にウィグル自治区党書記の陳全国の在米資
産凍結などの措置をとることが盛られた。

中国は「露骨な内政干渉であり、中国には再教育センターはない。あるに
は職業訓練所であり、また少数の犯罪者を収容している小さな施設がある
だけだ」と反論したが、誰も信用していない。

とくにイスラム諸国へ留学した若者ら八千人が突如拘束され行方不明に
なっている事実は家族からの連絡で、米国メディアは大きく取り上げている。

なにしろ中国では国防費よりも治安対策費のほうが多額であることは周知
の事実だが、セキュリティ方面の雇用も鰻のぼりで、2012年には一万人規
模だったが、17年には53800人にも膨れあがっている。

2017年に陳全国がチベット自治区党から横滑りで新彊ウィグル自治区の書
記に赴任してから、こうした弾圧が本格化した。

一方、このセキュリティ機器、施設ならびに警官の装備で、顔認識サング
ラス、X線装置ならびに監視カメラの顔認識システムとの連動システムな
どに米国製品が使われている怖れがあり、在上海米国商工会議所は「議会
の制裁対象には在中アメリカ企業も含まれることになるのでは」と戦々
恐々だという。

すでにドイツとスウェーデンはモラトリアム(制裁執行までの猶予)を発
表している。

   
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1796回】                      
――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(21)
    徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

 ■「(16)取る乎與ふる乎」

日本の「近時の對支交渉なるものをみると」、官と民、個人と団体の別な
く「何物かを支那より取らんと欲」するばかりで、「何物かを支那に與へ
んと」はしない。これに反し「歐米人、殊に米人の如きは然らず」。

たとえば「病院を設け、學校を設け、特に多額の金を投じて、留學生を誘
ひ、之に特別の便宜を與へつゝあり」。彼らは「支那及び支那人に向て、
大いに與ふる所あり、且つ與へんとするものゝ如き感想を支那人に與へ
つゝある也」。実際に、どれほどのものを与えることになるかどうかは別
にして、「實利主義の支那人には、物質上の寄與は、必らず剴切なる印象
を與へつゝあるに相違なけむ」。

これに対し日本は与えることなく、「唯だ取らんと欲するに汲々」とす
るのみ。これでは「日支親善を高調」したところで却って逆効果だ。かく
して徳富によれば、「今や米人は、多大の捨石を、支那に措きつゝあり。
吾人は此の捨石が、物云ふ時節の到來するを、忘却す可らざる也」。

「實利主義の支那人」を相手にするには、それなりの「捨石」が必要で
あり、日本人のように「唯だ取らんと欲するに汲々」としているようで
は、いずれ強烈なしっぺ返しを喰らうことになる――これが徳富の説くとこ
ろだ。

 ■「(17)プロパガンダ」

将来的には「所謂る第三の思想、及び感情の共響、同鳴の點を日支兩國人
間に見出す」必要があろうが、目下のところ日本人には思いも及ばない。
ところが「歐米人の如きは、夙に其の必要を感じ、支那に向つて、自己の
主張を注入する」に努めている。

その最たる例がドイツだが、「所謂獨逸人の『プロパガンダ』は、其の
開戰以來、異常なる力を以て、支那を席捲しつゝあり」。ドイツ人は新
聞、雑誌、小冊子、文字、さらには絵画を使ってプロパガンダを進めている。

「英米人の如きも、それ相應に、其の方面に力を竭し」ている。「上海に
は、米人の手によりて、日本惡口を專門とする雜誌あり」。「有力なる英
人の機關新聞あり」。それら雑誌や新聞の主張は「直接に支那人に觸れざ
る迄も、先づ支那の新聞雜誌に及び、之を通じて、支那人に及ぶもの、其
の影響决して少小にあらざる也」。

支那における欧米のメディアが直接的に日本批判を目指しているかどう
かは別に、大局的には日本と日本人に対するマイナス・イメージを植え付
けようとしていることは明らかだろう。「歐米人が、此の如く努力しつゝ
あるに拘わらず、我が官民が、此の方面に於て、甚だ冷淡なる」ことに、
徳富は「驚殺せられざるを得ず」。

北京、奉天、上海、済南などにも日本人経営の新聞はあるが、「唯だ日
常の問題に就て、日本人の立場より、支那人に向て、意見を開陳する」だ
けで、欧米メディアのように積極的な宣撫・洗脳工作をしようというので
はない。

プロパガンダに関するなら、日本は官民問わず余りにも無関心に過ぎる。

 ■「(18)恩讎の念」

日本側は「日支親善とさへ云へば、何時にてもその事が出で來るものと思
ふ」。だが「支那人は此の如き、單純の人種」ではない。彼らは「文明に
中毒」し、「自繩自縛」し、「極めて實利的の本能」を持つが、じつは
「理窟に囚はれたる人種」だから、何をするにも「口實」「理由」が必要
となる。彼らが掲げる「大義名分」とは、「此の口實也、理由也」。
日本は、このような「人種に對して理由も語らず、説明も與へず、藪か
ら棒に、唯だ我が言い分を押し透さんとす」。これを、骨折り損の草臥れ
儲けというに違いない。
    
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