2018年10月10日

◆孟宏偉・インターポール総裁を拘束

宮崎 正弘


平成30年(2018年)10月9日(火曜日)通巻第5849号  

孟宏偉・インターポール総裁を拘束と中国当局が確認
  「彼は党規に違反し収賄の疑いがある」。その裏は周永康派残党の一掃

9月25日に消息を絶って、中国への入国が確認されていた孟宏偉(イン
ターポール総裁)は中国当局に拘束されていた。
10月7日に辞表を提出し、ただちに受け入れられた。インターポール
は、10月20日ドバイの國際年次総会で新総裁を決める。

 フランスに滞在中の孟夫人は「最後のメールにはナイフの写真が添えら
れ、差し迫った危険を暗示している」とした。また妻子ともに、フランス
警備当局の監視下に置かれた。これは異常事態と言って良いのではないか。

 中国共産党自らが國際スキャンダルを引き起こした。
 事情通は「かりにも国際機関のボスを務めるうえ、公安部副部長(日本
で言えば副大臣。ただし中国の副部長格は五、六人いる)という高位にあ
る人間を拘束するからには、共産党上部の承認がある」。

 明らかに権力闘争がからむ事件という見方が急速に拡がっているが、孟
は周永康派の生き残りである。
嘗て蘭州から四川省にかけての西部方面の軍を動かして、周永康は薄煕来
と組んで、クーデターを試みたと噂された。

習近平がもっとも怖れ、壊滅を狙って仕掛けてきた「虎も蠅も」とかの反
腐敗キャンペーンは依然として不満分子が要所要所をかためていたという
権力状況の逆証明ともなった。

     
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BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 地獄へ堕ちる寸前の断崖絶壁にある習近平が準備中次の手段とは
  戦争か、外資企業の財産接収か。ファン・ビンビン、馬雲の辞任が暗
示する未来は?

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石平『アメリカの本気を見誤り、中国を「地獄」へ導く習近平の狂気』
(ビジネス社)
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「地獄」とか「狂気」とか、かなり強烈な語彙が象徴する中国の末期現象
を、石平氏は元中国人だけあって、特有の国家観・歴史観・人生観のベク
トルから、自らが体験した教訓を活かしつつ、現在の中国の陥没寸前とい
う実相を分かりやすく解きほぐしていく。

日本のメディアの中国報道は表面のあぶくをなぞらえただけの軽佻浮薄な
分析が多いから、きっと読者は本書の赤裸々な分析に度肝を抜かれるだろう。

習近平は「裸の王様」であり、「暗君」と大胆に規定する著者は、中国は
やがて「無限地獄」の奈落へと陥落すると予測する。

本書の肯綮は次の指摘である。

「掃黒徐悪闘争」を展開する習近平は、そのモデルがライバルだった薄煕
来が重慶で展開した「打黒運動」にあり、マフィア撲滅運動(打黒)から
逸脱し、民間の財閥を犠牲にして、その財産を巻き上げて歳入として経済
政策に活用した。じっさいに無辜の民の財産を片っ端から押収し、一方で
革命歌を集団で唱わせる歌声運動(唱紅)を、市民を組織して展開し、一
種不気味な影響を中央に与えた。

薄の狙いは権力への捲土重来であり、習近平を追い落とし、薄自らが党書
記の座を奪う戦略に基づいていた。

具体的には2008年から「唱紅」(革命歌集会の奨励)、09年から「打黒」
(マフィア退治)、そして重慶への大々的な外資導入だった。

評者(宮崎)は、この頃、成田―成都間に全日空が直行便を就航させたこ
ともあって、何回か重慶に入っている。朝、公園にいくと太極拳、エアロ
ビックス、社交ダンス、空手のほかにバレーボールに興じる市民もいた
(気功は「法輪功」対策のため禁止されていた)。公園の中央には歌声集
団が何組も集まって、革命歌を大声で歌っていた。共産革命を賛美する勇
壮な曲だが、なぜか時代錯誤を感じてならなかった。

習はマフィア退治を標榜しつつも、党内の政敵を汚職スキャンダルとか
で、薄らを追放し、江沢民派と団派のメンバーを中心に党籍を剥奪し、権
力を固めた。腐敗幹部から押収した財産も天文学的である。

いま狙い撃ちされたのはファン・ビンビンに代弁される金持ちの脱税摘発
である。

さらに民間企業の締め付け、そのトバッチリがアリババの馬雲CEO辞任
に繋がっているのである。

アリババの持つビッグデータを共産党は提出するように強要した。馬雲は
「共産党リスク」をすばやく嗅ぎ取った。民間企業も党から財産を狙われ
ているのだ。

石平氏は、習が次に何をやらかすかを冷静に分析し、予測する。

「『黒』と『悪』と認定された国内の民間企業が身ぐるみ剥がされた後、
中国共産党政権は外資企業の手を出す」(60p)。

 ▼米中貿易戦争以後

米中貿易戦争は、トランプが仕掛けたが、もともとトランプは習近平を
「重要な友人」と持ち上げていた。北朝鮮へ政治的介入を期待してのこと
だった。ところが何もしないことでトランプは習近平を見限った。

トランプは直接、金正恩との交渉をはじめたのだ。

独裁皇帝の権力は外見からは磐石に見えるが、実態は墨汁を肖像画にかけ
た大胆不敵なる女性が出現し、退役軍人が抗議集会を連続させ、公務員は
汚職摘発に萎縮して、言われたこと以外は何もしない。だから行政は停滞
し、庶民は生活の質を下げ、即席ラーメンをすすり、若者はデートでお金
を使うことをやめ、スマホに興じる。

なにしろ5700万人もの退役軍人と3400万人の独身男性は、将来も結婚する
可能性が低下し、自暴自棄、やけくそになっている。大学を卒業してもま
ともな職場がなくなった。

2008年のリーマンショックで無茶苦茶な財政出動を繰り返し、人為的に景
気を浮揚させて不動産バブルを築き上げてきたが、その天文学的負債を誤
魔化すために、シャドーバンキング、理財商品、P2P、地方政府の債券
発行を許可し、焦げ付き債務の返済を次から次へジャンプさせ、ありとあ
らゆる手段を用いて、危機を誤魔化し、真相には蓋をして、さらに在庫処
理と失業者解消のゴミ整理が「一帯一路」だった。

負債は利息とともに膨れあがり、債務の重圧が中国経済を窒息させるだろう。

鳴り物入りのAIIBは阿漕な高利貸しの新しい財源とする詐欺の装置と
見られ、マハティール・ショック以後、世界の国々、とくにシルクロード
に関与する国家群が中国に不信感を表明し、姿勢を慎重にする。

評者(宮崎)もかねて主張してきたように、中国経済のピークは2011年頃
である。あとは演出過剰なバブルの強制的な持続だったのだ。

したがって、過去の誤魔化しがばれて、上海株が暴落し、人民元が真っ逆
さまに下落している中で、外貨払底を誤魔化すために、新しい工作を開始
する。その一方で、秘かに中国は保有している米国債券を市場で100億
ドルほど売却した。手元外貨を確保し為替に介入して、人民元暴落を防い
でいるからである。

その趨勢が鮮明となって見えてきた2013年に、評者は中国に見切りをつ
け、以降、中国には足を踏み入れていない。

それまでは1年に最低6回、多いときは10回。合計100回は中国各地をま
わり、ローカルなバスに揺られて奥地も探索し、そのときまでに開通した
新幹線もすべて乗った。

各地に工場閉鎖、ストライキ、ゴーストタウンを目撃してきたが、他方、
ベンチャーに積極的な若者のエネルギー、民間企業の活力、民衆の燃える
ようなエネルギーをみた。

そうした活力が中国から消えた。

低端階級はますまる絶望的となり、社会不安はマグマのように噴出しはじ
め、産業の空洞化が沿岸部で顕著となり、ついには社会擾乱の本格化が始
まろうとしている。

本書はそうした背景を鮮烈に抉っている。

          
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緊急集会があります

『沖縄、台湾、そのはざまの尖閣』

米中貿易戦争、たかまる朝鮮半島の危機、そして経済的に行き詰まった中
国が仕掛ける戦争。日本はどのように対応するのか?
緊急の講演会のお知らせです
http://minamishina.sakura.ne.jp/img/2018senkaku.jpg
            記

とき   10月27日(土曜)午後2時
ところ  文京シビックセンター 3A会議室
登壇   基調講演 宮崎正弘
     沖縄   仲村覚
     台湾   王明理
     尖閣   藤井厳喜
参加費  千円
お問い合わせ(03)5840−6460
     
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1800回】            
――「支那人は不可解の謎題也」・・・徳富(25)
徳富蘇峰『支那漫遊記』(民友社 大正7年)

 ■「(28)今猶ほ古の如し」

徳富は「現時の支那を見よ、春秋戰國と果して何等の差異ある乎」と問い
掛けた後、「要するに支那の(正統とされる歴代王朝の正史である)二十
四史は、同一の筋書を、各個各種の役者が、之を演じたる記録のみ」であ
り、記録内容の枝葉末節に違いはあるが、根本においては同じだ。「20世
紀の今日も、一皮剥ぎ來れば、春秋戰國時代の秦、楚の交鬪を、繰り返し
つゝあるにあらずや」。

やはり「日本人が、支那を研究せざるを遺憾」とするが、じつは「支那人
彼自身が、其の研究を閑却するを、嘆惜」しないわけにはいなかい。「彼
等現時の状態は、牛に騎りて牛を尋ぬる者」のようなものだ。

たしかに国共内戦で蒋介石に勝利した毛沢東による統一から、反右派闘
争、大躍進、文革、対外開放、さらには一帯一路の現在までを背景とする
権力闘争を振り返って見ると、たとえば毛沢東は始皇帝に類するし、反右
派闘争や文革は焚書坑儒に似ているところからして、「今猶ほ古の如し」
ではある。

■「(29)楚材晉用」

近くは太平天国の乱を鎮め清朝を救った曾國藩兄弟、末期の清朝を支えた
李鴻章、辛亥革命を指導した黄興、宋教仁、さらには毛沢東に劉少
奇・・・春秋時代以来、「其の理由の何れにあるにせよ」、古の楚に当た
る長江中下流域一帯は「政治方面に於て、人材を産したるのみならず、思
想及び文藝の上に於て、尤も其の異彩を放」つほどに人材の宝庫である。

■「(30)犬の骨折鷹の功名」

辛亥革命を起こしたのは南方の革命派だが、「北方の武斷派の爲めに」革
命の果実は奪われ中華民国の実権を握られてしまった。これこそ「犬の骨
折鷹の功名」というものだ。このままでは「到底南北統一の見込は立ざる
可し」。「此儘ならば、唯だ睨合、打合、敲合の情態にて、推移するの他
なからむ歟」。

ということは徳富は、統一政府の実現はムリという前提に立ったうえで日
本の大陸政策は立案・策定されるべき、と考えていたということになる。

■「(31)支那人の支那知らず」

「日本人が、支那を知らぬのみならず、今日の所、支那人も亦、支那を知
らぬが如し」。彼らは「支那特有の民風國俗」を「無視して、一概に他を
模倣せんとす」るから間違うのだ。「日本人の支那に對する、一大誤謬
は、日本を以て直に支那を律すること」にあり、彼らの「自ら陥る誤謬
も、亦た支那と日本とを同一視すること」にある。

「惟ふに支那を禍したるは、日本の維新改革史より大なるはなかる可
し」。なぜなら維新改革が「容易に出來したるを見て、支那の改革も亦
た、手に唾して成就す可し」と誤解してしまったからだ。だいたい日本と
は違う。根本的に違う。「(維新)當時の日本は面積に於て、支那の約三
十分一にして、人口に於ては、約十分一に過ぎず」。人口でも面積でも
「日本一國が、支那の一省と相匹する程」であることを、先ず考えておく
必要がある。

「支那に比すれば、取扱ふに手頃ろなる、日本に於てさへも、改革の業
は、今日より思ふ程に容易」ではなかったことを思い起こせば、彼らが
「一朝にして帝政を廃し、一朝にして憲法を布き、一朝にして議會を設
け、而して坐ら其の大成功を見んと欲す」などということは、「餘まりと
云へば、蟲の善き話ならずや」。

つまりは自ら苦しまずして、他国で成功したモデルを持ち込めば成功する
だろうなどという『舐め切った態度』『腐り切った根性』――徳富の指摘
は、今も生きている。

    
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