2018年10月12日

◆自壊へと誘う覇権主義の幻想

加瀬 英明


トランプ政権が発足してから、もうすぐ2年になる。

トランプ政権は異端だといわれる。このあいだに、アメリカと世界のあり
かたが、何と大きく変わったことだろうか。

日本をとれば、戦後、アメリカを日本を守ってくれる親鳥だと見做してき
たが、はじめて外国として見るようになった。

いったい国家が幻想によって、動かされるものだろうか?

アメリカは第2次大戦後、世界のためにアメリカが世界の覇権を握るべき
だという、幻想にとらわれてきた。アメリカはこの幻想から、世界に軍事
基地網を張りめぐらせ、アメリカに従う諸国の国防を肩代わりしてきた。

このもとで、グローバリズムという幻想が世界に撒き散らされたが、世界
をアメリカの経済的覇権のもとに置くという、身勝手な欲望と一体になっ
ていた。

アメリカの大企業はこの幻想に乗じて、製造部門を中国を頭とする人件費
が安い海外へ移すかたわら、安い製品を輸入して、国内の労働者の犠牲の
うえに、懐(ふところ)を富ませてきた。

トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」(アメリカの国益を第一にす
る)を唱えて、この幻想を吹き払う世直し一揆の先頭に立っているため
に、グローバリズムの利得者であってきた民主党幹部、大企業、大手マス
コミ、著名シンクタンクから袋叩きにあっている。

トランプ大統領は共和党にとっても、部外者だった。そのために、異端者
の烙印を押されている。

トランプ大統領が習近平国家主席に関税戦争という、強烈な足払いをかけ
ている。 

習主席は中国経済がアメリカ市場という脚のうえに立っているために、大
きく蹌踉(よろめ)いている。

中国は今世紀に入ってから、かつてのソ連と同じように自壊への道を、ひ
たすら驀進するようになっている。

習主席は「偉大なる5000年の中華文明の復興」という幻想に酔って、身の
程を知らずに、見せかけが壮大な「一帯一路」計画と、大海軍の建設を中
心とする軍拡を強行している。

そのかたわら、分離独立闘争を恐れて、新疆ウィグル自治区や、チベット
の西域や、中部、北部に、巨額の投資を行っている。

「一帯一路」計画はアジアからヨーロッパまで、70ヶ国近くを“幻想の中
華圏”に取り込もうとする、野心的というより杜撰(ずさん)な大計画だ
が、すでに多くのアジア諸国で、破綻するようになっている。

ソ連は1991年に瓦解した。計画経済によって病んでいたのに、シベリア沿
海州の開発に浪費するかたわら、東ヨーロッパの衛星諸国という重荷をか
かえ、第3世界に進出するために力を注いだうえに、アメリカとの大規模
な軍備競争に耐えることができなくなって、無様(ぶざま)に崩壊してし
まった。

ソ連は1950年代から60年代にかけて、日本についで経済成長率が高かった。

私はソ連が1957年に、アメリカに先駆けて、人工衛星『スプートニク』を
軌道に乗せた時に、20歳だった。その4年後に、世界最初の有人衛星飛行
を行って、アメリカの朝野を狼狽させたことを、よく覚えている。

ソ連では1970年代に入ってから、少子高齢化が進むようになり、往年の旺
盛な高度成長を支えた、豊富だった労働力が失われた。いま、中国で同じ
ことが起こっている。

クレムリンの最高指導者も、マルクス主義の予言に従って、世界を支配す
るという使命を負っているという幻想にとらわれて、世界制覇を急いだた
めに、墓穴を掘った。

日本は占領下でアメリカによって下賜された「平和憲法」があるかぎり、
アメリカが日本を子々孫々に至るまで、守ってくれるという幻想に、安全
を託している。

護憲主義者は日本国憲法とともに、滅びる道を選びたいのだろうか。


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