2018年11月16日

◆中国は前車ソ連の轍を踏むことになるのか

加瀬 英明


米中貿易戦争――あるいは関税戦争をめぐって世論がかまびすしいが、米中
関係のごく一部しか見ていない。

トランプ大統領は中国の共産体制を崩壊させることを決意して、中国と対
決してゆく方針を固めた。

習主席は面子にこだわって、関税戦争を受けて立っているが、中国経済が
アメリカ市場に依存しているために、すでに蹌踉(よろめ)いている。

いまではワシントンで、この間まで親中派だった国務省、主要シンクタン
クも、中国と対決することを支持している。アメリカの中国観の地殻変動だ。

トランプ大統領が中国という“悪の帝国”を倒す戦略の中核にあるのが、テ
クノロジーだ。同盟諸国とともに、先端技術の中国への流出を阻む、兵糧
攻めにするのだ。関税戦争や、軍拡競争は脇役になる。

かつてレーガン大統領が、“悪の帝国(イービル・エンパイア)”と極め付け
たソ連を追いつめたのも、アメリカを中心とする、自由世界のテクノロ
ジーの力によるものだった。

中国はテクノロジー後進国だ。宇宙ロケットを打ち上げられても、
ジェット機のエンジンをつくれないので、ロシアから買っている。

中国の指導部は何千年にもわたって、中華思想による知的障害を患って
きたために、弱い相手は呑み込むものの、まともな対外戦略をたてられな
い。力を持つようになると慢心して、外国を見下すために、傲慢に振る舞う。

中華思想は、中禍思想と書くべきだ。ロシアは戦略が巧妙だが、中国は
中華主義の自家中毒によって、視野が狭窄している。

中国は今世紀に入ってから、かつてのソ連と同じように、自壊への道を
進むようになっている。ソ連は1991年に崩壊した。

効率が悪い計画経済によって病んでいたのに、無人のシベリア沿海州の
開発に国力を浪費し、東ヨーロッパの衛星諸国という重荷をかかえたうえ
に、第3世界に進出するのに力を注いだために、アメリカとの競争に耐え
られなくなって、倒壊した。

クレムリンの最高指導者は、非科学的なマルクス主義の予言に従って、
ソ連が世界を支配するという使命感にとらわれて世界制覇を急いだため
に、墓穴を掘った。

習主席も「偉大なる5000年の中華文明の復興」という、自らの掛け 声に
陶酔して、見せかけだけが壮大な「一帯一路」計画と、大海軍の建設 を
強行しているが、第2次大戦後にソ連が歩んだ道程によく似ている。

中国は分離独立闘争を恐れて、新疆ウィグル自治区や、チベットをはじ
めとする西域や、中部や、北部に過大な投資を行っている。

「一帯一路」計画は、アジアからヨーロッパまで70ヶ国近くを、“幻 (ま
ぼろし)の中華圏”に取り込もうとする杜撰(ずさん)きわまる大計画だ
が、マレーシア、ミャンマー、パキスタンなど多くの諸国で、すでに挫折
するようになっている。

ソ連は1950年代から60年代にかけて、日本についで経済成長率 が高かっ
た。私はソ連が1957年にアメリカに先駆けて、人工衛星『ス プートニ
ク』を軌道に乗せた時に20歳だったが、よく覚えている。その 4年後に
世界最初の有人衛星飛行を行って、アメリカの朝野を震駭させた もの
だった。

ソ連では1970年代に入ると、少子高齢化が進むようになって、旺盛 な高
度成長を支えた、豊富な安い労働力が失われるようになった。中国で も
同じことが、起っている。

私はかねてから、中国人は昔から「吃(ツー)(食事)」「喝(フー)(飲
酒)」「嫖(ピャオ)(淫らな遊女)」「賭(トウ)(博打(ばくち))」「大
聴戯(チーティンシ)(京劇)」の5つを、生き甲斐にしていると、説いて
きた。

清朝の歴代の皇帝も、毛沢東、周恩来、江青夫人も、江沢民元主席も、
みな京劇マニアだった。

京劇は甲高い声に、耳を聾するけたたましい音曲と、大袈裟な所作に
よって、誇大妄想を煽る舞台劇だ。

習主席が好む大規模な軍事パレードや、急拵(こしら)えの航空母艦を中
心とする大海軍や、絵に描いた餅のような「一帯一路」は、京劇の舞台装
置を思わせる。清朝を崩壊させた西太后も、京劇マニアだった。

現在、中国海軍は艦艇数が317隻で、アメリカ海軍の283隻を上回 る。
西太后が日清戦争前夜に、北京西郊の頤和園の湖岸に、巨額の国費を 投
じて建造した、大理石の巨船の“21世紀版”だ。


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