2019年01月18日

◆新年に考えた日本の問題あれこれ

櫻井よしこ


「新年に考えた、日本の問題あれこれ」

元旦、各紙の社説を読み較べた。まず「読売新聞」である。兎に角、長す
ぎる。内外の事情に万遍なく触れているが、何か特別に心に残る発信があ
るわけでもないのが残念だった。

「朝日新聞」は「権力のありかを問い直す」として、事実上、朝日定番の
安倍政権批判を展開した。

小見出しのひとつが「弱い国会を強くせよ」である。これには大賛成だ。
米国議会と較べると日本の国会の余りにもお粗末な働き振りに、ウンザリ
する。米国議会では共和、民主両党が少なからぬ案件で激しく対立する。
その一方で、国益のために超党派で協力して仕上げる法案や行政府(ホワ
イトハウス)への働きかけも非常に多い。私は日本国民だが、米議会の動
きによくぞやってくれたと双手をあげて支持する法案や採決は少なくない。

たとえば共和党のマルコ・ルビオ上院議員と同党のスミス下院議員が共同
議長としてまとめた中国に関する年次報告書である。同報告書で米国議会
は、中国政府が100万人以上のウイグル人を強制収容し「アパルトヘイト
さながらの公的な人種差別政策」をとっていると非難した。

今年1月4日には上院情報特別委員会の副委員長、民主党のウォーナー上院
議員と前出の共和党ルビオ氏が、中国などによる先端技術窃取防止に向け
て、ホワイトハウスに「枢要技術安全室」を専門部局として設置するよ
う、超党派の議員団をまとめて法案を提出した。

いずれも非常に大事な案件だ。この種の働きを日本の国会はどれだけ見せ
てくれているだろうか。私たちが目にしてきたのは、あの膨大な時間を浪
費したモリカケ論争であり、また「安倍首相の下では憲法改正は論議しな
い」という理屈にならない理屈で、国会議員としての責任を放棄してし
まった姿だ。

こんな惨憺たる現実があるからこそ、朝日の「弱い国会を強くせよ」とい
う小見出しに賛成するのだが、この小見出しは「働かない国会を働く国会
にせよ」と変えるのがよいのではないか。

憲法改正案を発議せよ

朝日の社説は、終わり近くになって安倍首相非難の“朝日流予定調和”に落
ち着き、訴える。首相の解散権を何とかしたい、「権力の淵源(えんげん)
は、主権者たる国民である」と。

本当に国民を主権者だと朝日が考えているのなら、尋ねたい。なぜ、国会
による憲法改正の発議に反対するのかと。改正案の是非を決定するのは、
国民なのである。国の形の根幹について、国民が最終的に判断する。これ
こそ、究極の主権の行使であるが、戦後70年余り、国民はただの一度も主
権行使の機会を与えられていない。

社論として朝日が憲法改正に反対しているのは承知しているが、「主権者
たる国民」の「主権」をそれ程大事に思うなら、主権を発揮する機会とし
ての、憲法改正の是非を問う国民投票に賛成してほしいものだ。国会は国
民主権を実現せよ、その具体例として、憲法改正案を発議せよと叱咤して
ほしいものである。

「日経新聞」は日本の景気は戦後最長の74か月の拡大を記録する、消費税
増税は手厚すぎる程の対策を講じており、消費の腰折れリスクは小さい
と、安心材料を提示し、人手不足は生産性向上のチャンス、日本の社会的
政治的安定は突出している、と明るい要素を書き出した。

確かに日本の景気はよいのだ。加えて人の心の在り様に景気は大きく左右
される。朝日のように何でも悪い方へ、暗い方へと考えていては景気も悪
くなり、問題解決の道も狭まるだろう。それでも、1000兆円を超える国の
借金を考えると、心配にならない道理はない。大胆で有効な解決策を示し
てほしいと、日経には要望するものだ。

そんな思いで「産経新聞」に辿りついた。「平成は『敗北』の時代だっ
た」という書き出しにハッとした。論説委員長の乾正人氏が数字を列挙し
て説いている。平成元年、日本の国内総生産(GDP)は世界全体の
15%、米国は28%だった。いま、日本は6%、米国は25%だ。

同じく、かつて世界上位50社(時価総額)中、日本企業は32社を占めてい
たが、今やトヨタ1社のみだ。30年前の実績はもはや信じ難い。産経は、
増えたのは国債という名の借金だけだと、厳しく現実を指摘する。

「平成時代の敗北」の原因を、産経は3点、挙げた。➀戦後の経済復興によ
る慢心、➁政治の不安定と混迷、➂中国への支援、である。

とりわけ➂が取り返しのつかない失敗だったと説く。日本の大規模援助で
中国は、今や日本に脅威をもたらす軍事力及び経済力の基盤を築いた。日
本の甘い対中政策で中国は、天安門事件当時の世界の制裁網を解いて再び
世界に受け入れられた。

国内状況の異常さ

そのとおりだ。では、日本はこれからどうすればよいのか。産経は「日米
安保さえあれば大丈夫だ、という思考停止」から脱せよと説いた。異論は
ないが、思考停止から脱するためには現実に目覚めることが必要だ。日本
の現実がどれだけ酷いかを、国民が知らなければならない。

たとえば皇室を取り巻く状況である。あと10年もしない内に、多くの女性
皇族が結婚で皇籍を離れられ、皇族はいずれ皇后陛下の他、皇嗣殿下とな
られた秋篠宮御夫妻と悠仁さまだけになる可能性がある。2700年近い皇統
を、悠仁さまがお一人でつないでいけるのか。万人が心配していることだ
が、まだ手立ては講じられていない。
 
国民が賢ければその国、その民族の未来は安心できるが、日本の教育は
賢い日本人を育てているか。最高学府である大学は今や半分近くが定員割
れで、中国人をはじめ、質を問わず留学生を掻き集めるだけだ。こんな教
育で賢い国民が育つのか。

国家は国土があって初めて成り立つが、その国土が売られ続けている。し
かも、反日教育で育った中国人がその多くを買い続けている。すでに10年
も前から国土売却は問題視されてきた。なぜ、国会は外国資本による土地
購入を制限出来ないのか。

経済の基盤のひとつが安定したエネルギーの供給だ。産油大国のサウジア
ラビアさえ、原子力発電の導入に熱心だ。中国は100万キロワット級の原
発200基の建造計画に加えて、この2年間で20万キロワット級の原発143基
を建てる。

脱CO2の視点から、中国だけでなく、国際社会の大勢が原発に向かって
いるとき、なぜ、日本だけが原発から遠ざかり火力発電に傾くのか。

取り上げたいことはまだ多い。世界の多くの現実と較べて国内状況の異常
さを日本人が理解するとき初めて、この国に変化が生まれるだろう。日本
の抱える問題の多さに立ちすくみそうになる時もあるが、それだけ働く材
料があるのだと前向きに考えて、今年も問題提起していこう。

『週刊新潮』 2019年1月17日号日本ルネッサンス 第835回
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