2019年04月19日

◆郭台銘が台湾総統選挙へ

宮崎 正弘


平成31年(2019)4月18日(木曜日)通巻第6046号  

「中国の代理人」=郭台銘が台湾総統選挙へ立候補を熟慮
  北京の指令を受けたのか、個人的野心を果たそうとしているのか

シャープを買収したことで日本でも突如有名になったが、郭台銘は外省人
2世で親は山西省から移住した。アップルなどにスマホ部品を納入する鴻
海精密工業(フォックスコンン)は最盛期、中国全土に130万人もの従業
員を抱えた。

こうなると、台湾企業というより、鴻海精密工業はいまや中国の大企業で
あり、胡錦涛時代から「中華思想」を鼓吹し、習近平とも2回個別に会見
している。台湾民衆はかれを阿漕な経営者とみている。

台湾の国会を占拠した民主化運動では「民主主義など糞の役にも立たな
い」と言い放ち、民主活動家からは蛇蝎のように嫌われている。

映画にもなったが深センの鴻海精密の工場では過酷な労働条件に自殺が相
次ぎ、工場には飛び降り防止の金網が張られた。悪名が中国でも轟いた
が、まったく怯まず、従業員を酷使した。

もともと彼はプラスチック成形の小さな町工場から起業し、王永慶を深く
尊敬して猛烈に働いた。フォーブスの富豪ランキングでは2018年に世界
78位となった。

スマホ不況に陥ると、主力の河南省鄭州工場で5万人を平然と馘首し、同
時にロボット化を進めて、近く50万人のレイオフを準備している。各地の
工場では深刻な労働争議が続いている。中国での評判も共産党高層部は別
として庶民の間に評判は芳しくないようである。

トランプ大統領と会ってウィスコンシン州に巨大投資をなして液晶パネル
工場を建設すると約束したが、先行きが暗いとなるや計画の大規模な縮
小、研究センターに留めるなどとした。

トランプ大統領が直接郭台銘に電話をかけて見直しを要請した。郭台銘は
記者会見をやり直すなどジグザグぶりを示した。

この舞台裏では孫正義、アリババの馬雲が密接に繋がっていた。

台湾への愛国心は稀薄で、メンタリティは中国大陸的だ。

大胆不適な決断力と電光石火の行動力、そして巨額の借金を気にしない直
進型、いや暴走型経営で知られる。


 ▲民主主義を敵視する中華思想の持ち主

かくして、この暴れん坊が台湾総統選挙に国民党から立候補を準備してい
ると言うのだから、ちょっとした国際ニュースになる。国民党は着々と巻
き返し作戦を展開しており、昨地方選挙では、民進党の牙城といわれた高
雄市長選挙で、番狂わせ、韓国諭を当選させる。

国民党は朱立綸が本命と見られてきたが、韓国諭のほうが世論の人気が高
く、また無所属で何哲文が立候補するとなると乱戦になる。

他方、与党・民進党は、レイムダックに陥った蔡英文では次の総統選挙に
勝てそうになく、ライジングスターの頼清徳(前首相、元台南市長)が首
相を辞任して立候補を表明し、党内が星雲のような分裂状態にある。もと
より同党は四つの派閥からなる合従連衡の政党であり、民主派、リベラ
ル、独立派の寄り合い世帯であるから一本化することはこれまでにもな
かった。国民党のあまりの中国傾斜に危機感を募らせると、団結する強み
はあるものの、党内対立も亦根深いものがある。

この状況下、郭台銘は地震のような政治行動に打って出たのだが、台湾で
の反応はひややかである。

「実業家が政治家となるには公私混同してはならない。鴻海実業の経営か
ら郭台銘は完全に手を切らない限り選挙民は立候補に不純なものを嗅ぎ取
るだろう。ブッシュは経営する企業から離れ、財団として公私の区別を鮮
明にした。トランプはトランプタワーの経営を弟たちに一任し、しかも大
統領の報酬を寄付している。公私の峻別が出来るのか」という批判が『自
由時報』などに掲載されている。
     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

宗教は霊的存在である神を中心にした虚構であり、
それを共有できれば信者。かくして宗教が成立し、やがて混じり合い、そ
して。。。。

   ♪
小林登志子『古代オリエントの神々』(中公新書)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

人間は神々を必要とした。人間が神を発明した。

だから本書の著者もずばり言う。

「宗教は霊的存在である神を中心にした虚構であって、虚構を共有できれ
ば信者である。(中略)神が人間を創造したのではなく、人間が神々を創
造した。神々の創造は人間精神の歴史での、最高の発明であった。明日の
ことなぞわからない人生を歩んでいく人間の羅針盤であり、杖ともなっ
て、そして精神を安定させる仕組みが、神であった。古代人は神々を必要
としていた」。

ユダヤ、キリスト、イスラムという三大宗教が成立する以前。オリエント
には無数の神々がいた。ユダヤ教の成立基盤にはそれ以前のミトス教があ
り、ペルシアのイスラム教はゾロアスターとの習合がある。インドにはヒ
ンズーがあって仏教が改革を叫び、インドから東へ拡がった。
 多神教のオリエントからアジアにかけての世界にいつしか一神教が成立
した。

日本でも神道という自然崇拝に仏教が習合した。その習合前に、日本にお
いても衝突があり、廃仏毀釈があった。聖徳太子が仏教を国教化する前の
時代、およそ百年間、廃仏毀釈が行われた。明治維新前後の廃仏毀釈は、
むしろ政治イデオロギーとしての国学の復興が外来宗教に敵対した社会現
象であり、仏教はその後も滅びず、神仏習合は維持されている。

文明の嚆矢は、多くの学説があるが、シュメール、メソポタミア、エジプ
トあたりに集中した。幾多の宗教が、西オリエントでは、イスラムという
一神教に統一されていったのは何故か、本書はこの謎に挑む。
 著者はこういう。

「多神教と一神教は截然と分けられるのではなく、分かちがたい関係にある」

無神論の多い日本人は、宗教論に興味を示すひとが少ないが、欧米の研究
者の問題点とは、ユダヤ、キリスト教の信者が多いため、「古代オリエン
トの神々への視点は客観的とは言い難い」特質を附帯している。その?を
小林氏は衝いた。

ユダヤ教以前の神、太陽信仰のミトラ教はイラン、印度あたりで発祥し、
民族の移動とともに西へ移った。ミトラはギリシアへ、ローマへと伝播した。

ミトラが拡がった地にはゾロアスター教があった。両者は対立し、年月を
経て、それぞれの神が変形し、ゾロアスターの神もキリスト教に取り入れ
られ、あるいはイスラム教に取り込まれ変形した。

しかしゾロアスター(拝火教)の神殿はアゼルバイジャン、イラン各地に
残り、いまもゾロアスターの信者はイランとインドにもいる。

たとえば、「ミスラ神がギリシア語化したミトラス神は、ヘレニズム時代
のアナトリア諸王国の守護神であった」(82p)

ミトラスは太陽神だった。それゆえに定住農耕民族にも、移動する牧畜民
族にも太陽信仰は共通だ。遠い地に駐屯した兵士らにとってミトラスの神
は、「不敗の太陽」であり、ミトラスの信仰が拡がった。ローマ帝国がキ
リスト教を国教とする前、ひとびとはミトラス教を信じていたのだ。

そしてミトラスの密儀は多彩な祭祀となり、おもわぬ場所へあらわれる。

「『日本書紀』には帰化人で百済からやってきた味魔之が呉で学んだ伎学
をつたえた」、また奈良の大仏の開眼供養には、当該伎楽が演じられた。
その、「演者がかぶる伎楽面の種類とミトラス教の信者の位階が一致す
る」という(92−93p)

古代オリエントの神々に共通したもうひとつの特質は神々が死んで復活す
ることである。

この信仰を活かしたのがキリストであり、イエスは死んで、復活した。
 かくして本書の結論とは宗教は霊的存在である神を中心にした虚構であ
り、その虚構を共有できれば信者になり、過去幾多の宗教が成立し、やが
て混じり合い、そして連れ去られ、ともに生きた。

通読しながら評者(宮崎)はしきりに縄文時代の自然崇拝、すなわち太陽
信仰を考えていた。天照大神はまさに太陽であり、天の岩戸は日蝕であ
り、自然が信仰の対象だった。たとえば大神神社のご神体は三輪山それ自
体であり、鳥居、社殿の出現は仏教渡来以後であり、しかし神道には偶像
はない。

縄文遺跡から出土する夥しい祭祀器具、副葬品としての土偶、翡翠、耳飾
り等々。明らかに神道の源流が縄文時代からあったことを証明している。
縄文人も霊的存在としての神を祭った。渡来人が農作を伝えた弥生式にな
ると社殿が造られ祭祀を司る長が現れた。神秘に満ちた古代人の信仰に、
本書を通読しつつ、思いを馳せたのだった。
        

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。