宮崎 正弘
令和元年(2019)5月2日(木曜日)通巻第6063号
ベネズエラ危機報道の影に隠れたが、ラテン・アメリカ諸国で「洗車作戦」
その結果、大手オデブリヒト倒産、かわりにやって来たのが中国企業だった
「はい、こちらブラジル商事汚職課です」と、どぎついニックネームのゼ
ネコン大手は「オデブリヒトS・A」。
ラテン・アメリカ諸国の大きな公共事業に必ず応札し、政治家に巨額の賄
賂を贈って入札に成功してきた。ブラジルを代表する巨大デベロッパーと
して知られた。
2014年頃から本格化した「洗車作戦」とは、汚職政治家の訴追、追放。ケ
イコ・フジモリにも収賄容疑がかかったほど、どの国もカネまみれ、ブラ
ジルでアルゼンチンで、ペルーでメキシコで、大物政治家から大統領まで
訴追されて失脚した。なかには自殺に追い込まれた大統領もでた。
ブラジルの歴代大統領3人が起訴され、ペルーではガルシア前大統領が自
殺し、エクアドルでは前副大統領が懲役6年、過去に政治家や企業の入札
責任者に贈った賄賂の総額は35億ドル(邦貨換算4000億円弱)にものぼる
という(米国ジェイムズタウン財団「チャイナ・ブリーフ」、2019年4月
24日)。
こんな会社まともな工事が出来るのだろうか?
オデブリヒトS・Aの株式は下げ止まり、ついに2017年に会社更生法を
申請、なにしろ売り上げが十分の一となって、倒産は時間の問題となった。
汚職なんて、ラテン・アメリカではつきもの、なんでまた「洗車作戦」な
どというくだらない政治キャンペンを開始したのか、これでは経済発展が
停滞すると旧裨益組は不満を述べる。
このオデブリヒトの失態、公共事業の空白という絶好の隙を狙って食い
いってきたのが、またしても「あの国」である。
「ひどい企業汚職が去ったと思えば、もっとひどいのがやってきた」と陰
口の聞こえるほどに、オデブリヒトの失敗の穴埋めを、中国国有企業が引
き受けはじめたのだ。
また既存の企業を中国はつぎつぎと買収し、発電所まで建設している。よ
ほど楽天的で享楽的、かつ刹那的な民族性が合うのか、ラテン・アメリカ
の政治家には儒教を看板とするだけの国の、モラルのない人々との付き合
いは肌に合うようである。
▲賄賂漬けの南米諸国に「賄賂の本場」から応札するんだってサ
ところが異変がまた起きた。中国の投資集団の資金が息切れし、プロジェ
クト中断や、入札後のキャンセルなどという失態が次から次へ明るみに出
始めた。
コロンビアのマグダデナ川浚渫プロジェクトもオデブリヒトが撤退したあ
と中国の「チャイナ・ハイドロ」がやってきた。同社は以前に入札に失敗
したプロジェクトの復活を狙っているのだが、最終決定をコロンビア政府
はだしていない。
ペルーでは水力発電所をオデブリヒト撤退のため、中国の国有企業の「三
峡水力発電建設」が、13億ドルでプロジェクトを購入するとした。ところ
が、オデブリヒト社に貸与してきたカネの焦げつきの回収をJPモルガン
とSMBC(三井住友銀行)が要求し、ペルー政府と交渉に入った。
王岐山(国家副主席)と関係の深いHNA集団(海航グループ)は、リオ
デジャネイロ空港をオデブリヒトから買う約束を提示してきた。これも中
国の外貨逼迫ならびに怪しげな経理内容からブラジル航空当局の反対に
あって沙汰止みとなった。
2018年11月、賄賂スキャンダルで中断されていた火力発電を、ドミニカ政
府は国際入札にかけると公告した。応札したのは中国の葛州堤集団だけ
だった。もともと同社は2014年の入札でオデブリヒトの半値を提示してい
た。このためオデブリヒト社は政府高官に9200万ドルをばらまいていた。
ことほど左様に、ラテン・アメリカでも、ベネズエラの不良債権の圧迫
で、中国は熱意を失うか、もしくはファイナンスの面で危機に直面してお
り、威勢の良かった最初の勢いは大きな後退をみせている。
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平成天皇と皇后両陛下の和歌はセットとなっていた
その妙音に籠められた熱情、国民への篤き思い
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竹本忠雄『平成の大御代 両陛下 永遠の二重唱』(倫理研究所)
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平成天皇の御製は、天地を貫く一条の瀧、皇后の御歌で水が流れる。二重
唱なのだ。両陛下の和歌はセットとなっている。その妙音に籠められた熱
情、国民への篤き思い。
竹本氏は皇后陛下の選歌集『SEOTO せせらぎの歌』をパリでフラン
ス語訳を刊行された。日本語版は扶桑社『祈りの御歌』(新装版は海竜
社)である。
両陛下の二重唱を二例。
(沖縄ご訪問のおりに)
御製
激しかりし 戦場(いくさば)の跡 眺むれば 平らけき海 その果てに見ゆ
御歌
波なぎし この平らぎの 礎と 君らしづもる 若夏(うずりん)の島
硫黄島玉砕に際して栗林忠道中将は以下を辞世とした
国のため 重きつとめを 果たし得で 矢弾尽き果て 散るぞ悲しき
(硫黄島慰霊の旅にて)
御製
精根を 込め戦ひし 人未だ 地下に眠りて 島は悲しき
お歌
銀ネムの 木木茂りいる この島に 五十年(いそとせ)眠る み魂かなしき
竹本氏は言う。
「日本の天皇にあっては、御霊鎮めという神道の秘儀をつうじて、やはり
死は乗り越えられていきます。この秘儀を両陛下の二重唱は達成し、不思
議な力を発揮していくのです。それは、単に空間的のみならず、遠く離れ
た時間をも貫いて、むすんでいく力であります」
そしてこうも言われる。
「天皇の御製は天と地を結ぶ一条の瀧です。それを承けて美智子さまの歌
によって瀧の水は流れはじめるということであります」
評者のこころの中にも清流が流れた。
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2019年05月03日
◆ラテン・アメリカ諸国で「洗車作戦」
at 09:00
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| 宮崎 正弘
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