2019年05月13日

◆「中国はグアダル開発をやめろ」

宮崎 正弘


令和元年(2019)5月13日(月曜日)通巻第6074号 

「中国はグアダル開発をやめろ」。BLAがヴィデオで警告
  BLAは豪華ホテル襲撃、カラチ中国領事館自爆テロの武装集団

中国主導のCPEC(中国パキスタン経済回廊)は随所で工事が頓挫して
いる。

プロジェクトの総額は620億ドル。中国はイランとの国境に近いグアダル
港を近代化し、将来は潜水艦も空母も寄港できる軍港の使用を狙っている。

付近には工業団地、大学、新興住宅地、病院などを建設し、一大都市にす
ると豪語してきた。

グアダルを起点に新彊ウィグル自治区のカシェガルまで(1)鉄道(2)
ハイウェイ(3)光ファイバー網。(4)原油パイプライン(5)ガスパ
イプラインを敷設し、その建設のための鉄鋼からクレーン、ブルドーザ、
建設機械、材料から労働者まで中国から連れてきた。現場のバロチスタン
には、なんの裨益もなかった。

パキスタンのバロチスタン州は、もともと独立国家である。国王は英国の
亡命したままである。英国が植民地時代に勝手に線を引いてパキスタン領
としたため、紛争が絶えないのだが、近年は中国を「侵略者」とみて、こ
れまでにも中国人誘拐、殺人、現場襲撃、カラチにある中国領事館へも自
爆テロを仕掛けた。

こんどは中国人が宿泊する豪華ホテルの襲撃となった。グアダルには
「パールコンチネンタル」という5つ星ホテルが開業しているが、宿泊客
の大半が中国人。2回に亘る襲撃で、4人が死亡した。

グアダル港の中国人労働者の居住区は高い塀で囲われ、しかも工事現場を
含めて、警備をパキスタン軍が担うという矛盾がある。直近でもこのパキ
スタン警備兵が襲撃され、26人が殺害される事件も起きた。

「グアダル港開発プロジェクトはバロチスタン国民にとって、弊害こそあ
れ、一銭の利益にもならない。バロチスタン国民は経済的に裨益するどこ
ろか、困窮し、大事な資源が中国とパキスタン政府にむしり取られている
ではないか」というのがBLA(バロチスタン解放軍)の主張であり、
「中国よ、プロジェクトをやめろ」とヴィデオ・メッセージで警告した。


▲パキスタンはデフォルトを免れるのか?

一方、パキスタン政府はCPECによる負債の膨張に頭を悩まし、中国に
緊急援助を乞うた。

ところが面会した李克強首相は、「パキスタンとの友好関係は変わらな
い。両国関係は全天候型だ」などとわけの分からないことを発言したのみ。

いよいよ、デフォルト直前になったため、イムラン・カーン首相は急遽、
サウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)に飛んで救済を求めた。
サウジアラビアならびにUAE諸国は、緊急に200億ドル前後を送金し、
当座の危機は救われた。

先月末からイスラマバードを訪問していたIMF調査団はパキスタン財務
省幹部等との会合を重ね、救済策の協議をしていた。

パキスタンがもし、IMF管理下になると、プロジェクトは全面的な見直
しを迫られ、政府予算にも介入される。

また債権国には80%の債権放棄が迫られることになる。

     
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1893回】                   
――「民國の衰亡、蓋し謂あるなり」――渡邊(5)
  渡邊巳之次郎『老大國の山河 (余と朝鮮及支那)』(金尾文淵堂 
大正10年)

               ▽

「不快なる夜の東清列車」でのことだった。「支那人は東清鐵道督辨處の
官紳なりとて悠揚長者の風あり」。

これに対し「露人に至つては風采揚らず、眞に亡國の放浪漢に似たり」。
レーニン革命で国を追われたロシア人の悲哀が目の前に浮かんでくるようだ。

やがて「南滿洲北部の最大農産市塲」である長春に。

「日本國民の滿蒙に對する發展の遲鈍にして、萬里の沃野を等閑に附する
を慨し」、「日本官民の對支經營の不熱心、不適當、小規模、無手腕」を
激しく憤る同地在住某氏に触発されたのか、渡邊は満蒙こそが「西伯利の
極東3州と共に、日本の人口及食糧問題を解決するの地」であり、それは
急務であり、「50年の後、人口1億1千萬人を數ふるの時」に備えよと説く。

 以下、渡邊の主張を追ってみたい。

「滿蒙は今支那に屬し、西伯利は名において尚露國に屬すと雖も、滿蒙元
來支那の地にあらず、西伯利亦露國の地にあらざるなり、唯侵略と殖民と
によれる威力活用の結果のみ」。だが「今や露支兩國」は国家の態をなさ
ず、「徒に内亂殺傷を以て相踵ぐのみ」といった惨状である。であればこ
そ「今や露支兩國」が両地に対し「共に主人顔するの資格」はないから、
「無主の地と稱する必ずしも不可ならざるなり」。

かくして「勤勉努力、農耕の從ひ、奮勵刻苦、鑛漁を營み、富源を開き、
文明を進め、秩序を維持し、利福を増すの能力を備ふるの優越民族ありて
是等地方の經營に任ぜんか、斷じて之を拒むの理由あるべからざるな
り」。その「優越民族」である日本人は、「人口において世界の23分の1
の多きを占め」ているにもかかわらず、「領土において200分の1の少な
きに苦し」む。加えるに「多々?々加する人口の増殖に會して餓死せんと
する」有様である。だから「日本民族が、是等地方の經營に從事するは、
當然の運命、即ち天命と稱すべきなり。日本民族の力、實に之に堪ふ」。

渡邊は続ける。
 
元来が地球上の土地は無主なのだから、「力あるもの能く之を保つに過
ぎ」ない。「?史的變遷と坤球元來定主なきの理を悟ら」ない支那人。

「山賊的侵略によつて西伯利を収め」たロシア人。さらに「英米人が、海
賊的國民として進化し來り、其領土の多くが略奪の遺物たるを顧みず、人
道を云々して人種的差別觀を脱する能はず、自由平等を云々して鎖攘の非
法に出で、到る處に日本人を排斥し、詭辯と猾智と強力とを以て日本民族
を饑餓の死地に陷れんとするは、暴虐無道の極といふべく、千萬言の修辭
と理想論とを以てするも、斷じて其非を飾るに足らざるなり」。

 つまり「日本民族の生きんが爲に、滿蒙及西伯利において、平和的農商
鑛の經營に任ぜんとする、亦當然の事のみ。片言隻語の異議あらしむべか
らざるなり」。かくして渡邊は「我が當局の對外折衝の拙劣軟弱」を強烈
に糾弾する。

渡邊から100年後の21世紀冒頭の現在に立って、これを過去の誤った暴論
と批判し否定するのは簡単である。

だが考えてみれば――いや、左程は深く考えなくても――国際秩序は終始一貫
して「千萬言の修辭と理想論」ではない。「詭辯と猾智と強力」に依って
維持されてきたし、これからもそうであるはずだ」。いわば「詭辯と猾智
と強力」の3者が一体となった時、それを「千萬言の修辭と理想論」で粉
飾しながら自らの生存空間を拡大するのが国際政治の本質だろう。世界唯
一の超大国を誇っていた時代のアメリカがそうであり、そのアメリカを追
い付き追い越そうと猪突猛進する中国がそうだ。

現に習近平政権は「詭辯と猾智と強力」を綯い交ぜにしながら、「一帯一
路」を画策している。

それにしても「我が當局の對外折衝の拙劣軟弱」は、いつまで続くという
のだ。《QED》 
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