宮崎 正弘
令和元年(2019)5月16日(木曜日)参 通巻第6081号
非常事態宣言にいたったアメリカは中国製品排除を固く決意
もはやルビコン河を渡った、米中対決は最終戦へ突入したと見るべき
だろう
2019年5月15日、トランプ米大統領は非常事態を宣言した。
「非常事態」?
国家安全保障上、極めて脅威となる「外国企業の通信機器」を米国企業が
使用することを禁止する、つまり名指しこそしていないが、明らかに
ファーウェイ、ZTE、チャイナモバイルなどを完全に米国市場から排斥
する大統領令にトランプは署名したのだ。
そして驚くなかれ、反トランプ論調でならすリベラルはメディアも、この
署名には反対しなかった。議会でも上院司法委員会のリンゼイ・グラハム
委員長(サウスカロライナ州)は、「鍵は中国だ」と言明している(ワシ
ントンポスト、15日)。
狙いは言うまでもないが、次世代通信技術の中枢にある5Gの技術覇権を
めぐって、中国の華為技術(ファーウェイ)やZTEの躍進にトドメを刺
すことである。
トランプ大統領が「非常事態」を宣言したため商取引規制権限が大統領に
与えられたかたちだが、実質的に、この緊急事態発令を受けて、商務省が
他の政府機関と協力し、150日以内に実施計画を取りまとめることにな
る。 追加の罰則が検討されるだろうとする見方もある。
ロス商務長官は、「米国の供給網を外国勢力から守ることを目的としてい
る」と述べ、「米国のデータとインフラが安全であると国民は信頼でき
る」とした。 また連邦通信委員会(FCC)のパイ委員長は「特定の外
国企業の機器とサービスによる脅威を踏まえると、大統領令の署名は米国
のネットワーク保全に向けた重要な一歩だ」と強調した。
わずか数日前にトランプ大統領は米中貿易戦争の幕を引くのではなく、第
3幕を開けて、中国からの3000億ドルの輸入品すべてに25%の関税をかけ
るとし、その舌の根も乾かぬうちに、「第4次もある」と述べた。
このためウォール街は600ドル強の下落となったが、株価全体の2・4%
に過ぎず、もっとも下落率が高かったのはもちろん上海株式市場、ついで
台湾、韓国、香港、そして日本だった。
東京市場では中国への依存度が高い日本電産、村田製作所、ローム、京セ
ラなどが3〜5%の下落にあり、むしろ米国より日本のほうが強震に襲わ
れた格好である。
米中貿易戦争は、ワシントンと北京での下準備会合を重ね、おおむね妥協
していた。6月の習近平訪米で、「解決するはず」だった。
メディアは、そういう期待をこめて、妥結が近いと書いてきたが、土壇場
で習近平が卓袱台返しを演じたため、トランプ大統領が激怒し、ますます
激突が深まる結果となった。
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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1895回】
――「民國の衰亡、蓋し謂あるなり」――渡邊(7)
渡邊巳之次郎『老大國の山河 (余と朝鮮及支那)』(金尾文淵堂 大正
10年)
▽
支那人學童に對して強ひて『君が代』を學習せしめ、彼等の無意識に之を
歌ふを見て大に喜」ぶのは余りにも単純でお人好しが過ぎるのである。そ
んなことをしたら「却つて其父兄の内心に憤慨を煽動する」ことに思いが
至らなかったのか。それを小林秀雄流に表現するなら「素人」ということ
だろう。「素人」は飽くまでも誠心誠意を心掛ける。いや唯一の武器が誠
心誠意である以上、生真面目に誠心誠意に振る舞うしかない。
第三者の意図に心を働かせることなく、ひたすら真っ直ぐに、誠心誠意に
対処する。
こちらが良かれと思っていることは、相手にとっても良いはずだとの信念
が揺らぐことはない。日本人は「素人」のままに台湾に上陸し、朝鮮に進
み、満州を開墾し、下って東南アジア各地の民族に向き合った。
「一視同仁」の4文字こそが、「素人」が掲げた方針である。だから「支
那人學童に對して強ひて『君が代』を學習せしめ、彼等の無意識に之を歌
ふを見て大に喜」んだんだろう。だが素人の哀しさである。日本人が示す
誠心誠意がじつは「却つて其父兄の内心に憤慨を煽動」してしまうことに
気がつかなかった。いや、そこまで心が働かなかったのだ。なにせ日本人
は素直だが、相手の多くは極めて素直とはいえない。
その点、長い殖民地行政で積み上げた経験を身に着けた欧米列強は違う。
異民族を『手籠め』にするノーハウを持つ彼らの頭の中には、「一視同
仁」などという素人っぽいヤワな考えは微塵もなかった。
オランダ人はインドネシアで、イギリス人はインド・ビルマ・マレー半島
で、フランスはヴェトナム・ラオス・カンボジア人で、アメリカはフィリ
ピンで、まさか「一視同仁」などと口にしなかっただろう。
支配者と支配される者の間には断固とした違いがあることを非情なまでに
見せつけた。被支配者が「内心に憤慨を煽動」を持つことないように徹底
して、冷酷に骨の髄まで教え込んだはずだ。
誤解を恐れずにいうなら、かつての日本の外地経営は温情溢れるものであ
り過ぎた、ということではないか。
だが、ここで日本人の宿痾が顔を覗かせてしまう。日本人は非情になれそ
うにないのである。日本人にとって相手は飽くまでも友人であって欲し
い。だから「一視同仁」である。「友人」を口にしながら被支配者として
対処する擦れっからし欧米列強のようにはなれない。
ヤワな日本人は「友人」を求めながら結果として彼らの「内心に憤慨を煽
動」させてしまう。百年前の1919年3月1日に京城で起きた「三・一万歳事
件」なども、果して、その類ではなかったか。
だが、だからといって日本人は欧米列強流の方法を学ぶわけにはいかな
い。なぜなら、擦れっからしになってしまったら、日本人ではなくなって
しまうからである。
閑話休題。
満鉄経営の撫順炭鉱を見学した渡邊に向かって、同炭鉱技師長は今後の近
代化におけるエネルギー問題を考えるなら、撫順炭鉱に加え「無盡蔵と稱
せらるゝ山西の炭坑採掘権を握らざるべからず」。だから山東と山西とを
結ぶ鉄路を確保することが肝要だと説く。
そこで渡邊は「日本たるもの、かの自主、自立、自營の力なき支那を助け
て誘掖補導し、親善提携して以て死活一致の實を擧げざるべからざるな
り」と。だが、所詮は「自主、自立、自營の力」がないわけだから、これ
また「支那人學童に對して強ひて『君が代』を學習せしめ」る類の『大き
なお世話』ではないか。
そんな鷹揚に構えているから、山西省督軍閻錫山はイギリスとの合弁事業
として同省の石炭と鉄鉱の採掘、さらには製鉄業を許可しただけではな
く、将来は必要に応じて鉄道敷設権を与えてしまったのだ。
なお同事業は「近年支那官憲より外國人に與へられたる特權中最大のもの
なり」。だから「死活一致の實」なんぞは、やはり余計なお世話だ。
《QED》
2019年05月19日
◆非常事態宣言にいたったアメリカは
at 09:50
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