2019年06月03日

◆ミャンマーに持ちかける中国

宮崎 正弘


令和元年(2019)6月3日(月曜日)通巻第6096号 

 怪しげな都市開発プロジェクトをミャンマーに持ちかける中国
   ヤンゴンの西郊外に8000ヘクタールの農地を開発するとか

ミャンマーの大富豪の一人にセルゲ・パンという政商がいる。
軍事政権時代に中国へ逃亡していたが、1991年にヤンゴンに戻った。政治
的独裁が緩和されるや、パンは不動産開発と金融でまたたくまに商圏を拡
大し、富豪の地位を不動のものとする。

その彼がぶち挙げたのが、ヤンゴンの西に拡がる穀倉地帯を第二の新都心
とするNCDC(新都心開発会社)である。ヤンゴンの新都心は、200
万人の雇用を産む、というのが謳い文句だ。
 https://www.nydc.com.mm/ 

大風呂敷に見えるNCDC構想、ヤンゴン市当局が許可を出した。表向き
の開発理由は「ヤンゴン市内のチャイナタウンが膨張しすぎて限界に近
い。あたらしいチャイナタウンが必要だ」というものだ。

開発予定地はヤンゴン川の西側、約8000へクタールの農地である。8000ヘ
クタールとは8000万平方メートル(2400万坪)。

ヤンゴンのジャーナリストはすぐさま、このプロジェクトに疑惑を抱き、
調べだした。怪しい開発であり、背後に中国のCCCC(中国交通建設有
限公司。2005年に中国港湾建設集団と合併、上海と香港に上場)が15億ド
ルを用意していることが判明した。

じつは、このCCCC。スリランカのハンバントタ港に14億ドルを投じた
近代化工事の主契約社であり、同港はスリランカ政府が返済不能となっ
て、99年の租借を認めざるを得なくなったときも暗躍した。

ハンバントラ港はすでに中国の軍港化している。

マレーシアのパイプライン工事、フィリピンの高速道路工事にも顔を出
し、めちゃに高い資金で入札を繰り返し、政治家への賄賂が告発されている。

つまり曰く付きの企業であり、ブルームバーグは2018年9月に同社を『ブ
ラックリスト』に入れた。


▲つきまとう黒い噂、ミャンマー政治の裏の闇

ヤンゴン市当局は「過去の失敗もあり、このプロジェクトは『スイス・
チャレンジ方式』で行う」とした。これは国際入札を透明化するために第
三者を介入させて入札を監視し、その開発能力を試すのだ。

しかし、ミャンマーは長かった軍政時代から、巨大プロジェクトには必ず
黒い噂があり、ミャンマー政治の裏の闇に拡がるのは政治家と政商、そし
て中国との癒着である。

ヤンゴンの情報筋は、過去の出来事を振り返る。

嘗て北部の水力ダムが36億ドルという途方もないプロジェクトだったし、
ラカイン州の深海開発港のチャウピューも、最初は75億ドルが提示され、
最近の話し合いで13億ドルのプロジェクトにレベルダウンされた経緯がある。

筆者も実際に現場を取材したが、当該現場にはまだ看板があるだけ、本気
で開発するのか、どうか怪しいと疑問を呈している。

ぽつんと崖っぷちに建っているのは4階建ての事務所だけ、警備員が2
人。いつ開業か、工事はいつから始まるのかと聞いても、英語も中国語も
通じないのである。

用地買収から着手するべきだが、それを分担するミャンマー政府が動いて
いる気配もないのだ。

中国の裏の意図は言うまでもない。

ヤンゴン新都心とは名ばかりの「BRI」(一帯一路)の拠点化であり、
貸し込んだカネを、ミャンマーの返済不能をまって、99年の租借とする腹
だろうと、ヤンゴンの情報筋は分析している。
 
       
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIE 
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 習近平独裁という中国王朝に黄昏がきた。やがて自滅するだろう
  経済システムの決壊が方々で起こり、人民の不安心理は異様に増幅し
ている

渡邊哲也 vs 福島香織『中国大自滅』(徳間書店)
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初顔合わせの2人、何が飛び出すか。愉しみにページを開いた。

冒頭からテンションが異常に高い。ただならぬ中国経済の惨状が、冒頭か
ら伝わってくる。

中国からの輸入品に高関税をかけ、米国のハイテク企業買収を阻止し、中
国人留学生のヴィザを厳格化し、あからさまな中国制裁へ動き出したトラ
ンプ政権の法的淵源としては、昨秋に成立を見た「国防権限法」が有名だ
ろう。

だがこれは米国が用意した阻止政策のワンノブゼムにすぎない。

渡邊氏は、いきなり「FIRRMA(外国投資リスク審査現代化法)」,
「ECRA(輸出管理改革法)」、そして「CFIUS(投資委員会)」
という新法を並べる。

これらで米国が中国とのハイテク競争に臨んでいる実態を縷々説明してい
る。耳慣れないのも、日本のメディアが後者みっつの法律について殆ど報
道しないからだ。

インテルが半導体供給をやめたためスマホの組み立てが出来なくなった
ZTEは倒産寸前に陥った。

ファーウェイとチャイナモバイルの米国市場からの排斥もきまった。ほか
にも監視カメラ三社、ドローンのメーカーなども排斥が決まった。

慌てた中国は、ファーウェイ国有化を視野にいれ、事実上倒産状態に陥っ
た海航集団と安邦保険を土壇場で国有化して対応した。

金融面でも銀行準備率を数回引き下げ、資金供給という緩和政策をつづけ
ているが、市場はほとんど氷結したままとなった。

新しい投資はどこにも見られず、中国企業がむしろ海外へ工場を移転し、
中国からのエクソダスを展開中だ。習近平独裁という中国王朝は黄昏はじ
めた。やがて自滅するだろうと2人は口を揃える。

とりわけ中国ハイテクのアキレス腱は半導体の自製ができないことである。

福島女史が言う。
 
「国産の半導体への切り替えを急いでいますが、2017年で国産化率は13・
4%ほどで、ハイエンド半導体は8割を輸入に頼っている状況です」
 渡邊氏がさらに説明を深めて解説を拡げる。

「国産化のために中国は半導体3社をつくりました。2009年に破綻したド
イツの半導体大手キマンダを継承した紫光集団(ユニ・グループ)配下の
『長江ストレージ』と『JHICC』。米マイクロン・テクノロジー傘下
の台湾科亜科技(イノテラ・メモリーズ)の技術者を大量に引き抜いて作
られた『RuiLi』です」。

だがうまくいっておらず、JHICCの新工場は建物が完成したが、操業
に到らず、引き抜いてきた台湾人エンジニアも引き揚げた(小誌でも、こ
のニュースは既報)。

ハイテク産業でも、企業倒産、工場閉鎖など決壊が方々で起こり、人民の
不安心理は異様に増幅している。

一帯一路も、いまでは「借金の罠」という認識を世界が共有するに到り、
中国の言い分を是としている国々は数えるほどしかなくなった。
 
自滅はいまや秒読みという点で2人の分析はほぼ一致する。
 
福島女史は、これらにくわえ、中国が建設もしくは建設中の原発がいずれ
事故をおこすだろうと不気味な予告をする。
 
日本は貿易戦争では勝ち馬に乗れとする重要な推奨を忘れない。溢れるよ
うな情報量は、新聞に載らないデータが多いため極めて有益である。

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