2019年06月16日

◆習近平、来日キャンセルの可能性

宮崎 正弘

令和元年(2019)6月14日(金曜日)弐 通巻第6111号 

 習近平、来日キャンセルの可能性。G20大阪
 香港の抗議行動弾圧に世界が抗議、孤立深める中国にペンス演説が追い
打ちへ

「香港騒乱」とでも言うべきか。雨傘革命を超える参加者。容疑者の中国
送還合法化への法律改正に反対する抗議の人並みは100万人。

香港返還いらい最大の動員となったのも、香港住民の切羽詰まった危機
感、将来への不安感の表れであり、げんに香港の未来を絶望し、バンクー
バーへ舞い戻った香港人の数、数万という。

容疑者引き渡しの法改正をめぐり、中国送還を合法化しようとする林鄭行
政長官ならびに立法府の親中派に対して、民衆は抗議デモで応じた。つい
に議会は開かれず、また法案の成立が不透明となった。抗議行動は引き続
き、警官隊と衝突し多数の負傷者と逮捕者を出した。

抗議側がひるまずに行動を続けるのは、香港の自治が完璧に失われる怖れ
が強く、謂わば香港住民にとって生死をかけた戦いである。

深センに戦車隊が入ったとか、警官に襲いかかるのは中国国家公安部のヤ
ラセとか、様々なニュースが飛び交っているが、国際的な反響は悉くが中
国に否定的である。

強い応援団が出現した。ペロシ下院議長は、香港問題を米国議会で取り上
げ、もし条例改正案を香港議会が承認した場合、貿易上の特権的な待遇を
見直すとし、米議会で法案を審議すると表明した。デモ参加者を支持した
のである。

なにしろ下院は民主党が多数派であり、日頃はトランプ批判に明け暮れて
きた民主党があたかもトランプ路線の先を走ったのである。
 それまで習近平は快適な旅を続けた。

ロシアのサンクトペテルブルグの経済フォーラムではプーチンから持ち上
げられ、中国とロシアは良好なパートナーシップだと言い合って(お互い
に眼を逸らしながら)、誰も眼にも明らかな欺瞞の握手を交わし、保護貿
易主義に立ち向かう等として米国を非難した。

6月13日にはキリギスの首都ビシュケクへ飛んで、第19回のSCO(上海
協力機構)で演説し、インドからやってきたモディ首相とかたい握手、お
たがいに平和を望み、中国は地域の脅威にはならない等と歯が浮いたよう
な発言。それよりキリギスでは、ジベコフ大統領から「中国はながい間に
わたってキルギスを支援してくれた。この恩は忘れない」とおだてられ同
国最高位の勲章を贈られ、いたくご満悦だった。


▼居心地の良さはロシアとキルギスで終わり、つぎの不愉快な旅が待っている

この快適な旅が終わり、つぎに待っているのが米国から突きつけられた諸
要求を飲むのか、飲まないのか。大阪のG20への出席は習近平にとって、
いまや不愉快千万のイベントなのである。

「もしトランプ大統領と習近平の大阪における首脳会談が実現しなけれ
ば、トランプ大統領はもっと強硬な対中制裁措置を準備している。中国か
らはまだ公式的な返答がない」とラリー・クドロー国家経済会議議長は6
月13「日、ピーターソン國際経済研究所における講演で表明した。

日本がやきもきし始めた。28日からの大阪G20ホスト国として、共同声明
がどうなるかも不透明になった。一斉に香港問題への言及があって中国を
糾弾するような内容になれば、北京としては立つ瀬もなくなるだろう。
習近平が来日を直前にキャンセルする可能性が浮上した。

孤立無援、四面楚歌は習近平だけではなく、韓国の文在寅大統領も、あら
ゆる策謀が成就せず、やけくそで来日キャンセルに追随する可能性がある。

まして24日に予定されるペンス副大統領の演説は人権問題、中国のチベッ
トとウィグルにおける血の弾圧が「人権を擁護する国につくのか」「人権
弾圧の国につくのか」と踏み絵を踏ませるがごとく、参加国に鋭く問いた
だし、世界へ向けて中国封じ込め、中国制裁を明確に呼びかける内容とな
るだろうとワシントンでは予想されている。

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BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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中国はなぜ外国人特派員を日夜監視しているのか
  共産党幹部の日常生活も発言記録も「国家機密」だという特殊事情

  ♪
中津幸久『北京1998  中国国外退去始末記』(集広舎)
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或る宴席でなぜか柴田穂氏と鮫島敬治氏の名前が出た。

柴田穂は文革時代の産経特派員で、「西単の壁」に貼られた壁新聞を克明
に見に行き数々のスクープをものにしたために国外追放になった。帰国後
に数冊の中国論を上梓されたが、うち一冊は評者(宮崎)が担当、よく新
宿や銀座のカラオケに行った。

鮫島敬治は日経新聞特派員時代に、追放ではなく1年半にわたって社宅軟
禁された。評者がインタビューして「ながい孤独を如何に堪えたか」とい
う質問には「『真向法』で精神安定を得た」と明確に答えたが、「なぜ体
験記を書かないのか」と質したことには「そのうちに」と言葉を濁した。
「そのうちに」ガンで亡くなった。

宴席で想い出噺をおえて帰宅すると、本書が届いていた。しかも奥付の日
付が6月4日、なにかイミシンだ。

どの国にも国家機密があるし、それを守ろうとするのは主権行為であって
当然だが、日本のようにスパイ防止法さえない国では、この常識は通らな
い。閣議決定は三十分以内で北京に筒抜けになる。なにしろ首相が中国人
工作員の女性と懇ろになった事件もあったが、あまり問題視されない。諸
外国なら首相弾劾に発展するだろう。

中国には国家機密のなかに幹部の日常生活や会議における発言記録も『機
密』に属するという特殊事情がある。

また特派員の周辺にまといつく情報屋には為にする情報工作を意図的に吹
き込み、相手国の世論を誤解させ、世論になにがしかの影響を与えようと
する諜報工作もたくみに展開されている。
 
 産経の江沢民死亡号外事件も、朝日の林彪健在という世紀の大誤報も、
毎日の陳敏爾浮上説も、「情報屋」がもたらしたガセだった。

著者の中津幸久氏は読売新聞中国元特派員。最初は上海、ついで北京。そ
して国家機密に触れた報道をしたとかの難癖をつけられて執拗に取り調べ
をうけた体験を持ち、とうとう国外追放の憂き目にあった。

以後、5年間中国入国禁止処分となった。10年後の北京五輪に乗じて取材
ヴィザを申請したが、やはり拒否されたという。

特派員時代には助手の中国人に挙動を監視され、ときに密告されたと書い
ているが、これは常識であり、ある時、評者も某新聞の特派員と会う約束
で、差し向けられた車に乗り込んだ。運転手も監視役と分かったのは、日
本語が分からない触れ込みだったのに、接触事故を起こしそうになったと
きに、当方がとっさに喋った、最新流行の日本語をちゃんと聞き分けたか
らだ。
 (あ、この運転手も工作員か)

特派員時代に、この著者はいかなる経験をしたか、それを当時の政治状況
に重ねて考えていくと、中国の外国人特派員への「気配り」<?>」が歴
然と読めてくるのである。
        

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