2019年07月15日

◆「発禁処分」を知らぬ団塊世代

渡部 亮次郎



「夜のプラットホーム」は戦時中「厭戦歌」と見なされて内務省から「発
売禁止」処分。敗戦後も「検閲」は占領軍(マッカーサー司令官)も続け
たが、「厭戦歌」は占領目的に合致したから大歓迎。

そこで敗戦2年後に再発売されて大ヒット。私のような戦中派は悲しい思
い出で回顧するが、NHK「ラジオ深夜便」のアナウンサーは戦後生まれ団塊
の世代。この歌の歴史を勉強してこないから、コメントに重厚さがなくな
る。(2008年9月21日 榊 寿之アンカー)

<『夜のプラットホーム』(よるのプラットホーム)は、奥野椰子夫作
詞、服部良一作曲の流行歌。1947(昭和22)年に二葉あき子が歌って大
ヒットし、彼女の代表的なヒット曲の1つに挙げられる歌であるが、もと
もとは戦時中、淡谷のり子が吹き込んだものであった。>

榊アンカーも上記< >内は言ったが発売禁止処分の事は一言も触れな
かった。日本という国が体制維持のためには、言論統制も余儀なくしたこ
と、共産主義体制、中国を笑えない歴史のあることなど無関係だった。

「都」新聞(現「東京」)の記者だった奥野椰子夫(おくの やしお)は
昭和13(1938)年の暮、東京・新橋駅で、支那戦線出征兵士を送る「歓呼の
声」に背を向け、柱の陰でひっそりと別れを惜しむ若妻の姿に心を打たれ
た。もしかして「再び逢えぬ死出の旅」と言えぬこともない。

それなのに「無責任な」「歓呼の声」はそんな若妻の悲痛も知らぬげにた
だただ勇ましい。奥野はその悲しみを胸に刻んだ。

翌昭和14年、作詞家としてコロムビアに入社した奥野は、ためらわず「夜
のプラットホーム」を筆下ろしとした。当初は1939(昭和14)年公開の映
画『東京の女性』(主演:原節子)の挿入歌として淡谷のり子が吹き込んだ。

だが、やはり出征する人物を悲しげに見送る場面は「厭戦」を連想させる
として、「戦時下の時代情勢にそぐわない」と内務省検閲に引っかかり、
同年に発売禁止処分を受けた。

大日本帝国憲法26条では、通信・信書の自由・秘密が保障されていたが、
日露戦争の後、内務省は逓信省に通牒し、極秘の内に検閲を始めた。

検閲は手数料を要し、内務大臣が許可したものは3年間、地方長官の許可
したものは3ヶ月間有効であった。検閲官庁が公安、風俗または保健上障
害があると認めた部分は切除され、検閲済の検印を押捺し検閲の有無が明
らかにされた(大正14年3月内務省令10号、大正11年7月警視庁令1号)。

レコードについてはは、製品は解説書2部を添え、規定された様式に従っ
て内務大臣に差し出して許可を要し、検閲上の取締方針は出版物と同様で
あった(明治26年4月法律15号、昭和9年7月内務省令17号)。

だが作曲の服部は諦めなかった。2年後の1941(昭和16)年、「I'll Be
Waiting」というタイトルのが発売された。「洋盤」の検閲が緩かったと
ころを突いた作戦である。

作曲と編曲はR.Hatter(R.ハッター)という人物が手がけ、作詞を手がけ
たVic Maxwell(ヴィック・マックスウェル)が歌ったのだが、この曲は
『夜のプラットホーム』の英訳版であった。また、R.ハッターとは服部が
苗字をもじって作った変名。

ヴィック・マックスウェルとは当時の日本コロムビアの社長秘書をしてい
たドイツ系のハーフの男性の変名であった。この曲は洋楽ファンの間で
ヒットして、当時を代表するアルゼンチン・タンゴの楽団ミゲル・カロ楽
団によってレコーディングされた。

余談だが、このときB面に、発禁済みの「鈴蘭物語」を「夢去りぬ」
(Love‘s Gone)という題名で吹き込みなおしていたため、
このタンゴを外国曲と誤解したままの人も多かった。

戦後の昭和22(1947)年、今度は検閲をしていた占領軍は、この「厭戦歌」
を占領の趣旨に合うとして大歓迎。二葉あき子が新たに吹き込んだレコー
ドが発売され、大ヒットになった。

二葉は広島原爆をたまたま列車がトンネルに入ったときだったため生き
残った東京音楽学校出の歌手。それまでの歌手活動の中、ヒットはあった
ものの大ヒット曲のなかった二葉にとっては待ち望んでいた朗報であった。

たかが歌謡曲というなかれ。「日本流行歌史」を読めば、これだけの歴史
があリ、ドラマを紹介できるのである。

団塊の世代は一面、幸せである。気がついた時から日本は平和であり、言
論は自由であった。政府が流行歌まで統制した「検閲」や「発売禁止」を
知らないできた。だが、そこに至る歴史をないがしろにしてはならない
事、全世代、共通の願いではなかろうか。2008・09・21
参考:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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