2019年07月22日

◆台湾独立色を鮮明に

宮崎 正弘


令和元年(2019)7月22日(月曜日)通巻第6151号  <前日発行>
 
 台湾独立色を鮮明に、新党「喜楽島連盟」が誕生
  羅仁貴(長老会牧師)を議長に立法委員選挙に大勢の候補者擁立を宣言

7月20日、台湾でまた新党が誕生した。台南を拠点に長老会(プレスビテ
リアン)がバネとなって「喜楽島連盟」が結成されたのだ。

初代党主席は台湾長老会派議長の羅仁貴が、200人の代議員の投票によっ
て選ばれた。

「来年の立法委員選挙に候補者を多数擁立する」と気勢を挙げた。ただし
蔡英文に挑戦する総統候補は立てない、とした。

台南はもともと台湾独立を鮮明にする本省人の根城のような地区で、台南
市長を務めた頼清徳は首相を辞任して総統候補をきめる党内選挙に臨ん
だ。同地のキリスト教会は長老派が圧倒的につよく、蒋介石独裁時代には
教会にあつまって独立派の秘密会合が開催されたという歴史がある。
 
長老会はカルビンの宗教改革を端緒にスイスで発祥し、フランスから英国
へ伝わりスコットランドで拡大定着した。米国にも伝播したのはピューリ
タンが持ち込んだからで、このカルビン派系プロテスタントは、ちなみに
ニュージーランドの主流キリスト教だ。

台湾へは1865年頃に淡水に上陸し、急速に拡大した。現在、台湾のキリス
ト教最大の勢力である。

さて新党「喜樂島連盟」は「反中国併呑」「正名台湾国」「制定新憲法」
「加盟連合国(国連加盟)」をスローガンとしているが、前回選挙で躍進
した「時代力量」や、かつての李登輝主導の「台湾団結連盟」に迫る政治
パワーとなるか、中華思想まるだしだった「新党」や宋楚諭率いる「親民
党」と同様な線香花火で終わるかは、現時点で不明である。
    
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書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 BOOKREVIEW
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 日本は縄文時代の一万年、徳川時代の三百年、泰平だった
  幕末まで国家論も国防論も、日本人は考えなくても生きてこられた

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渡部悦和 vs 江崎道朗『言ってはいけない!?国家論』(扶桑社)
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本書のカバーデザインをながめて、まことに地味。題名も小さい。著者ふ
たり渡部悦和・江崎道朗の名前はもっと小さい。「これでは書店で目立た
ないのでは?」と老婆心ながらの第一印象だったが、いや待てよ。これこ
そ著者と編集者とデザイナーが意図したものではないのか、と考え直した。

つまりプラトン流の「国家論」などと大上段に振りかぶった政治議論な
ど、日本人がもっとも不得手とするからであり、このため、安全保障論議
は論壇の隅っこ、地味なのである。

重要な議論を日本人が避けようとしてきたのではない。関心が薄いのだ。
 選挙で「あなたは何を基準に投票しましたか?」と世論調査をすれば
「社会保障」「年金」「保険」「福祉」「教育」、そして「消費税」であ
り、防衛とか改憲とかを判定基準とする人たちのあまりの少なさに呆然と
なる。

まるで中国とは正反対である。

CCTVも人民日報も環球時報も、朝から晩まで国家、愛国、国防、党の
団結であり、生活保護、保険、社会保障、環境などの議論は何ほども目立
たないではないか。

米国とて、ミンシュシュギとは言ってもWINNER TAKES 
ALLの世界、反対意見は切り捨てる。この点で、中国と似ている。

トランプは国防費を増やそうと言うだけで、国防予算は8兆円も増える
(日本の防衛費は5兆円)、「おれは国務省が嫌いだ」と言うだけで、国務
省予算はばっさりと削減された。もっとも国務省をヒラリー商会にしたの
はオバマ政権の責任だが。。。

日本は? WINNER TAKES SMALLである。

与党は野党の意見を多く取り入れる。これが日本型の和を以て尊しとな
す、まつりごとの基本である。

考えてみれば、日本は縄文時代の一万年、徳川時代の三百年、泰平だっ
た。幕末まで国家論も国防論も、日本人は考えなくても生きてこられた。
突如嵐に遭遇すると、日本人は大和魂を思い出し、国学の復興をみるが、
緊張緩和の時代がくると忽ち重要な課題を忘れるという特性がある。

だからトランプは日本の核武装を容認し、安保条約の廃棄を言い出したこ
とはペリー来航に匹敵する衝撃になる。だが、目の前の現象しか日本のメ
ディアは見ていない。危機と平和が表裏一体であることにまだ気がつかな
い。おそらくこのような民族の特質は未来永劫変わらないのではないか。

 前置きが長くなった。さて本書である。
 
アメリカは一枚岩ではないという現実をふたりはまず俎上にあげる。パン
ダハガーが進歩的でリベラルな学風を誇るハーバード大学に残存してお
り、そればかりか彼らがアメリカの一部の世論をリードしている。

渡部氏の2年の留学経験からハーバード大学の現実が具体的に描写されて
いて、そこまで酷いのかという感想とともにアメリカ人の中国観の根底に
流れる考え方がわかる。

世界のエリートがいかなる議論をしているか、国際関係論では親中路線を
突っ走るエズラ・ボーゲル教授らパンダハガー一派が議論をリードし、学
内政治も牛耳っているという実態。中国人留学生らは共産党統一戦線部の
指令にもとづいて、その周りを囲んでいるという怖ろしい現実がある。

ミアシャイマーは、いたたまれなくなったシカゴ大学へ移った。

パンダハガーと見られていたディビッド・シャンボーは親中路線を修正
し、パンダ批判組に合流した。

シャンボーが全体主義体制の続く限り、中国は後退し、萎縮、崩壊すると
したことは嘗て小覧でも紹介した。

 以下、アメリカ通のふたりは米国政治の内部分析を克明に続けるのだ
が、日本のメディアが伝えていない情報が夥しく、参考意見として傍線を
引き始めたら、本書は朱だらけになってしまった。

外交というのは、軍事力と情報力の両輪で成立する。核の傘に守護された
日本は、アメリカが中国を敵といえば、自動的にその国は日本の敵になる。

国際政治ではパワーというのは軍事力ではなく核兵器を意味する。残置諜
者をスリーピングエージェントなどというのは国際政治の常識だし、日本
の忍者には「草」がいた。じつに戦国時代のほうが、日本のインテリジャ
ンス感覚は鋭敏だった。

そして二人は合意するのだ。岸信介政権まで戦前の岩畔、藤原機関の生き
残り、中野学校の生き残りがいたのでアジア情勢は彼らのアンテナから精
度のよい情報がもたらされた。
 
渡部 「日本にもインテリジェンスのノウハウがありましたが、現在と終
戦以前との間に断絶があります。国防に関しては終戦以前のあらゆるもの
がタブー視されていますから」。
 

江崎 「戦前との断絶が本当に決定的になったのは後藤田正晴官房長官の
時代、つまり昭和50年代から」。

評者(宮崎)はいまから40年前に、日本でも国防論議を本格化させる必要
があるとする加瀬英明、三好修氏らの呼びかけに応じ、「日本安全保障研
究センター」のボランティア事務局長をつとめ、財団化に奔走した経験が
ある。米国のシンクタンクとの交流が深まり、何回か、日米セミナーを開
催したが、10年ほどで活動停止状態に追い込まれた。

第一に米国との税制が異なり、寄付が集まらないこと。ひとくち一万円て
いどの会費では、セミナーも開催できない状態だった。

第二に自民党の政治家で真剣に安保論議に呼応できる国際感覚の持ち主が
数名しかいないこと。この寂しき現実はいまもかわらず、「アメリカ通」
を自認する若手の議員でも、じつはアメリカ政治を理解していない。かれ
らは「エズラ・ボーゲルはこう言っていた」という口癖がある。

第三に日本の官僚制度では当時、防衛庁は二流官庁とみられており、協力
体制にないこと。とりわけ外務省の非協力的な態度には、エリート特有の
「上から目線」があり、ましてチャイナスクール全盛時代だったから、中
国の軍事的脅威を説くと、私たちの議論をはなから莫迦にしていた。

第四が財界の理解がほぼゼロ、金儲け、目先の決算しか思考範囲にないこ
と。かれらは天皇訪中を歓迎したし、工場の進出ばかりを考えて、国益と
か戦略とかを語ることはタブーに近かった。

第五にメディアの理解が、ほぼゼロだったことである。

したがって二人の議論のなかでも下記の箇所が妙に突き刺さるのだ。
 渡部 「安全保障に関する唯一の官のシンクタンクは防衛研究所です。
(中略)所員には優秀な人もいるのですが、結果を対外的に発表するのはか
なりハードルが高い。いちいち許可を得ないといけないのです。そうする
と本当にタイムリーな情報の発信はむずかしくなる」
 
江崎 「公表するまでに時間がかかってしまう。それと政府はある程度、
確実なことしか言えませんしね。(中略)これが民間だと政府ほどの制約は
ありません。『こういう可能性がある』『こう予想される』という段階で
も発表できる」

したがって二人は早めの情報分析と予測を立てる民間シンクタンクの必要
性があると力説される。評者も経験上、大いに賛成である。

レーガン政権時代、ヘリティジ財団の作成したペーパーが政策に反映され
るか、あるいは採用された。AEIの経済政策も有効だったし、当時、評
者はこれらのペーパーを集め、研究員と議論するために何回もワシントン
へ行ったものだ(いまではネットで読める)。

もう一つ、官ができない見解を民間シンクタンクがさきに警告的に発信で
きる利点がある。

CIAの金融予測は、公表するとまずいことがあるので、GFIなどの民
間にシンクタンクがさらりと発表している。だから中国の外貨準備や不正
資金の流失というリアルが、われわれでも掴めるのである。

国防方針はランド研究所をウォッチしていれば概要が掴めるし、アメリカ
のホットな議論が奈辺にあるかはCSISの報告などを注視していれば良い。

ともかく本書は全編これ最新情報の固まりであり、紙幅があればもっと紹
介したいところである。
  

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