2019年07月25日

◆GAFAは敵なのか、味方なのか

宮崎 正弘


令和元年(2019)7月23日(火曜日)弐 通巻第6153号 
 増ページ特大号〜

GAFAは敵なのか、味方なのか
  独禁法違反もなんのその、中国に協力する懲りない面々

 GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)への締め
付けが欧米間で進んでいる。

GAFAは国境を無視したかたちで国際的なSNSの拡充、送金の自由、
手数料の低減などを実現する一方で、ハッカー、サイバー犯罪を助長し、
テロ組織への資金供給のネットワーク構築にも結果的に協力することに
なった。

自由主義経済システムから生まれたビジネスモデルが、西側の安全保障を
脅かす脅威となったのであり、歴史のアイロニーかも知れない。

まずG7で協議されている課題はGAFAの「課税逃れ」対策である。
「節税」と「脱税」は区別されるはずだが、GAFAの税金対策は徹底し
ていて、4社で74兆円もの売り上げを誇りながら、巧妙な手口で、本来収
めるべき税金を逃れてきた。

GAFAが法源として弁解・活用したのは、営業の「拠点」が恒久的施設
(PE)でなければ、課税対象とはならないという法律の穴をつき、例え
ばアップルは税率の低いアイルランド子会社を利用、グーグル日本支社
は、シンガポール子会社との間で広告契約として節税していた。
 
G7では、GAFAの課税逃れを見逃さず、先進国が一致して共通ルール
による課税強化策を講じるという方向はでたが、フランスが強く反対し
て、先へ進んでいない。ともかくG7は、危機感の共有で認識を共有した
ことは事実である。
 
G7各国は安全保障上の共通の利害を共有できても、税金では対立する。
2019年7月10日、フランスは米国との事前協議なしに「デジタル課税法
案」を議会通過させたため、税収が減ることになる米国が激怒した。

同月17日からフランスで開催された「G7中央銀行総裁、財務相会議」で
は、この課税問題を集中的に議論したが、まとまりがつかなかった。
 
就中、フェイスブックは問題視され続けてきたデジタル企業であり、規制
強化の方向性はワシントンで明確にでていた。法律制定には公聴会や専門
家のパネルを重なる必要があり、実際の規制強化には1年以上の時間がか
かるとされる。

2018年3月にフェイスブックから8700万人分の個人情報が漏洩したため、
司法省が調査してきた。西側のコンセンサスはプライバシー保護であり、
司法省の調査を待って米連邦取引委員会が制裁金を課すことになる。制裁
金は5400億円相当になると予測されている(すでにフェイスブック
は、制裁金を予測し積立金を準備中である)。


 ▲プライバシーが盗まれても、平然としているフェイスブックのダーク
サイド

GAFAへの規制強化に関しては欧米、ならびに日豪がほぼ共通の懸念を
抱いており、米国では連邦議会とは別にカリフォルニア州は単独で個人情
報保護の新法を制定した。

EU諸国でも個人情報管理を規制強化しており、EUはスマホOSとアプ
リの組み合わせは独占禁止法に抵触するとしてグーグルに制裁金を、フラ
ンスはプライバシー問題でもグーグルに制裁金を課した。

ドイツはフェイスブックの利用者からのデータ収集に対して大幅な制限を
かけ、またEUはインターネット広告問題でグーグルに制裁金を課した。
米FTCもグーグルに2250万ドルの制裁金を課した。

次なる難題はフェイスブックが発行を予定している仮想通貨(暗号通貨)
の「リブラ」をめぐる意見衝突である。

フランスは「通貨主権が侵される怖れが高く、金融システムに深刻な悪影
響がある」と根底からの疑念を表明した。

ムニューシン米財務長官も「国家安全保障上問題が多い」とG7で発言し
た。この文脈から見えてくるのは中国対策と同義語である。
 
フェイスブックは、親中企業として有名である。なにしろCEO夫人は中
国人。ザッカーバーグは何回も中国に通うほどに、依然として中国の巨大
なマーケットを狙っている。

フェイスブックは世界で27億人が利用している巨大デジタル産業だが、個
人情報の漏洩というスキャンダル、そして選挙介入の「前科」があるた
め、米国議会の多くは「フェイスブックは危険である」と批判してきた。

「リブラ」に中央銀行が反対なのは多くの理由がある。

仮想通貨で決済が可能となれば請求書や振り込み手数料が軽減されるもの
の、それはドル、ユーロ、円などの資金需要を減退させる。究極的にはド
ル基軸体制が破綻する。

第一に通貨発行、通貨供給量を決めるのは各国の中央銀行の裁量であり、
仮想通貨が出回ることは経済主権が侵されるばかりか、国家そのものの存
在が問われる。独立国家としての主権が脅かされるからだ。

第二にマネーロンダリングに使われることは明らかであり、監視網がさら
に必要とされる。監査を強化すれば、資金洗浄の手口はますます高度化す
るといういたちごっこが現状だが、銀行を経由しない送金が可能となれ
ば、まともな監査も出来なくなる。

第三にテロリストへ資金が流れる可能性を否定できないことだ。犯罪行為
への送金も可能であり、言ってみれば暗号通貨「リブラ」発行という行為
は、国境をなくすのではなく国家をなくすという過激グローバリズムの権
化と認識されるからだ。


 ▲トランプ政権が迅速に動いた。

リブラ阻止。明確な行動目的を掲げて議会も動き出した。もとよりFRB
は反対の急先鋒だ。そのうえ、米国はリブラが国際的に流通する前に厳し
い規制をかけ國際的な包囲網を形成する方針である。

英国でもカーニー(イングランド銀行総裁)は、資金洗浄対策が不安定
で、事業開始は認められない」と発言している。

7月16日には米上院銀行委員会が公聴会を開催し、フェイスブック幹部を
呼んで、以下の問いかけを行っている。すなわち「マネーロンダリング対
策は万全なのか」「サービスを個人データに収集するのではないのか

「なぜグーグルは米国を避けて、このリブラの拠点をスイスに置くのか。
課税逃れではないのか」など。

対してフェイスブックのデビット・マーカス副社長は「そもそもリブラは
フェイスブック主導とはいえ、マスターズ、ヴィザ等クレジットカード会
社など28社が参加する「リブラ協議会」のような多国籍企業であり、本
拠をスイスに設置するからにはスイス当局(スイス金融飯場監督寄稿)の
監査に従うし、米国の規則に従う」と明言した。

だが、いまの法体系では独禁法適用しかなく、銀行ではないフェイスブッ
クのビジネスモデルを規制する法律はない。

日本も同じ状況だが、大手SNSの言論空間では保守的な意見を書き込む
とネットから削除される。このような世論操作的な行為が頻繁に組織的に
行われており、グーグルやフェイスブックの言論操作、フェイク情報の垂
れ流しはかねてより問題視されてきた。
 

 ▲グーグルと中国の関係を調べ上げろ

米国の包囲網形成には欧州と日本が同意を示しており、過去の多くの情報
漏洩、個人データの売却ならびに詐欺事件の頻発など、その暗い「実績」
を前にすれば欧米日が、ことのほかフェイスブックに慎重に、否定的にな
るのは当然と言えるだろう。
 
トランプ大統領は「フェイスブックのリブラは信頼性がない。銀行規制を
課すべきだ」とし、パウエルFRB議長も「消費者保護で深刻な懸念を払
拭できない」と牽制した。

またウォーターズ下院金融委員長は「国家安全保障の観点からも開発を一
時中止せよ」。上院のタカ派テッド・クルーズは「反トラスト法に触れる
深刻な問題である」。

「議会と政権が珍しく共闘を演じるのはリブロと中国問題だ」と或る議員
は批判のトーンを高め、「いっそのことリブロ解体が望ましい」とする。

IMFは暗号通貨に関しての報告書をまとめ、金融政策の機能喪失の懸
念、マネーロンダリングの怖れに加えて、銀行業務の縮小懸念をあげた。

以上見てきたようにリブラに関してはフェイスブックだが、ほかにも議会
公聴会にはアマゾン、アップル、グーグルの幹部が召喚され、独占禁止法
抵触、機密情報漏洩、データの流用懸念などについて執拗に質問を浴びせた。
 
トランプ大統領は7月16日に「グーグルと中国の関係」、つまりグーグル
が中国軍に協力している疑惑に対して調査を命じた。
   
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1929回】          
 ――「支那は日本にとりては『見知らぬ國』なり」――鶴見(22)
  鶴見祐輔『偶像破壊期の支那』(鐵道時報局 大正12年)

では、なぜ第2の考えは成り立たないのか。かつて「支那即ち世界であつ
た」。だが、いまや「世界の一部分」であるばかりか「外國の壓迫といふ
ことが支那の政治的大因子であ」り、それ故に「悠長なる無政府状態も、
變遷的過渡期も支那民族にとつては之を續けて行くことが出來ない状態に
なつてゐる」からである。

次に「現状を不滿足なりと爲し革新をしなければならぬといふ説」だが、
今後の変化の可能性について鶴見は「凡そ六つの假定を想像して見る」。
 「その一つは英雄時代の出現である」が、「英雄政治の出現は先づ以て
覺束ないと見る方が穩當である」。

「第二の假定は、英米流のデモクラシー、即ち代議院制度に落付くであら
うといふ説」だが、「支那の如く、英米に全く異なる傳統を有し、國情を
有するところの國に、急に英米流の代議院制度が行はれるといふことは想
像し難きところである」。

「第三に、然らば中央集權に依るところの代議院制度は不可能であるにし
ても地方分權に依るところの聯省自治が可能ではないかといふ問題があ
る」が、その前提としては「支那人が自治の能力を本當に發揮し得る」の
か。加えるに「その自治をしたところの支那人が、果して聯省といふやう
な形で一國を成して存在し得るかどうか」――この「二つの條件」を満足さ
せる必要がある。

「第四に起きる假定は、經濟的立國論」である。これは「政治的に強き政
府を造らなくとも、各地方に産業を興して、支那といふ一個の社會が確立
すれば支那が發達する」という考えだが、ならば「今日直ちに政治的方面
から支那を開發しないでも宜からうといふ」わけにはいかないだろう。

「第五には、昨年華盛頓會議の際、唱へられた所謂支那の國際管理問題で
ある」。その場合、「世界の文明國が公平無私の考を以て支那の爲に政治
を代行する」といふ大前提が必要だが、「列國が果してそれだけの人道的
心持を以て利?を措き、他國の行政を管理し得」るわけがない。それが可
能だったとしても、「國家の體面上」、「支那人は決して之に黙從しまい
と思ふ」。

「第六に起つて來る假定は、支那が凡ての改革手段に失敗したる曉には、
寧ろ露西亞の如く外國との連絡を斷つた一個の社會主義國となることが可
能であるかどうかといふ事である」。当然のように「それは非常に大きな
冒險である」。それというのも、「支那人が果して社會主義の思想を有す
る國民であるかどうか」に加え、「露西亞と異つて支那は外國から侵入さ
れ易き境涯に在る」からであり、であればこそ社会主義化して対外閉鎖を
実行した場合、「外國が之を黙認するかどうか」が「明らかな問題」だか
らである。そこで社会主義化は「成功の可能性が頗る薄弱」と結論づけた。

ところが鶴見の旅行から27年5カ月ほどが過ぎた1949年10月1日、毛沢東に
率いられた共産党は「非常に大きな冒險」の末に、「露西亞の如く外國と
の連絡を斷つた一個の社會主義國」を地上に出現させてしまった。

「支那人が果して社會主義の思想を有する國民であるかどうか」に拘わら
ず、「外國から侵入され易き境涯に在」ろうがなかろうが、さらには「外
國が之を黙認するかどうか」の別なく、である。

しかも建国後を振り返ってみると、「先づ以て覺束ないと見る方が穩當で
あ」ったはずの「英雄政治」が毛沢東の手で実践されてしまった。もっと
も毛沢東の治世は独裁政治であったとしても決して「英雄政治」ではない
と否定されたらそれまでではあるが。
 
27年5カ月ほどを間に挟んだ中国の激変を、鶴見はどのように考えたの
か。もっとも日本も、中国をめぐる国際社会の政治力学も激変に継ぐ激変
であったわけだが。《QED》


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読者の声  どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 
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(読者の声1)ニューズウィークが特集号を出したMMT理論ですが、
ネットで経済評論家の三橋貴明氏が次のようにスティファニー・ケルトン
教授と講演、対談した成果を書かれています。

1.政府の財政赤字は、政府以外の経済主体にとっての黒字
2.国債発行残高は、政府が支出し、徴税で回収しなかった貨幣の履歴
(歴史的な記録)
3.経済の制約は財政ではなく、インフレ率(リソース、供給能力)
4.徴税は、国民の支出能力を奪い取る装置。消費税増税は消費抑制政策
5.経済がバランスしていれば、財政は赤字でも黒字でも均衡でも良い
6.日本は金融政策で国民の債務を増やすのではなく、財政政策で国民の
所得と自信を増やせ!

日本のマスコミは「黒船」に弱い。おまけに金髪で美人のアメリカ人経済
学者の主張となると、それなりに報じてくれるわけです(ケルトン教授を
お呼びした甲斐があった)。というわけで、「completely wrong(でたら
め)」な主流派経済学を否定するためのレトリック、手法は、なかなか洗
練されています。例えば、MMTの始まりと言える「ウォーレン・モズ
ラー氏の名刺」の話や、国民経済を「シンク(水槽)」にたとえる手法
は、見事の一言です。
【Front Japan 桜】ケルトン教授が明かした政府支出と税金の真実(他)
https://youtu.be/ywx-vplOG60
モズラー氏の名刺やシンクは、早速、チャンネル桜の番組で使ってみまし
た。いや、これは使える! あるいはケルトン教授は「財政赤字」や「政
府の負債(国の借金)」という言葉を問題視しており、この点も三橋が以
前からやっていた活動であり、共感しました。

具体的には、「財政赤字⇒国民黒字」。「国の借金⇒貨幣発行残高」
 いかがでしょう。

財政赤字は「政府以外の黒字」です。厳密には「海外」が入っているた
め、「国民」は不正確ですが、その辺りは理解した上で言葉を変更していく。

あるいは、財政赤字とは、自国通貨建て国債しか発行していない国にとっ
ては、「貨幣発行」に過ぎません。つまりは、財政赤字の積み重ねである
「国の借金(政府の負債)」は過去の貨幣発行の歴史的な履歴に過ぎな
い。つまりは、貨幣発行残高。

MMTは、現代の貨幣はもちろん、経済や財政、政府支出、徴税、国債発
行残高等について「正確な理解」を提供してくれる」(以上三橋氏の意見
を要約しました)。

というわけで、MMT理論、如何でしょうか?(YT生、横浜)


(宮崎正弘のコメント)なにも珍しい理論でもなく、ましてアメリカ人の
発明でもないです。

嘗て丹羽春喜教授が主張していた「打ち出の小槌」論です。政府紙幣を発
行し、経済の需要を高めると景気は恢復する。丹羽先生は1970年代す
でに、限られたデータを元にソ連の崩壊をいち早く予測した人で、アメリ
カでの評価が高かった。

      
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