2019年08月31日

◆雀庵の「呆け防止は読書から」

“シーチン”修一 2.0


【Anne G. of Red Gables/19(2019/8/29)】国語の作文などでは「本との
出会い」といったテーマはよくあるだろう。

定番の「読書感想文」は大体が(1)筋の紹介、(2)それを通じて自身が
あれこれ考えたこと――肝腎のこれはあまり書かれてはいない、だから面白
くないと思う。先生は仕事だから生徒の作文を読まなければならない、ず
いぶんな苦痛ではないか。

ある専門学校の若者向け月刊誌を制作していた頃、若者が読んでおいた方
が良い本を紹介する記事、“古書探訪 おススメの一冊”を毎号書いた。そ
のひとつが「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー)で、小生は20歳
の時に独房で読み、涙を流したから、読者にとってもいいだろうと改めて
読んだが、ぜんぜん感動しない。

なぜだろうと長い間思っていたが、最近、書庫の古い本を読み直して思う
のは、作品と読者は恋と同じで、ある時、読者は、昔読んだけれどちっと
も感動しなかったし、筋も全く忘れていた作品を再読し、「ああ、なんて
素晴らしいのだろう」と心が揺れるのだ。

50年ぶりの同窓会で、昔は気にも留めていなかった女子に心をひかれるよ
うな感じ、「ああ、僕は君と友達になりたい!」なんて告って、デートに
駒を進めたような喜びみたい。

現実は気持ち悪がられたり、「修一クンに手を握られたのよ」なんてネタ
にされたり、家人にバレて“色呆けヂヂイ”なんてバカにされることになる
のだが・・・

本と読者の出会うタイミングはいつがベストなのか、それが分からない。
結局はあれこれ「乱読」して、好きな作家や作品の傾向が分かってくる。
料理と似ていて、とにかくあれこれ食べてみることで、自分の好みが分
かってくる。そんな感じ。

いい嫁さんに当たる確率は2割くらいか。あれこれ試食するわけにはいか
ず、何となく成り行きで所帯を持ったり。気に入らないからとお互いに書
庫に仕舞うこともできない。本は酒のごとくに長い間眠らしておくことが
でき、味見ができて「うーん、いい味だ」となる可能性はある。

ここまで書いて昼食。昼寝の友に太宰治「人間失格」をもってベッドで読
み始め、終わりのところでビックリした。

<いまはもう自分は、罪人どころではなく、狂人でした。いいえ、断じて
自分は狂ってなどいなかったのです。一瞬間といえども、狂った事は無い
んです。けれども、ああ、狂人は、たいてい自分の事をそう言うものだそ
うです。つまり、この病院にいれられた者は気違い、いれられなかった者
は、ノーマルという事になるようです。

神に問う。無抵抗は罪なりや?

堀木のあの不思議な美しい微笑に自分は泣き、判断も抵抗も忘れて自動車
に乗り、そうしてここに連れて来られて、狂人という事になりました。い
まに、ここから出ても、自分はやっぱり狂人、いや、廃人という刻印を額
に打たれる事でしょう。

人間、失格。

もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました>

文庫本の奥付を見ると1968年(44刷)とある。小生が18歳、大学1年の時
に読んだから実に50年振り。「うん、いい人は発狂するんだ」なんて思い
つつも、人間恐怖症の太宰(津島修二)は人間に生まれて来たのがそもそ
もの間違いだったのだ。

「面白い子、かわいい坊ちゃん、頭のいい青年、母性本能を掻き立てる弱
くて優しい男」を演じ続けないとイジメられるのではないかという強迫観
念にいつも恐れおののいていた。小さい頃から性的虐待を受けたことも
あって、道化を演じることで人間の攻撃から身を守り、特に理解不能なが
らも自分を受容する女への甘えや同情、悲しみ、迷いに戸惑う。

安住がどこにもない、あっても長続きしない、夢は儚く終わり、美の陰に
醜を見て、そして自暴自棄・・・

小生は太宰の作品で一番好きなのは「津軽」だが、太宰が物心つかない3
歳から6歳まで病弱な母親に代わって乳母として愛情をかけて育ててくれ
たタケを30年ぶりに津軽半島に訪ねる最後は泣ける。

せめて小学校を卒業するまで母親の愛情を得ていたら、生まれついての
「繊細過ぎる」感受性も穏やかになっていたかもしれない。過ぎたるは及
ばざるがごとし。

争いを恐れるために無抵抗になり、道化になり、疲れ果てて、やがて心
中。自殺未遂のゴッホが弟と最期に交わした言葉の一つは「このまま死ん
でゆけたらいいのだが」だったという。

小生のようなキチ〇イはキチ〇イの悲しさ、恐れ、狂気を知っており、再
発狂をとても恐れる。太宰もゴッホも「ようやく死ねた」とほっとしたの
ではないか。その気持ちがよく分かるアナタ、そうアナタです、危ないで
す、ホントに、発狂する前に受診しなさいよ。

うっぷん晴らしに無差別殺人で逝くなんて、最低、邪道、キチ〇イ道にも
とる恥です。迷惑をかけずに一人ひっそりと逝く、人間失格の太宰は遺族
に10億円の遺産(著作権料)を残し、ゴッホは天文学的な値のつく作品、
感動を世界に遺しました。せめて最後は美しく逝く、それが発狂道です。

「指切りゲンマン、嘘ついたら、針千本飲ーます、指切った!」、さあ、
小指を出しなさい、さあ、さあっ・・・オノレ、わいを舐めとるんかい、
そんならこうしてくれるわ、無理心中や、どや、どや、早よ逝かんかい、
クズヤロウ!

さて、こんな風に、運命的に、本と出会う、再会する、感動する、脳ミソ
が活性化される。ホントの出会い。読書の醍醐味だ。脳溢血とか病気では
如何ともし難いが、読書で脳ミソは元気で、痴呆症とかにはならないので
はないかと思うのだが・・・

発狂亭“人生はっけよい”雀庵の病棟日記から。「はっきょうテロ」はダメよ。

【措置入院 精神病棟の日々(135)2017/1/9】成人の日【産経】「漱石
曰く『あらゆる冒険は酒に始まる』、新成人の皆さん、冒険の資格が本当
にあるのか、祝杯の前に自分に問いかけてみたらいかがだろう」、石部金
吉みたいな説教・・・

小生は大学1年の1969年から部活の合宿などでたまに飲んでいた。今は高
校生あたりから飲むのか。

小生の人生は7勝7敗1分だったが、今回は酒でしくじったので6勝9敗の負
け越しの気分。しかし、こと酒については、現役時代は月水金は接待など
で飲みまくり、お客さんから声がかかればカネをもって嵐の中でも飛んで
いった。この本場所では11勝4敗か12勝3敗あたりか。

主張「成人の日 周りを思いやれる大人に」・・・「家族ら周りの人々の
支えに甘えてきた子供の頃とは違って、有縁無縁の力に感謝し、これから
は周りを支える立場になるのだと決意を新たにすることである」。

66歳を目前に「再成人」を誓い、実行できるのか・・・「ガンバレ、
俺!」って、どうも小生はそんなタマではなさそうで・・・困ったな。
(つづく)2019/8/29


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