2019年09月02日

◆今月の法律コラム

川原 俊明 弁護士


「保釈制度」

 刑事事件の弁護人として活動をしていると、被疑者・被告人から
 「保釈手続をしてほしい」と依頼されることがよくあります。
 保釈とは、裁判所が、保釈保証金の納付を条件として、被告人に
 対する勾留の執行を停止して、その身体拘束を解く制度をいいます。

 裁判所は、保釈を許可するか否かを決定するにあたり、
 いくつかの要件を検討します。例えば、(1)罪証隠滅のおそれがないか、
 (2)被害者や証人等に対する加害のおそれがないか、
 (3)被告人の住居が定まっているか、といった点です。

 これらの要件に加え、裁判所が定める保釈保証金の納付が
 絶対的要件となります。保釈保証金は、保釈された被告人が
 裁判に出頭することを確保することを目的とし、万が一、被告人が
 裁判に出頭しない場合には、没収される可能性があります。

 裁判所は、こうした要件を充たしてはじめて、保釈を許可します。
 我国の刑事司法手続において、長期間の身体拘束による弊害が問題視
 されている中、保釈制度によって早期に身体拘束から
 (たとえ暫定的にであっても)解放されることは、被告人にとって
 非常に重要な意義を有します。近年、保釈が認められる件数が
 増加傾向にあることは、弁護人として活動する弁護士にとっては
 大変ありがたく、励みにもなります。

 他方で、最近、保釈中の被告人が逃走したり、別の事件を起こした
 というニュースが世間を騒がせています。無論、逃走したり、
 別の事件を起こした被告人自身は、非難されるべきであり、
 刑事手続の中で適正に処断される必要があります。
 しかし、一部の被告人の自分勝手な行動によって、保釈制度に対する
 世間の目が厳しくなり、裁判所が保釈許可に対して慎重な姿勢に
 転じることのないようにと考える弁護士は決して少なくないと思います。


「不貞の代償」

 もし、貴方(貴女)が、運良く(?)、魅力的しかし既婚の女性(男性)
 と親しくなって、(首尾良く?)思いを遂げた(肉体関係になった)場合、
 バレなければ「幸せ〜!」で済むかも知れません。
 しかし、バレたら、厄介です。
 今回はその厄介について考えます(倫理上・宗教上の問題は除きます)。

 1.民事上の問題1(相手方配偶者との関係)
 特別の事情(相手方が独身と過失なく信じていた。
既に相手方の婚姻関係が破綻していた。破綻と過失なく信じていた等)
がない限り、貞操権侵害の不法行為として損害賠償を請求される
(民法709条)可能性があります。
  
損害賠償の金額は、不貞関係の期間・回数やそれに至った事情等にも
よりますが、最低でも数十万円になる(これが高いか安いかの評価は、
別れます。)ケースがほとんどです。また、相手方配偶者が厄介な(?)
人の場合は、一層厄介になる可能性があります。

2.民事上の問題2(自分も既婚の場合の自分の配偶者との関係)
 (1)既に婚姻関係が破綻していた等の特別の事情がない限り、
配偶者から、貞操義務違反として、損害賠償を請求される
(民法709条)可能性があります。
 
(2)また、配偶者から、愛想を尽かされて、離婚及び離婚に伴う慰藉料
(裁判では、150万円程度が相場)を請求される(民法709条、
770条1項1号)可能性があります。
その場合、財産分与や年金分割も必要になります。親権を配偶者に
取られて、子どもと一緒に暮らせなくなる可能性もあります。
養育費も当然請求されることになります。

(3)そこまで行かなくても、家に帰り辛くなることは間違いありませんし、
子どもの白い目も覚悟しないといけないかもしれません。
耐えきれずに別居した場合でも、婚姻費用の支払が必要になります。
  なお、逆に、自分から、修復を諦めて、離婚したいと思っても、
有責配偶者からの離婚請求として、原則として、配偶者が同意しない
限り、離婚できません(判例理論)。配偶者の同意をもらうために、
多額の解決金(判つき代)を支払う場合もあります。

3.民事上の問題3(勤務先と関係)
  相手方が同じ職場や取引先に勤務している場合等には、就業規則違反
として、懲戒処分を受ける可能性があります。
  そこまで行かなくても、噂の格好のネタになって居づらくなりそうです。

4.刑事上の問題
  外国では、現在でも犯罪とされている国がありますが、幸か不幸か(?)
  、 現在の日本では、不貞自体は犯罪とはされていません。

5.不貞は、その秘密性等から得られる高揚感が大きく、なかなか
辞められない場合があると言われています。人間の動物らしい面とも
言えますが、上記のとおり、その代償は決して小さいものではありません。

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。