2019年09月06日

◆雀庵の「洗脳、扇動、恐怖政治は限界に」

“シーチン”修一 2.0


【Anne G. of Red Gables/23(2019/9/5)】山本夏彦翁は「正義はやがて国
を亡ぼす」と書いたが、政治、特に外交は「昨日の敵/友は、今日の友
/敵、明日の敵/友」で、永遠に変わらないのは「国益だけ」という論はよ
くある。

過去を見ても、鬼畜米英は日本の親友みたいになった。支那の国民党は敵
だったが、台湾に引き籠ってから日本は仲良くなった。国民党の敵の中共
が台頭すると日本は掌返しで日中友好と叫び出した。「サヨナラ台湾、
ニーハオ北京」・・・

明日はどうなるのか、分からない。いずこの国も“国際政治天気予報”に敏
感になっているが、積み木崩しでアレヨという間に状況が変わるから、国
家経営は実に難しい。

芥川龍之介の「侏儒の言葉」は面白かった。ビアスの「悪魔の辞典」、モ
ンテーニュの「随想録」みたいに秘伝辛子が入っているが、「悪魔の辞
典」を日本に紹介したのは芥川だそうだ。彼は「随想録」も読んでいる。

「侏儒の言葉」は『文藝春秋』に1923/大正12年1月から1927/昭和2年の自
死まで断続的に連載された。頭が良過ぎるというか、早熟というか、35歳
で逝くのはチョットナーという気がする。早世とか夭折は当時の文壇の流
行病だったのだろうか。

「侏儒の言葉」から引用(要約)する。

<古来政治的天才とは民衆の意志を彼自身の意志とするもののように思わ
れていた。が、これは正反対であろう。むしろ政治的天才とは「彼自身の
意志を民衆の意志とする」もののことを云うのである。

少くとも民衆の意志であるかのように信ぜしめるものを云うのである。

この故に政治的天才は俳優的天才を伴うらしい。ナポレオンは「荘厳と滑
稽との差は僅わずかに一歩である」と云った。この言葉は帝王の言葉と云
うよりも名優の言葉にふさわしそうである。

民衆は大義を信ずるものである。が、政治的天才は常に大義そのものには
一文の銭をも投じないものである。唯民衆を支配する為には大義の仮面を
用いなければならぬ。しかし一度用いたが最後、大義の仮面は永久に脱す
ることを得ないものである。もし又強いて脱そうとすれば、如何なる政治
的天才もたちまち非命に倒れる外はない。

つまり帝王も王冠の為におのずから支配を受けているのである。この故に
政治的天才の悲劇は必ず喜劇をも兼ねぬことはない>

「彼自身の意志を民衆の意志とする」・・・ヒトラーの演説は実に民衆の
魂を高揚させたのだろう。彼自身が演説中に興奮して倒れ込むこともあっ
たという。エクスタシー、ヒステリー、失神・・・まさに名優だ。

「JFK」ケネディの(カネと野望に溢れた父親が雇っただろう)ゴースト
ライター、スピーチライターは実に優秀だった。JFKのオツムは普通なが
ら、軍歴があり(日本軍に撃沈され漂流、これを父親は「英雄譚の物語」
にした))、イケメンで(TV映りが良いように化粧をした)、病的な女好
き(秘せられたろう)という男の演説は、しかし、聴衆を大いに魅了した。

モンテーニュ曰く――

<ある修辞学者は、「自分の仕事は、小さな事柄を大きそうに見せ/思わ
せることである」と言った。スパルタでなら詐術師として鞭打たれたに違
いない。

(古代アテナイ全盛期の王に次ぐ事実上の最高権力者ペリクレスの政敵に
対して)王は「角力(すもう)ではどっちが強いのか、ペリクレスか、そ
れとも汝か」と尋ねたところ、彼はこう答えた。

「どうとも言えませぬ。わたしが角力で彼を地に投げても、彼は並み居る
人々に向かって『自分は倒れはしなかった』と言い張り、結局勝ってしま
います」

王はさぞかし驚いたことだろう。

婦人の化粧は男の目を欺くが、大した損害ではない。ところが修辞学者は
我らの目ではなく判断を欺き、変えることを職としている。クレタのよう
に秩序、善政のもとにある国々は、雄弁家をあまり尊重しない。


アリストン(スパルタ王)は賢明にも修辞学を「人民を納得させる学問」
と言った。ソクラテスとプラトンは「欺きかつへつらう術」と言った。マ
ホメット教徒は修辞学を無用の長物として子弟に教えることを禁じた。

またアテネ人は、修辞学が彼らの都においてはなはだ重んじられたために
いかに世を毒したかを悟り、人の感情を煽り立てるような部分を削除させた。

修辞学は、常軌を逸した群衆や暴徒を扇動したり操縦したりするために案
出された道具である。医薬のように病める国家においてのみ使用される道
具である。

俗衆や無知の者、誰でも彼でもが何でもなしえた国々、たえず物情騒然の
国々には(修辞学に長けた)雄弁家が集まった。これらの共和国において
は、雄弁の助けを借りずに衆望を負いえた人物はほとんど見られないので
ある。

ポンペイウス、カエサル、クラッシュス、ルクルス・・・いずれも己の雄
弁を大きな頼りとして、とうとうあれほどの高位まで昇ったのである。雄
弁を武器以上に活用したのである。

政治が安定しないと雄弁家が百家争鳴、暗愚軽信の庶民は耳に快い美辞麗
句に魅せられてしまい、理性によって物事の真偽を識別するに至らない、
一人の君主をいただく国は、そうでない国々ほどに雄弁を必要としないよ
うだ・・・>


我らの隣人、支那、半島は概ね権力者の暗闘と民の暗愚軽信の「私利私欲
的支那人(シナジー)効果」で何百年も活火山だ。時々女が火に油を注
ぐ。いつ大噴火するか分からない。

香港政府は中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正
案の正式撤回を表明した(9/4)。建国70週年を迎える10月1日の国慶節前
後あたりまでは香港に対する中共軍の攻撃はなさそうだ。


この“休戦”は習近平と上海閥(香港に強い)、共青団(海軍に強い)との
合意によるものだろう。習近平は建国70周年を安泰に迎える代償として何
を譲歩したのか。

地球を俯瞰すれば、独裁国家の「洗脳、扇動、恐怖政治」は限界に来てい
る、と小生は思う。不都合な政敵を闇討ちするようなやり方ではとても国
際競争を乗り切れはしない。少なくとも中共は香港の普通選挙を認めなけ
れば香港市民は手を緩めないのではないか。

<9月11日から12日にかけて、香港で「一帯一路」サミット2019が開催さ
れることになっている。参加者は部長級ではあるものの、現状では開催可
能なはずがない。では、どうするつもりなのか?・・・他の都市に移して
開催するだろうと推測される。その都市はどこかと考えた時に「深セン」
が有力候補として考えられる>(遠藤誉・中国問題グローバル研究所所長)

こんな騒擾の中で「一帯一路」会議で訪中するのは三跪九叩頭の属国によ
るお見舞いみたいで、中共を警戒する多くの国から反発を買うのではないか。

香港人を圧殺すれば台湾人は中共の侵略に命懸けで反発する。外資系企業
や人材は逃げ出し、ロシアのように孤立するしかない。連邦制国家への移
行は出血の最も少ない体制転換だ。習近平がそれを成せば永遠の名君とし
て、成さねば永遠の暴君として歴史に刻まれるだろう。

発狂亭“香港加油!台湾加油!”雀庵の病棟日記から。

【措置入院 精神病棟の日々(141)2017/1/12】承前【産経】広告「宮崎
正弘『日本が全体主義に陥る日』」。個人の自由の抑制、社会・集団の利
益優先・・・多かれ少なかれ先進国は選挙で政権を選ぶから、右や左にぶ
れる危険性は常にあるし、回復力もあるから、大きく国を棄損することは
なさそうだ。

阿比留瑠偉ボナパルト「実現しつつある『高麗共和国』」、「誰が大統領
になるにせよ、韓国の従中、反米、反日、親北の左派路線は今後ますます
強まりそうで、在韓米軍の撤退すら現実味を帯びてきそうだ」。韓国は自
殺するのだろう、ほとんど狂気。

石平「習政権を襲う“黒船”トランプとの貿易、南シナ海、台湾という3つ
の戦線」。米中はお互いにジャブは打つけれど、激烈な権力闘争を抱える
習としては当面は様子見でいくしかないだろう。

伊藤元重「正論 グローバル化が諸悪の根源か」。それはどうかは分から
ないが、ヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に動き回ると、国柄、公序
良俗、価値観などが壊れる危険性は高い。制御できないとかなりヤバイ。
2019/9/5

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