2019年09月18日

◆ある東ドイツ・スパイの忠告ーCIA−

             
クライン孝子


拙著『日本人の知らないスパイ活動の全貌』 8章1部ご紹介いたしま
す。ご参考にしていただければ幸甚です。

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ある東ドイツ・スパイの忠告ーCIA−

■インタビューは森の中
「ベルリンの壁」崩壊直後のことであったから、かれこれ三十年前の話だ。
そのころ最後の北朝鮮大使だった旧東ドイツの人物にインタビューを申し
込んだことがある。’’
東ドイツという国家が消滅し、北朝鮮大使を解任された直後であったか
ら、彼には一種の解放感があったらしく
気軽に応じて貰った。

それはいいのだが、最初に会う場所を「グリーニッケ橋のちょうど真ん
中、白線のあるところ
と指定したのには、苦笑いしてしまった。

実は、この場所、東西ドイツを分断する橋という因縁つきのもので、冷戦
中、大物小物を問わず、
頻繁にスパイ交換に利用された俗称「スパイ交換橋」で知られていた場所
だったからだ。

インタビューも、盗聴の危険を回避するためか、森の中を歩きながら行わ
れた。

彼に会う前に収集した情報では、ポツダム所在の俗称スパイ養成大学卒
とあったから
プロのスパイであることは把握していたものの、これほど徹底していると
は思いもしなかった。

話題は多岐にわたった。
中でも、その彼から当時、聞いた話でショッキングだったのは「恐らく
この『ベルリンの壁』崩壊で

目下もっとも狼狽しているのは弱小国北朝鮮とキューバだ。
けれども、それだけにいずれも大国に勝るとも劣らない強かさがある」と
いう話であった。

アメリカの半植民地だったキューバをそのくびきから解放したのはカスト
ロである。

彼は、一九五九年一月、それまでアメリカの傀儡政権であり腰巾着だっ
たバティスタ独裁政権を倒し、
を社会主義国家に変え、その後キューバの最高権力者としての地位をもの
にした。

対するアメリカの怒りは相当なもので、キューバはその返り血をあび、
一九六一年、大統領ケネディのもとで国交断絶を宣告されてしまった。
そのような処置を受けたキューバは、すばやくカストロがソ連の
最高権力者フルシチョフに接触しソ連了解の下、「キューバ危機」を演出
し、アメリカの鼻先キューバに核を持ち込もうとした。

これに仰天したのはほかならぬアメリカだった。さっそくソ連と直談判す
ることで、米ソ両大国同士の妥協点として、ソ連を標的としてトルコに持
ち込んだアメリカの核を撤去する代わりに、

キューバへのソ連の核持ち込みを断念させることで片をつけた。
それだけではなかった。おりしもこの時期、冷戦の最前線ドイツでは東西
ドイツの国境線に「ベルリンの壁」が構築されたばかりで、そのにらみ合
いたるや、一触即発の緊迫した状況にあった。

そこで、米ソ両大国は、国際社会を安心させるためにも、両国同士、水面
下でスパイ交換を成立させることにした。
 アメリカには一九五七年以来、三十年の懲役刑を言い渡された名スパイ
KGB所属アペル陸軍大佐

東ドイツ人だが第二次世界大戦中は英国籍を所持し英国スパイとして暗
躍?)が、 一方、ソ連には、
一九六〇年にU2スパイ機でソ連領空に侵入し撃墜されたパワーズ操縦士
が十年の刑を言い渡され投獄されていた。この二人のスパイを、

しかも東西ドイツの境界線「グリーニッケ橋」
のちょうど中央に当たる場所で、交換しようというのである。

■平和ボケの日本よ、やられっぱなしでいいのか
 こうした両大国のエゴを見せ付けられ、地団駄を踏んだのは、ほかなら
ぬカストロだった所詮キューバは弱小国で、彼ら両大国に逆らう策術など
あろうはずがない。

そうと悟ったカストロは涙を呑んでこの決定に従うことにした。とはい
え、ソ連も気が咎めたのか、
その後キューバには何かと支援の手を差しのべた。
とりわけキューバは、アメリカの対キューバ経済制裁で窮地に陥っていた
だけに、ソ連の経済支援はキューバにとってはまさに「神頼み」! 大助
かりだった。
それだけではない.

ソ連は、今一つ、ソ連流諜報機関のノウハウをカストロに譲与し、件のア
メリカCIAをしのぐ
キューバ諜報機関設立に貢献しその強化に手を貸した。

カストロが、これまでに亡命キューバ人を含むアメリカによる合計六三八
回(うち一四七回はCIAが接関与)もの暗殺計画を仕掛けられながら
も、生き延びてこられたのは、まさにそのおかげである
(決して言い過ぎではない)。

ー中略ー

-それに比べて、平和ボケ日本は北朝鮮にやられっぱなしで目も当てられ
ない」とは、
かの元北朝鮮大使ならずとも、私もそう思う。
北朝鮮には、一九五九年から一九八四年まで行われた在日朝鮮人の
帰還事業により
約一〇万人(うち日本人妻及び日本国籍を持つ子供七〇〇〇人)が北朝鮮
に渡っており、その彼らを人質に

北朝鮮は日本からカネや物品をせしめて、逼迫した北朝鮮経済を潤すマ
シーンとして利用してきたばかりか
彼ら日本人の一部をスパイとして徹底的に養成し直し、その後、日本へ送
り込み

各界に潜伏させ高度な技術を盗んだり、時には女性ベテランスパイをも日
本国内に送り込み
日本の要人を狙いうちにしハニートラップを仕掛ける。 けれどもその彼
女たちときたら、通名を名乗ることで、日本の極秘情報をいとも簡単に失
敬していると聞く。

「こんなことが白昼堂々と日本国内で可能なのは、北朝鮮にはある諜報機
関が日本にはないからだと、件の元北朝鮮大使は示唆していたのである。
私もそう思う。
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